一般公開。普段は関係者以外立ち入り禁止のJRN構内の一部を、不特定多数の来場者に公開する事業である。その中では研究内容のうち、公開できるものの展示が行われたり、あるいは実演実験なんかをやるところもあったりする。
その一方で、お子様向けの工作教室やミニコンサートなどのイベントやなぜかどこの組織にいてもできる人がいる焼きそばなどの屋台の出展など、いわば周辺住民を交えたお祭りのような側面もある。というかこちらがメインだ。
そして。我らが購買部にとっては、この日は年に一番の戦いの日でもある。何せJRN公式のグッズだったり、あるいは職員が作ったグッズ――半分以上はパレイユの方々が作った美術品や工芸品の類だ――なども購買に置いて来場者に販売するのだから、お昼のピークがずっと続くような状態になるらしい。
「で、なんで僕達カフェテリアの机片付けてたんです?」
「そりゃ売場面積足りねーからな。パレイユの連中は加減ってものを知りやがれ」
一般公開前日。僕達は売場レイアウトの変更をしていた。外部の者に売ってはいけないものや、そもそも一般公開の日には売っても需要が見込めないものをバックヤードに戻して棚を開けてなお、陳列スペースが完全に不足しているのだという。
……えっ、そんなにグッズ類多いの?
「なんならいまヤッちゃんがPOS作業してるはずだけど見てくるか?」
「いや地獄見えてるんでいいです……」
これだけ広くしなきゃいけない時点で追加登録いくつする羽目になるんだか。しかも工芸品やグッズの類なら複数のものを同じ商品登録で行けるだろうけど、ワンオフの美術品の場合は……。うん、考えたくもないね。
「まーその分、いくらかレジ要員をパレイユの方から回してもらうことになってるからいーんだが。支払い方法選択画面は客側になったから今回教えることも少ねーしな。5万超えたときに信用取引じゃなきゃ印紙貼るくらいじゃねーのか」
「滅多に現金で5万超えてくるお客さんなんていなくないですかね?」
「パレイユの連中単価ですら5万超える物を委託してくるぞ」
ええ……。それはもう自分たちで屋台作って売ってってレベルじゃん。よくそれを購買部に丸投げしようと思うな……。
「検品したくないなぁ……」
「はは、諦めろ。店長も旅行カウンターの奴らも出てきて明日の朝は購買部総出で検品と陳列だぞ」
「えーやりたくない」
「諦めろ、俺だってやりたくねーしなんなら店長だってそー思ってる」
じゃあなんでやめないんだ。もっと上、本部からの要請とかだったりするのだろうか? それとも、その作業をしてでも得られるリターンが大きいのか。たぶん後者だと思う。
「じゃ、作業も終わったので僕は帰りますね」
「お疲れ。明日はここは戦場と化すから、今のうちに休んどけよー。……と、そーだ、1つ忘れてた」
「何ですか」
「明日はローラースケート履いてこい。それだけだ」
そして帰宅し、ちょっとSNSを覗いた時のことだった。僕がそのつぶやきを見つけたのは。
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78 りつぶやき 6 引用 391 いいね
「は?」
思わず声が出た。反射的につぶやきもした。
まずグッズ売るって話も初耳だしそもそもさっきまでブライトさんは明日の検品について愚痴をこぼしていた側である。なんで自分で自分の首を絞めて愚痴をこぼしているんだ……。
……だめだ、考えてもよくわからない。とりあえず明日も早いしシャワー浴びてご飯食べてとっとと寝よう。
そして翌朝。
検品作業が始まる前に購買部前で張っていると、段ボール箱を抱えたブライトさんがやってきた。
「ブライトさん」
「はい」
「はいじゃないんですが……」
そもそもいつの間に許可とっていつの間に発注してたんだとか、聞きたいことはいろいろある。だけど。
「その検品陳列、自分でやってくださいね」
「当然そのつもりだ」
「あとPOS登録とかも……」
「なんでだよ。それはヤッちゃんの仕事だし昨日のうちに終わってる。そもそもこれ言ー出しっペはヤッちゃんだしなんなら店長もなんかしらんけど乗ってきて発注先紹介してきたぞ」
「えぇ……」
なんであなた達がグルなんですかね、余計にたちが悪い。っていうかだったら僕にも事前の連絡の1つくらい欲しかったしポラリスも黙ってないで教えてくれたって良かったのに。
まぁ、もう過ぎたことだしこれ以上は言うまい。
それから一般公開が始まるまでの間、僕達はJRNの各員が持ち込んでくる商品の検品とPOS照合に追われることになった。彫刻やハンドメイドの日用品、マンガ本まで様々なものが揃っている。中にはこれは売れるのか疑問になるようなほどに需要が行方不明なものもあったけど、まぁそれも含めていろいろなものが集まるのは悪くはないな、と陳列しながら考える僕がいた。
そして、それらの陳列をちょうど終えた頃。
『さぁさぁ、まもなく開場です、皆様準備はよろしいでしょうか?』
「はい」「おう!」「Affirm」
構内放送が、その時間が間もないことを告げる。既にお祭り気分なのか、みんなその放送を流したところには聞こえないとわかっていてもそれに言葉を返していた。
『それでは……今年も始まります、JRN一般公開、小川祭、只今開場いたします!』