ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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20レ前:狙われたJRN

 12月25日、土曜日。

 年の瀬が近づこうがJRNはいつもどおりの土曜日だった。

 

 ……活動が終わり、早乙女さんが帰ろうとした折にその4音ブザーが流れてくるまでは。

 

「皆、このあと予定は?」

「あっても事情話せばわかってくれるって」

「わかった、行こう」

 

 早乙女さんが内線を取る。その間に僕達はこの後の予定に頭を下げながら、軽く出動の準備をした。

 

「何? 出動ホームではなく1号館? 承知」

「……は?」

「聞こえていたと思うが、今回は1号館正面玄関に集合してほしいとのことだ。まるで意味がわからないが……」

 

 ……なんか、ヤバそう。

 そう思いながら部室棟を出て1号館に向かうと、どこからか鐘の音が鳴るのが聞こえて。そして、1号館の内側からマンション広告のように真上に向かって光の柱が伸びていくのが見えた。

 

「急ごう、想像以上にマズい事態が発生している」

「同意」

 

 そしてそれが構内の多くのところで認識できていたのもあって。1号館の前には、既にぽつぽつとノリモンやトレイナーが集まっていた。

 そんな中で、いくつかのユニットが5人揃って到着しているのも見えた。僕達はとりあえずユニットとして集まった者同士で集合してから、指定された入口前へとたどり着く。

 

「カリーナ、レオミノル、ドラコ、アクィラ、カンケル、ウルサ。よし、即応してくれたユニットはみんな来たね」

 

 そこでは、既にラチ内で戦うような装いを汚して纏うクシーさんが僕達を待っていた。これは相当まずい奴だと、それを悟らせるには十分すぎる姿で。

 

「状況を簡潔に言えば、敵意あるノリモンが侵入、襲撃している」

 

 その言葉にざわつきが発生した。半分は驚愕、もう半分は腑に落ちた声。わざわざユニット単位で出動させることを考えると、相当な脅威なのだと判断されているのだろう。

 だがしかし、ここで1つ、大きな疑問がわく。

 

「どうやって、侵入してきたんです?」

「わからない。監視カメラほかのログを見ても、いきなり構内に現れたとしか言いようがない」

 

 帰ってきた答えは、再現性があればあらゆる物理的なセキュリティが無と帰す事を意味するものだった。どれだけ物理的な障壁やセンサを用いたとしても、それを迂回して到達されてしまうのであれば意味がない。

 

「理解はできぬが把握はした。クシー号、我々はいつでも突入できる」

「気持ちは嬉しいんだけど、ここJRNなら戦えるノリモンやトレイナーはたくさんいる。だからキミたちには、次に襲撃される可能性が高いとみられる場所に予め向かっておいてほしい」

「襲撃される可能性が、高い場所……?」

「都立武蔵国分寺公園。そこに向かってほしい」

 

 ……武蔵国分寺公園!?

 この前に何かがあるとは感じていたけれど、本当に何かがあったとは。あるいは、連絡が僕には降りていないだけであのフォームに書いたのが上の目に引っかかったか。

 そして、なぜそこなのかを高山さんが尋ねると。

 

「封印されているんだ。ルースの落し子が、そこに。そして襲撃者はその封印を解く鍵を新小平に持ち込んでいる」

「拝承。急行しよう」

 

 どうやら前者のようだった。あの時感じたのは、恐らく封印から漏れ出した的な何かだろうか。それにしてもなんでトシマさんは対馬海峡で発生したクィムガンを都立公園なんかに封印したんだ? だけど、そんなふと思いついたいくつかの疑問を確認する暇もない。

 西国分寺はすぐそこだ。あまりに近いので、列車をわざわざ仕立てるよりはもうトレイニングして府中街道を直接南下してしまうのが早い。もっとも、北多摩北部建設事務所には上層部が後で菓子折りを持っていくはめになるだろうが。

 

 そうしてたどり着いた円形広場は、土曜日のお昼すぎとは思えないほどに静かだった。だけど、その中心部は薄っすらと赤い光が地面から漏れ出している。

 ……感じる。あの時と同じものを。

 

「あなた達、こちらは危険です! 避難してください」

 

 そして、白い服を纏ったノリモンがひとり、僕達を見つけてすっ飛んできた。言い振りからするに、ここにたまたまいて異変に気がついて避難を呼びかけてくださっていたのだろう。

 そんな緊迫した様子の彼女に、氷川さんは落ち着いて対応していた。

 

「貴女が逃げてください。我々はJRNです」

「えっ……! 失礼しました、もう来て下さったのですね」

「いえ、当然のことです。民間人の避難に協力してくださったであろうこと、感謝します」

「いえ、妾は多少感度が良いだけですので。では、ご安全に」

 

 そしてその白いノリモンは、僕達に頭を下げると大慌てで広場を去っていった。

 さて。これで民間人の退避が恐らく完了したわけだけれど。ここから先はどうしようか。今のところただ光っているだけだし、それを下手に刺激するのも良くはなさそうだ。

 

「この広場を囲むように巨大なラッチを張る事は、佐倉君は可能だと思うか?」

「不可能じゃない。でも、やめたほうがいい。地下深くに封印されているのなら、張ったラッチの内側に本体がある保障はない」

 

 そう、早乙女さんと佐倉さんが検討を重ねているところに。ひょいと高山さんが割り込んできた。

 

「……なら、張る準備だけして封印の解けてから張ればよいではないか」

「危険だぞ。もし解放直後に暴れたらどうするつもりだ」

「そうだな……。ウルササイクロの佐倉と言ったな。そのサイズのラッチを張るのに、何人要するか」

「7人から8人くらい。それだけ居れば」

「ならば。『皆、聞いてほしい。ウルサともう1ユニットを残して、残りの4ユニットは広場の中へ。ルースの落し子が復活したらそれの拘束を第一にし、外にいる2ユニットで4ユニット共々ラチ内に送り込む。これでどうだろうか』」

 

 そして高山さんの提案は受け入れられ、僕達ウルサとアクィラを残して、他の20名はその発光地点を取り囲むように広場の中へと入っていった。

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