ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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20レ中:祝福の風の息遣い、ブゥケトス

 リンゴーン。リンゴーン。

 

 鐘の音が、中庭に響く。

 

「いくら物理的な障壁があっても無駄だよね」

「それはどうかな。不埒なる者よ」

 

 ブゥケトスは、また力の足りぬノリモンやトレイナーが自分を止めに来たのかと呆れるようにため息をついた。

 

「お姉さん、ひとり? 他の方の惨状を見てるでしょ」

「心外だな。JRNの者が、私の仲間がそれ程に軟で、戦略的撤退も知らぬ無学であると?」

 

 その声に、ブゥケは振り返った。

 明らかに今までとは格の違う相手だ。それは今放たれた威圧感でも、そして既にもたらされている過去の英雄の知識でもそう認識された。

 

「ちょうどよかった。トシマ号。わかるでしょ、私の行きたい場所は」

「不法侵入者の盗人に教える道などない」

「ならば、聞き出すしかないね」

「貴様が投降するまで、決して埒の開かぬ戦いになるぞ」

「やってみなきゃわからないじゃない?」

「そうか。……どんな組織に手を出したのか、思い知るがいい」

 

 バタン。

 複数の中庭周りの扉が開かれた。そこには臨戦体勢のノリモンやトレイナーがいて、合計で十数ほど。

 

「群れると、弱く見えるよ」

「油断を誘えるならそれで結構。さて、この不審者を拘束せよ!」

「承知ッ!」

 

 ロケットの、ノーヴルの、サイクロの、バランスの、パレイユのノリモンが飛び出して。皆がただひとりの対象を狙っている。

 ブゥケはそれに呼応するように、シールドを展開した。

 

「《ハンドルで逃げるなまず止れ》!」

 

 まずシャドウドリームがブゥケの身動きを封じ、続けてバードックヒカリが最初にブゥケに到達して彼女を羽交い締めにする。

 そこからは一方的なタコ殴りだった。次々と絶えることのない攻撃がブゥケを襲い、あっという間にそのシールドは割り切られてしまう。

 余りにもあっけない終わりだ。そう思ってシャドウは技を解いた。ブゥケはそこから消えていた。

 

「どこ行きやがった!?」

「そんなんで私を捕えたつもり?」

 

 声が聞こえる。上だ。ブゥケは気づかぬうちに上方へと移動していたのだ。

 何名かが飛び上がったり、或いは飛び道具で彼女を目指す。だがそれも届かない。

 

「《ファタル・スパイラル》」

 

 風が吹いた。全てを飲み込む致命的な風だ。それは渦を巻き、密集地を襲う。乱気流に飛ばされゆく中での姿勢制御のできる者は多くはないし、持ち主の手から離れてしまったウエポンは風に舞って他の物を傷つけた。

 

「だから言ったでしょう、()()()()()()()()()と」

 

 にやりと口角を上げながら、独り言のようにブゥケは呟いた。事実彼女の言うとおり、群れていたからこそお互いがお互いを意図せず傷つけあってしまう危険な密度にまで到達しているのだから。

 しかし。ブゥケもまた致命的な誤解をしていた。そこにいた全てを飲み込んだから、もう他に戦力はないだろうと考えていた。だがしかし、その時そこにいた者だけがJRNの全戦力ではないのである。

 

「発出。《(エル)(スペシャル)ホワイトアロー》」

「見逃すとでも? 《金星つばめ返し》!」

 

 ブゥケの真後ろ。建物の中から窓を少しだけ開けたナマラシロイヤから発せられた矢がシールドを失ったブゥケに突き刺さり、竜巻の制御を失わせる。そこに屋上からゲッコウフィートが降下しながら攻撃を加えれば、いよいよ竜巻は維持できなくなり、そしてシールドの剥がれた者達が解放された。

 ブゥケの手を離れた鐘が地面に落ちた音が中庭に響く。

 

「何故だ。JRNのノリモンはトレイナーに戦闘を任せっきりになっているはずでは」

「戯言を。今はラッチの機能の都合上()()()()トレイナーしか対応にあたれていないのみ。その時の為の鍛錬は怠るべからざる」

 

 竜巻の内側にいたにも関わらず、無傷のトシマがそう答えた。

 トシマはさも当たり前かのように言っているが、そこにはJRNの苦い経験があった。かつてラッチが開発された当時、トレイナーの戦力は今よりもはるかに少なかった。だがラッチはトレイナーのみを受け付ける。結果として、ラッチという一種のゲームチェンジャーたる発明を有効に活用できるまでには数年単位の時間を要してしまったのだ。

 そしてその後、トレイナーのみが対応戦力にあたれる状況になった現時点においても。また状況が変わった折に同じ轍を踏むまいと、JRN所属のノリモンの過半数は戦闘訓練を継続しているのである。

 

「号鐘は返してもらうぞ」

 

 そう言いながらトシマが号鐘に触れたとき。

 ゴォン、ゴォン。号鐘がおのずから鳴動して、その音を鳴り響かせた。

 

「なっ……!?」

「残念だったね。()()()()()()()()()()()()()。それとも、自分で施した封印の解き方を忘れたのか?」

「……貴様」

「貴様じゃない。私はブゥケトス」

「貴様など貴様で十分だ」

 

 ゆらり。号鐘がふわりと浮き上がりながら、けたたましく音をならす。そしてその鐘は再びブゥケの手におさまった。

 トシマをはじめとして、10のノリモンがブゥケを包囲するように立っている。

 

「シールドのないノリモンを攻撃するほど悪趣味ではない。その鐘を渡すんだ」

「それはこちらとて同じ。まだ、私達の目的は達されていない。それでもこの鐘を欲するなら」

 

 ブゥケは一瞬だけシールドを張り直して……そして、それを自ら割った。

 次の瞬間。空間に穴があいて。そして11のノリモンはそこへと吸い込まれていった。

 

「ようこそ、私の自元(アイゲン)領域(ゾーン)へ」

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