ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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20レ後:きょうだい

 吹雪の夜。それが、再び目を開いたトシマ達の目の前の風景だった。

 

「みな、異常はないか?」

「まーな、いきなり吹雪いてるから驚きゃーしたが」

「任せて。《日向う日輪の輝き》」

 

 アカイニチリンが雪を晴らし、視界が広がる。トシマは辺りを見回した。

 サイクロで薬学専攻のタムファタル号。ノーヴルで理事のコダマ号。パレイユでロマン派のイロドリ号。バランスで統合担当のアカイニチリン号。ノーヴルで空力のズームサンライン号。バランスで集中担当のメカマタマガワエン号。ロケットで購買部のスーパーブライト号。サイクロで超次元専攻のリクチュウ号。パレイユで音楽家のナリタエアウェイズ号。あの時ブゥケトスを囲んでいた者みなの無事は確認できた。

 ――ブゥケトスは? ブゥケはトシマ達を見下すように佇んでいた。号鐘を携えて。

 

「ようこそ、私の自元(アイゲン)領域(ゾーン)へ」

「やはりそうでしたか!」

 

 リクチュウは目を輝かせながら反応した。彼は次元間移動の術を見つけ出さんとする勢力の者であるゆえ、他者の自元領域への移動という明確にそれに当てはまるシチュエーションに興奮を隠しきれないでいるのだ。

 

「落ち着こうか。先ずは号鐘を取り戻すのが先だ」

「……そうですね。解析するためにも、あなたを無事倒して帰ってみせます!」

「なら、お手並み拝見させてもらおうじゃない」

 

 リンゴーン。号鐘がまた、不気味に鳴った。それが開戦を告げる合図になった。

 吹雪がトシマらを襲おうとする。だがニチリンの用意した晴れの区画には届かない。

 

「……姑息な手を」

「自分の自元領域にひきずりこんだオメーには、言われたくねーな!」

 

 そう言いながらブライトは吹雪の中に突っ込んでいった。もともと車だった頃から雪国を駆けていたブライトにとって、この程度の雪はまだ障害にはならない。

 そして到達すると、一閃。斬撃を放つ。

 

「喰らえ、《クヌガノシンキロウ》!」

「なら、《クヌガノオヤシラズ》」

「なっ……!」

 

 攻撃は受け止められ、ブライトはニチリンの区画に戻る。適切なヒット・アンド・アウェイ戦略だ。そしてそれを見て行けると判断したのだろう、何名かがそれに続いた。

 だが戻ってきたブライトやイロドリなど、攻撃に参加しない者もいた。気になることがあったからだ。

 

「ブライトや私と、同じ技を……?」

「俺は……奴を知っている。確かにだ」

「えぇっ! どういうことだい、ブライト」

「間違いない、彼女は……かつて車だった頃に、俺と同じ線路を走ったノリモンだ」

 

 イロドリ、アカイニチリン、スーパーブライトの3者はきょうだいだ。数が多かったので全国にこそ散らばっているが、扱える共通の技だって少なくはない。そしてブライトとイロドリが扱える技を、ブゥケトスもまた扱った。これが指す意味というのは、実に単純なものだ。

 それから何度も攻防の応酬を繰り返す中で。或いは他の者の攻撃を受けたり彼らへと攻撃を加えるのを観測する中で。特定情報を得て、或いは棄却情報を得て。ようやくブライトはその正体の特定に至った。

 

「なーイロドリ。奴を一番良く知っているのはお前じゃねーのか」

「そうなの?」

「俺の記憶が正しければ……奴はお前と同じで4灯ライトのグループだ」

 

 それを聞いてイロドリは……絶望した。そのグループに属する車は8両のみ。うち4両は2両ずつ同一の編成に組まれたため、成る前に2両の人格はもう片方の一部となっている。ほか1両も他の車の意識が強かった。つまり、ノリモンに成るとしたら最大5名。

 

「待って! ドルフィンも、ノスタルジアも、ラストランナーもいる。成ってないのってもうあの子しか」

「その子だと言ってるんだろーが」

「こんな形でなんて、再会したくなかった!」

「俺だってそーだよ!」

 

 気がついてしまったのだ。16年前に、悲惨な最期を遂げた車のことに。

 そしてふたりの感情は……ノリモンとしてまた会えたという喜びが、そんな彼女と敵対しているという悲しみが、そして彼女がここまでの力を持っていることへの一種の親心のようなものが、個別にぐちゃぐちゃにしていた。

 

「いいね、その顔」

「ブゥケトス、お前なー!」

「そして、久しぶりだね、姉貴」

「本当に、貴女なのね」

「うん。そしてその感情(おもい)が、儀式を完了に導く。……ほら!」

 

 リンゴン、リンゴン、リンゴーン。鐘がまた、けたたましく鳴って……そして、この自元領域から消えた。

 


 

「一体何がどうなってるんだ?」

 

 中庭の手前で控えていたトレイナー達はただただ困惑していた。

 不審ノリモンから号鐘を取り返して彼女をラッチに拘束するまでがノリモンの仕事で、後はトレイナーが対応する……はずだったのだ。なのに今彼らの目の前にあるのは氷の柱――侵入者と対応にあたっていたノリモン10名が消えて、代わりに生えてきたものだった。

 

「とりあえず、倒れてる連中を救護室に。何が起こるかわからないから氷柱には近づかぬよう」

 

 そうしてそちらの作業が終わり、引き続き監視をしていた頃。

 どこからか、鐘の音が響いた。

 

 それと同時に、中庭の地面が強く揺れだして。

 

「総員、退避! 退避ー!」

 

 地面から、赤い光が漏れ出して。それを突き破って、鋼鉄の塊が飛び出してきた。

 さらに、続けて奪われたはずの号鐘が音を鳴らしながら突然現れて。

 

「確保しろ」

「あぁ、《ストラトス・グレイ》!」

 

 そうナリタスカイが飛び上がうも間に合わず、号鐘は錨を携えて南南東へと飛んでいったのだった。

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