ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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22レ前:門

「なんてことをしてくれた。《船車接続(ラインコネクト)下關》!」

 

 トシマは激怒している。アンカーチェーンが伸びる。係留索が伸び、ウネウネと蛸の腕のように空を舞い、そしてブゥケトスをついに捕まえた。

 だが、残る9名のうちコダマを除く8名にはいまいちトシマがこれ程までに激怒する理由がピンときていなかった。

 

「なー、そもそも一体何なんだあの鐘は」

「かわいそうに、君たちそれも知らされずに私と戦わされているんだ」

「オメーは黙ってろブゥケトス、盗品を取り返すのにそれが何かなんて関係ねーよ」

「私の手からはもう離れたけど」

「関係ない。こちらがなんのために封印したと思っているのか。《興亜之光》!」

 

 トシマの首、チョーカーネックレスに取り付けられた鐘から、一筋の光線がブゥケに伸びてそのシールドを割った。色に関わらず。

 

「やはりそうだったのね、トシマ号、あなたも」

「なんのことかな」

「とぼけても、その横の部下たちにもきちんと見えているだろう」

「違うな、門が開かれるよりも前に得た力だとでも言っておこう」

 

 シールドが全て割れ、解放されたブゥケは手に持つウェポンを一度しまうと、両手を上げながらアカイニチリンが晴らしているエリアへとちかづいてきた。

 一方のトシマらは臨戦態勢を崩さず、そんな様子のブゥケをも警戒している。

 

「トシマ号。負けを認めようか」

「負けたのは貴様だ」

 

 トシマは回収した自らの錨を手に持ち、いつでも投げられるぞと威嚇しながら返した。

 

「それはどうかな。もう私の目的は完遂された。号鐘は次元を超えて封印を解いている」

「ならば追うしかあるまいな。ここから出してもらうぞ」

「させると思って? 儀式が終わるまであなたをその下へ連れて行く訳にはいかない」

 

 パチリ。ブゥケが指を鳴らすと、急激に吹雪が弱まり、あれほど強かった風も一瞬の間に凪いだ。

 そして、JRNの10名とブゥケの間の視界はクリアになる。

 

「そちらが私を連れて行く訳にゆかぬのなら、なおさら私は行かねばなるまい」

「ここは私の領域。出すも出さずも私次第。特に、まだ超次元を渡れぬあなた達は」

 

 パチリ。もう一度ブゥケが指を鳴らすと、降り積もった雪が舞い、机と椅子になった。座れというメッセージだ。

 ブゥケはその椅子にかけて言った。

 

「安心して。私達は必ずしもJRNと敵対する意図はない」

「窃盗と不法侵入をしてなおよく言う」

 

 トシマは雪の机を叩いた。そしてそこは部分的に崩壊する。どこからか局所的な吹雪が吹いて、あっという間に復元された。

 

「落ち着いて、落ち着いてトシマ号。怒っても事態は好転しない。ほら、紅茶でも」

「一旦話を聞くだけ聞かせてもらおうじゃありませんの、いいですね?」

 

 タムファタルとコダマがトシマを落ち着かせて椅子にかけるよう促した。

 トシマは渋々といった感じで椅子にかけ、数名もそれに続く。そして残った者は座った者たちの後ろに立った。

 

「……仲間に免じて話を聞こう」

「強情だね、私を倒したとて戻れやしないというのに」

「なんだと」

「本当さ、今だって特段引き留めている訳でもない。好き勝手に帰ったらいい、超次元を渡れるならね」

 

 お茶でもどうぞ、そう言ってファタルが渡した紅茶を飲みながら、ブゥケはそう返した。

 トシマは歯ぎしりをしながらもその言葉を受け入れた。彼女達はまだ、超次元を渡る術を会得していなければ、その見込みすらようやく立ったばかりなのだ。

 

「安心して。全て終わればきちんともとの次元に帰す。約束しよう」

「我々自身が人質という事か……。分かった。それまで話をしよう。やはり超次元の研究は……どうだい、リクチュウ」

 

 リクチュウはサイクロの超次元専攻のノリモンだ。ウェヌスへの接触を目指すなかで、超次元コミュニケーションの実用化は必要不可欠であり、現時点ではそれを研究している。

 

「はい! 超次元通信技術はeチッキでの実証も終わり間もなく実用化、同じ理論で航行技術も今年度中には実証実験を開始できる見込みです!」

「とのことだ。同じ手は使わせぬ」

「それはそれは。間に合ってよかった」

 

 ブゥケの笑顔を、トシマは憎たらしいものを見る顔で睨んだ。

 しかしブゥケはそれを気にもせず言葉を紡ぐ。

 

「さっきも言ったけど、私達シエロエステヤードはJRNとの対立を望んでいない。だけど、現時点ではシャワァが協力できる状態ではないと判断をしていたからこそ、こうして闘うことになっている」

「シャワァ……ああ、覚えているとも。ライスシャワァというノリモンの語った不可能な夢を」

「不可能じゃない。そう判断したから動いている」

「不可能に! 決まっているだろう!」

 

 トシマは再び立ち上がり、動き出そうとした。そんな彼女の頭に。バケツいっぱいの雪が被せられる。

 

「何をする」

「トシマ号は一旦頭を冷やした方が宜しいですわ。その状況では合理的な判断はできません」

 

 トシマの肩を上から押して、コダマは彼女を強制的に着席させる。そしてそのまま、向かいにかけるブゥケを見つめた。

 

「ブゥケトス号。その夢の内容は理事会でも不審な言動として聞いておりますわ。ですけど、それと金剛丸号の号鍾とのがいまいちわからないのですわ」

「いや、それはこちらでもおおよそ予想がついている」

「なんと」

「確認したい。貴様らシエロエステヤードと言ったな、そこにスタァインザラブという者がいるだろう」

 

 ブゥケトスは紅茶に口をつけながら静かに頷いた。

 

「ならば伝えておくんだな。替わりの門が開くことは無いと」

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