ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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22レ後:正義

 平行線の議論の末、11名のノリモン達の多数には共通認識が生まれていた。

 話をするのは、不可能ではない相手だ、と。この相手は、信用のできる対立組織だと。

 お互いがお互いの正義のために動いている。それは、お互いの正義のベクトルが一致すれば容易に協力しうるし、内積が負になれば手を取り合うことは絶対に不可能となる。

 

 だがうち1名、タムファタルは机から少し離れた雪の上で体を動かす傍ら、内心してやったりといった顔をしていた。

 ファタルはブゥケトスに紅茶を勧め、ブゥケはそれを飲んだ。薬入りの紅茶を。

 

「……なーファタル。お前()()()だろ?」

「なんですかブライトさん。喉乾いてません?」

「不自然すぎだろ。さっきGFJ(グレープフルーツジュース)飲んだから喉乾いてねーんだ」

 

 スーパーブライトはファタルの様子と過去の行いから彼女が何をしたのかを察していた。過去の行いに関して言えば購買部の万引き犯を3号館の廊下に放置するのだからブライトはどちらかといえば共犯者であるが。

 

「安心して。JRNの不利益になることはしていないし、むしろ超次元専攻のためになってる」

「明るくはないから詳しくはわからねーけど、それは確かだろーな」

 

 JRNはブゥケとの直接の対決には負けた。だが、今後を見据えるとむしろ勝ったと言っても過言ではない情報を引き出すことに成功している。これにファタルの投薬が関与しているのは明らかだった。見よ、ブゥケはトシマらに誘導されるがまま本来口外する必要もない情報まで口に出し、そしてそれをリクチュウがしっかりと記録しているのを。

 ブゥケとJRNの直接対決がブゥケの勝利なのは揺るぐことはないが、今後の展開を考えれば情報の獲得に走ったのは正解だったといえよう。

 ふたりは机へと視線を戻した。今はもうお互いに探ることがなくなってきたのか、どうでもいいことばかり話をしている。

 

「ねぇ、貴女は何がしたいの。お姉ちゃんに教えてよ」

「長いこと連絡を寄越さなかったのに今更姉面を?」

「それは! 貴女が成っているなんて思いもしなかったから。そうだと知っていたら貴女をすぐに探していた」

 

 イロドリは涙を流しながらもブゥケに迫った。

 

「ごめんなさい、こんなお姉ちゃんで」

 

 そのイロドリの問いかけに、ブゥケはしばらく声を出せなかった。言葉が見つからなかったのだ。だけど、きょうだいの仲を悪くすることが得策ではないと言う認識をブゥケも確かに持っていた。

 少しして、ブゥケは言葉を見つけておもむろに話しだした。

 

「……今は、こうして別の組織にいる。だけど、全て終わったあとになら……いや、いや、結論が同じで過程が違うだけならば、いずれは手を取り合う関係になれるかもしれないね。どちらにせよ、次のブーケは投げられた」

 

 ゴォン。鐘がなった。その音色は金剛丸のそれとは違うものだ。

 

「鐘の音……!」

「警戒する必要はない。全てが終わったことを知らせる音。これから全員をもとの次元に戻す」

 

 トシマは全員を呼び寄せ、ここへ連れ去られた時のようにブゥケを囲むように整列させた。

 続いて彼らは何らかの圧力を感じた。不思議な浮遊感が何かを切り分けて進むのを感じる。自分たちはその場から動いていないのに。それはブゥケの自元(アイゲン)領域(ゾーン)に招かれた時とまったく同じ感覚だった。

 気がつけば、トシマ達はJRN1号館の中庭に戻っていた。中庭を監視していた者が突然戻ってきた彼らに驚き、報告をあげるために臨時本部へとかける足音が響いた。

 

「さて、もはや私はここにいる義理もない」

 

 そうしてブゥケがそこを去ろうとしたとき、ふとその手首にロープが巻かれていることに気がついた。トシマのものだ。

 

「逃しはしないぞ。貴様次は既に投げられたと言ったな?」

 

 トシマは、重く響く声でそう問い詰める。意味がないとわかっていても。

 あくまでも、ブゥケの自元領域の外側ではJRNとブゥケは完全に対立したままなのだ。トシマはそれを示さねばならなかった。

 

「さぁね。投げられた行方は、投げた私にだって分からない。でも、風の息づかいを感じていれば、事前に気配はあるはずだ」

「そうか、ならばもう貴様に聞くべきことはない。ラストランの準備はいいな?」

 

 次の瞬間、ブゥケはその場から消えた。トシマ達は追うことはしなかった。それができないと分かっていたから。

 繋がる先の消えたロープはその場に落ちた。

 

「逃げたか。リクチュウ号」

「ログはとってあります。おかげで研究も」

「なるべく早く頼むぞ」

「承知」

 

 さて、解放されたということは、学園跡地はどうなっているかな。トシマがそう考えていると、帰還を確認したのだろう、ちょうどクシーが寄ってきてその報告を上げてきた。

 それは――彼女の、想像していた中で最悪のパターンだった。

 

「トシマ号、戻ってきたんだね」

「……あぁ、奴には逃げられたがな」

「そっか。でも、それより大変なことが起きている」

 

 クシーの顔には、焦りの表情が見えている。一呼吸おいてから、彼女はそれを口に出した。

 

「武蔵国分寺公園のクィムガン、Sバーストによりトレイナー複数名の行方が分かっていないんだ。当時ラチ内にいたユニットは――」

 

 あぁ、そうか。

 長崎の件を起こしたのも、ライスシャワァだったのだろうな。トシマはそう推測した。

 

「ブゥケトスの対応に当たっていた9名。悪いが、今から西国分寺に向かうぞ」

「承知」

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