ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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23レ上:傾向と対策

 円形広場にラッチが貼られて、はや数十分が過ぎた。

 新小平の本部と通信してお互いの状況を確認する傍らで、まずレオミノル・ユニットが出場してきて、現れたというスタァインザラブを追跡しに行った。そしてしばらくしてカンケル・ユニットが出場してきて、かわりにアクィラ・ユニットが入場した。

 そして、出てきたカンケル・ユニットからフィードバックを共有してもらっているところだ。

 

「なるほど、流体を使うクィムガンか」

「俺が間違えたんだ、だから」

「いや、禁忌を発見してくれただけありがたいよ」

 

 早乙女さんはそう声問さんをフォローしていた。実際、『こうやったらうまくいった』パターンを1つ紹介されるよりは、絞りきれない選択肢のうち1つを確実に削る報告があったほうが有り難い。

 

「……で、カンケルのリーダーは」

「あそこでラボの鯖に繋いでる。彼女、発生が専門で今ルースの落し子の発生追ってるから」

「それは心強い」

 

 それからしばらくの間は、本部と通信しながら不動さんが引っ張ってきた過去のデータの分析をすることになった。

 クィムガン対策において過去のデータを引っ張ってくるような状況が発生することはまずないらしい。というのも、過去に対応したクィムガンと同じクィムガンと対応することはまずない上、類似例を探す場合はデータを探している間に対応が終わってしまうからだ。

 だが今回は違う。今回対応しているのは正真正銘のルースの落し子だ。ゆえに過去データだって役に立つというもの。

 

「あった。アメリカ海軍の調査レポート」

「英語じゃん」

「仕方ないでしょ、当時日本はアメリカの統治下だったんだから」

 

 何はともかく僕達はその資料を読んだ。

 軍艦。近づくまでもなく波に襲われ転覆あるいは圧壊。沈没。

 航空機。半径3000フィート程度の半球状の領域に入れば風に煽られ不安定に。墜落。

 潜水艦。戻ってこないので通信もできずデータなし。

 遠距離砲撃。当たらん。魚雷。当たらん。機雷。無反応。

 結論。お手上げ。対馬海峡全域から東シナ海東武にかけて、被害低減のために航行ならびに飛行を推奨しない区域の設定を提案。

 

「ねぇこれなんの役に立つの」

「いや、極めて重要。やっぱりここに書いてあるクィムガンの攻撃手段、ぜんぶ波か風で他の一切の言及がない。ラチ内での観測でもそうだったから推測してたけど、これが記録からも正しく裏づけされている」

「……なるほど」

 

 つまりあれだ。ルースの落し子、恐らく《桜銀河》がめちゃくちゃよく刺さる相手だ。投げ道具は風で煽られれば外れてしまうけれど、光線はそうじゃない。それに反撃してこないのなら、ずっと打ちっぱなしでもいいわけで。

 

「顔に出てるぞ」

「射線上に入らないでくださいね」

「もうやらないって!」

 

 過去にそのミスをやってしまった銀城さんが横から吠えた。ならいいや、黄色は僕が安全に撃ったろ。

 

「あっそうそう。風でシールドがじわじわと削れるから気をつけて」

「把握した」

 

 それから少し練っていると、こんどはドラコの人達が出てきて、僕たちがいれかわりに入場することになった。

 ラチ内では、確かに吹くはずのない風が吹いている。ルースの落し子によるものだろう。

 

『ウルサ・ユニット、ただいま全員入場』

『こちらカリーナロケット。対象が巨大かつ移動しないゆえ各ユニットの裁量に委ねる。オーバー』

「いや戦略雑だなおい!」

 

 成岩さんが思わず突っ込んだ。どうも無線で問い合わせた感じ、本当にあのど真ん中から動くすべがないらしい。まな板の上の鯉とはよく言ったものだ。

 

「……70年前、こんなのに苦労してたの?」

「そりゃ海の上じゃないからな」

「それに、昔はノリモンもトレイナーもいない。双葉氏が後のトシマ号と最初のトレイナーとなって、ようやく対抗手段を得たけど、当然知見もない。全てが、手探り」

 

 だけど、現在は違う。それだけの話だ。

 僕はトランジットもせずに、手の先に力を溜め始めた。その必要は無かったから。

 

『ウルサロケットより。射線上、入らないで下さい』

「やるんだ」

「これが一番効くと思います。《桜銀河》」

 

 桜色の光が、ルースの落し子にのびる。そして巨体の黄色のシールドに当たった。

 

「じゃ、俺達もやるか」

「あぁ。動かないのであればトランジットをする必要をも、ない」

 

 みんなは風をかき分けてクィムガンの方へと駆けていった。僕はそのまま動かずに、飛び交う無線を聞いて状況を把握しながら《桜銀河》を打ち続ける。

 しばらくすると風に削られ続けたのか、参宮さんのシールドがそろそろ危ういということで早速にも交代することになった。……って、早くない?

 

『カンケルのシールドはまだ回復しきってないのでは?』

『仕方ないだろうが。近寄ると風でゴリゴリシールドが削られる』

 

 じゃあ近づかなければいいのでは? 僕は訝しんだ。

 とはいえ、回復しきってない薄いシールドだろうと無いよりは幾分かマシだ。なのでカリーナの撤退は避けられず、結果としてまだ割れた人のシールドが完全に回復するよりも前のカンケルが戻ってくることになってしまった。

 

 これ、今度は今度でアクィラの後はウルサとカンケルがほぼ同時に落ちることになりそうだけど、大丈夫なのかなぁ? 大丈夫じゃない気がする。……よし、それよりも前にすべて割り切ってしまうことを目指そう。まずは僕のできる黄色からだ。

 そう思いながら、僕は照射し続けている《桜銀河》と、その先のルースの落し子を眺めていた。

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