ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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23レ中:選択と集中

 《桜銀河》を打ち始めてからおよそ20分ほどが経った。この技は打ち始めから時間が経つにつれて1秒あたりに割ることのできるシールド量が増価していくので、それがこれだけの長い時間ともなればかなりの量のシールドを削れているはずである。

 にもかかわらず。たまにわざと攻撃を上方に反らして見える範囲での黄色のシールドの量を確認しているのだけど、現状でも他の色の半分程度までしか減っていない。もちろんその間も他の色のシールドも削られているはずなので、単純に半分にまでしか削れていないという訳ではないのだろうけれど……。

 

 だが、その疑問はアクィラと入れ替わりに戻ってきたドラコの鮫島さんにより明かされた。

 鮫島さんはラッチやシールドについての研究をするグループにいて、おかげで僕たちが割合の変化で見て推測するしかないシールド残量を目測で推定できるらしい。僕は前に中泉さんからそう聞いたことがある。

 

『……最悪だナ。そんな気はしてたガ、シールドの回復が早スギル』

『どういう事だ』

『文字通りダ。黄と緑以外シールドの回復速度に損失量が間に合ってイナイ』

 

 クィムガンの……いや、ノリモンやトレイナーのシールドは放っておけば少しずつ復活する。ただし、張っている間はそのスピードは極わずか……の、はずなのだ。その極わずかのスピードですら、削っている速度より早いというのである。

 

『じゃあ何、私達の攻撃はほとんど無意味だったということ!?』

『無意味ではナイ。回復するシールドにヨリ、黄色のシールドも全方位により分散サレル。それによりウルサロケットが攻撃を当て続けられてイル』

 

 なるほど。そういう側面もあるのか……。

 それから鮫島さんは、より効果的な作戦を提案してくれた。可能な限り多くのトレイナーがロケットの派閥のノリモンにトランジットし、先に黄色をすべて叩き割るというものだ。その間、他の色のシールドは回復してしまうことになるが、もはや殆ど削れていないので誤差のようなものらしい。

 

『ロケットとトランジットできぬ者モ、その内で可能な限り多くができる派閥に集中スベシ』

『それもできなければ』

『休メ。攻撃するだけ無意味ダ』

 

 一度割られきった色のシールドは、他の色のシールドがある限り再展開されることはない。正確に言えばできないらしい。そういう訳で、今回は徹底的に1〜2色ずつ潰していくという方向にまとまりつつあった。普段はそんなことをするとそのうちシールドの面積がかなり減ってしまって攻撃を当てるのが面倒になっていくのであまり取ることのない作戦だ。

 

『ドラコロケットよりウルサロケットへ。その技の特性は以前より聞いている。決して止めるな』

『承知しました』

『それでは各局。決してウルサロケットの射線内には入らずに、できれば逆側から叩いていこう。《船車接続(ラインコネクト)稚内》!』

 

 そして全体での黄色削りが始まった。こっちでやることといえば、まず《桜銀河》を止めないこと、そしてルースの落し子が風を操って近くのトレイナーを《桜銀河》の方へと飛ばしてくるので、そうなったときに攻撃を反らすことの2つだ。そもそも向こうでは声問さんが風を打ち消してくれているらしいので、飛んでくることもほとんどない。

 しかも、ルースの落し子が《桜銀河》からシールドを逃がそうとすれば、向こう側にいる氷川さんらの集中攻撃をうける。そっちを避けようとすればこっち側に黄色が回ってきて《桜銀河》で削ることができる。そうしてそれを10分ほど続けたころ。

 

『各局、各局。黄色は見えるか』

『1箇所発見、攻撃します』

 

 雷撃が、ルースの落し子に落ちて。そして、黄色のシールドが割れた。

 

『割れたナ。この調子だナ。次は緑ダ』

 

 喜ぶ間もなく次の色を割るための作戦が始まる。どうやら北澤さんがしれっとだいぶ削り続けていた緑が選ばれたようだった。

 

『緑以外は……ウルサとカンケル、それぞれシールド残量は』

 

 なぜ? と思いながらも残量を告げる。どうも作戦の最中にユニットの交代が入ればバランスが崩れることになりかねないのだという。なるほどね。

 

『承知、カンケルを一旦撤退、カリーナを入れてほしい』

 

 シールドがまだ回復しきっていないうちに再入場したカンケルの人達の残量は、僕たちよりもひどいものだった。ここで戦略的に交代を入れ、回復に充てるという訳だ。

 そして、かわりに入ってきたカリーナの戦力も考慮した結果、次はメインをパレイユ、それができぬ者はノーヴルで攻撃することになった。

 

「失われし星の輝きよ、果てしなくなつかしい大地に最後の煌きを! ポーラーエクリプス号、このトモオモテに宿れ!」

 

 今度はポラリスの力を借りて前に行き、直接コジョウハマで青のシールドを殴る番だ。このコンバートこそがトランジット・トレイニングの強みで、もちろんルースの落し子が初めて発生したときは無かったもの。

 さて、今度は近接で割りにかかりますか。

 

 そう思っていた僕たちの頭の中では、いずれかのシールドの割れたときにだけ発動される、クィムガンの最も危険な行動は隅の方へと追いやられていた。

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