ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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24レ前:ReLaunch

 円形広場に到達したトシマらは、その光景に困惑していた。

 何せ円形広場の真ん中には、ラッチもなくただルースの落し子が薄っすらと赤い光を纏って立っていたのだから。

 

「なぜラッチを解除している」

「ウルササイクロがその必要はないと判断したからです」

「私が、開ける判断をした」

 

 識別コードを呼ばれた佐倉空が、すぐさま名乗り出てトシマの前にやってきた。トシマは彼女にどういう状況だったのかを尋ねた。

 

「あれは水が無ければ動けない。それを一番知っているのはトシマ号、あなたのはず」

 

 佐倉はやる気の感じられない声でそう答えた。

 声だけではない。その目もまた、燃え尽きたかのように覇気が全く感じられない。

 

「疑うなら、軽くあれの表面を撫でればいい。まるでメレンゲでできた城」

 

 佐倉の言うことを検証するために、コダマはパーラーカードを投げた。それは突き刺さるどころかクィムガンの足を軽々と貫通して、奥の木に突き刺さった。

 

「……ハリボテのようですわ」

「この状況のクィムガン、前に見たことがある。最早クィムガンとは呼べないかもしれないけど」

「9月頭にウルサが出動した件の報告書に記載されていたものか?」

 

 佐倉は静かに頷いた。それは同時に発生していた件の方が注目すべき事象が発生していたために、当時はあまり注目度の高くはない報告書ではあった。だが後から検証と精査をしていく中で、具体的にはリロンチの発生を疑う中で、引けず劣らず重要な事象が発生していた可能性が高いと判断した報告書でもあった。そしてその高い可能性はただ今をもって発生したと断定され、その報告書は最も重要度の高い報告書であったと再分類された。

 

「差し支えなければ、最後の状況を聞かせてほしい」

 

 すぐに言葉が戻ってくることはなかったが、少しの間をおいてから佐倉はポツポツと紡ぎ出した。

 

「みんな、近接で攻撃してた。遠隔メインの人も、トランジットして前で。それで――みんな、呑まれた。私は斜め上に逃げた、だから水が届かない、それで助かった。でも、それを見て助かったのは私だけ」

 

 Sバーストを見た後、シールドを割られることなく脱出ができたのは、佐倉ただ1人だけだった。そのほかは松代美佐が中泉の忠告の後に脱出が叶い、Sバーストを見ることなく出場していたのみ。そして全てが終わってから再突入した際、ラチ内に残っていたのは氷川日枝、鮫島勝、紀勢佐奈、高山各務、北澤百合の5人のみ。残りの8人はみなルースの落し子のSバーストにより超次元に押し流されてしまったのだ。

 

「その5人は……」

「脱出して、しばらく待って。アクィラが入場したら、倒れてた。私が知ってるのは、それだけ。ほかの8人の仲間は……仲間は」

「無理をしなくていい。状況は把握した」

 

 トシマはスタァインザラブを見失い公園に戻ってきていたレオミノル・ユニットに佐倉を預けると、トレイナーたちを撤収させ新小平に戻って休むよう指示し、本部には監視要員の手配を要請した。

 そして、広場には10名のノリモンが残された。彼らの目線はルースの落し子に集中している。

 

「見ておくといい。ブゥケトスの言っていたリロンチが間もなく終わる」

「リロンチ、って……」

「聞こえていただろう。このルースの落し子は、今は蛹のようなものだ。いずれ中からノリモンが出てくる。かの報告書に記載されていた通り。……いや、間もなくか」

 

 ルースの落し子が薄っすらとまとっていた赤い光が、少しずつじんわりと強くなってゆく。

 そして、間もなく。ピキリと、クィムガンの表面にひびが入って、そこから眩しい赤色光が漏れ出す。それはどんどん強くなって、クィムガンの表面を割って呑み込んで。そのまま少しの時間が経って、ついに全ての肌が見えなくなると……今度は逆に、急激にしぼんだのだった。

 そして、しぼむとともに体積に反比例してさらに光が強くなる。それはもう、直視できないほどに。

 その様はまるで、何か神聖な儀式のようで。そこにいた者達はみな、その光景に圧倒されてただ黙ってそれを眺めることしかできなかった。

 

「これが、リロンチだ」

 

 トシマはそう発した。

 しばらくすると、その光が弱まった。その発光源は、いつの間にやら人型をしていて……最終的には、ノリモンが1名、そこに遺されていた。

 そのノリモンは光が収まると、ルースの落し子の向いていた方へと投げ出された。それに気がついたナリタエアウェイズが駆けつけて彼女を受け止めた。

 ルースの落し子の元いた場所には、『何も無い』が残されていた。

 

「あの、トシマ号。これがリロンチだとしたら、なんでこれを禁止してるんです。それに、N.A.W.の腕の中のノリモンは一体……?」

 

 誰も声すら出せなかったところで、不動亜紀がようやく問いかけることができた。それは、事情を全く知らぬ者がみな抱いていた疑問でもあった。

 

「彼女は……ルースの落し子()()()ノリモンだ」

「それって」

「新小平に戻るぞ。話はそこでだ」

 

 そして残された『何も無い』の監視を到着した手配された者達に任せて、トシマ達もまた新小平のJRNへと戻っていった。

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