ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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25レ:エピローグ(終)

 ブゥケトスの襲撃の翌日。

 未だに都立武蔵国分寺公園に残る『無』は消えず、行方不明のトレイナー7人の手がかりすら見つかっていない。

 

「……そうか。象牙色の髪をしたノリモンか」

 

 変わったことがあるとすれば、ラチ内で倒れていた5人全員が回復し、目を醒ましたことだ。そしてその5人は全員がルースの落し子S(シールド)バーストの後に象牙色の髪のノリモンと会ったと証言しているのだ。

 そのノリモンは一体また何者なんだ? トシマの頭を抱える材料がまた一つ増えた。

 

 コンコンと、扉の叩かれる音がする。入室を許可すると、慌てた様子の氷川日枝が勢いよく入ってきた。

 

「トシマ号、緊急の要件だ」

「何かを思い出したのか」

「いや違う。eチッキを通じて()()()()()()()()()()

 

 中泉良平は、行方がまだわかっていないはずでは? トシマは訝しんだ。だが氷川は左腕につけられたeチッキの端末を見せながら、真剣な目でそれを見るようトシマに促した。トシマもその画面を覗き込む。そこには、本当に中泉からのメッセージが届いていたのだった。

 

 氷川へ

 これを読んでくれたら、まずは何でもいいから返信をしてほしい。届いているという確証がほしいんだ。なにせ携帯通信も使えず、電話だってつながらない。これが最後の望みなんだ。

 今ぼくは、新小平駅にいる。武蔵野線の、新小平駅だ。

 でも、ここにJRNはない。JRNがあったはずの場所に行くと、そこにあるのは国府台に移転したはずの病院だった。それだけじゃない。自宅のあるはずの場所に帰れば、そこには畑が広がっていたんだ。

 それに、一番重要なこと。道行く人々をみて、おかしいと思った。ノリモンがいないんだよ。頭がおかしくなっちゃったのかと思ったよ。

 幸いにも現金は使えたから、その日はネットカフェで過ごした。そこでふと気になって、ネットニュースを見たんだ。やっぱり、ノリモンのノの字もなかった。それどころか、ネットサーフィンをしても同じ。

 さすがに莫迦でもわかるよね。ここにノリモンはいないって。しかも不気味なのは、それでもUSBやコンセントの仕様が同じでこのeチッキを充電できたこと。これは夢なんじゃないかって思って、もうそのまま眠りについたよね。

 でも、朝起きても何一つかわっていなかった。それで、ようやくふと気になって、もうやけくそになってトレイニングをした。したら、できちゃった。

 これって、きちんとモヤイでウェヌスには繋がってるってことだよね? ということは、JRNにも、そうだよね? 信じていいんだよね?

 それでeチッキのこの機能を、試してみることにする。もし、これを読んだのなら。返信してほしい。きちんと繋がっていることを、僕に教えてほしい。

 

「……どういうことだ」

「中泉は生きている。それは確かだ」

「それはわかる。だがこの文の内容は」

 

 まるで異世界にでも飛ばされているかのようではないか。トシマは震えた声でそう言葉をひねりだした。

 ウェヌスのような領域(ゾーン)があるのは認知している。だが、その先に今いる次元と同じように人々が生活を営んでいるような別次元があることを、トシマらは認識していなかったのだ。

 確かに、言われてみれば可能性としてありえない話ではない。だがそれは、おとぎ話やファンタジーの世界だと勝手に決めつけられていたものだった。宇宙人の存在のように。だがしかしそれは、中泉からのメッセージという形で今間違いなくトシマの前に現実として突きつけられている。

 

「あいつはこんなことでジョークを言う奴じゃない。取り急ぎ、読んだ旨を送っていいか」

「ひとまずはそうしよう。こちらでも状況を呑み込めず、結論を出すのは遅くなるかもしれないとも伝えておいてほしい」

「そうだな」

 

 端末を弄り中泉への返信を送りながら、氷川はふと、一つの可能性に気がついた。星野にも同じように連絡を試みたほうがいいのではないか? と。

 

「他の7人も、同じだろうか?」

「……わからぬ。だが、できればそうであってほしいな」

「同じ事象によって行方不明になったのだから、その可能性は高いんじゃないか」

 

 その氷川の言葉が真実だとするならば。JRNは行方不明になった者達とつながっている。ならば、全員を帰還させる手段が存在する。今は見つかっていなくても、必ず。

 トシマはまず、手始めに超次元専攻の有識者へと招集通知を送った。幸いにもすぐに返信があり、その日の昼過ぎには彼らの意見を聞くことができた。

 彼らにその後もいくつか交わしたeチッキ上での中泉とのやり取りを見てもらい、そして氷川の仮説に矛盾がないことを確認した。さらにもう一度3ユニットのうちJRNに帰ってこられている7名をその会議に呼んでヒアリングを行う中で、北澤百合が象牙色の髪のノリモンから()()()()()()()()()の名を聞き出し、そして別次元の存在を直接示唆する発言を引き出していたことがわかった。それはその仮説をさらに後押しするものだった。

 

「行方不明となったトレイナー達は生きている。ならば全員を取り戻すしかあるまいな」

 

 超次元専攻の有識者と3ユニットの帰還者に加えて、理事会の理事たち。トシマはまず彼らを集め、新たなるプロジェクトの概要を告げ、施行を宣言した。

 

「新規プロジェクト。目標は行方不明者全員の発見と帰還だ。これをプロジェクト・ベガと名付けよう」

「ベガ……ベガか。よし、最後まで振り向かずにやってやろうじゃないか」

 

 オルペウスと同じ失敗はしないと決意しながら、そうトシマに同調した。

 ここに、プロジェクト・ベガははじまったのだ。




【おしらせ】
 筆者多忙のため、申し訳ないのですが4章連載開始は9月までお待たせしてしまう形になります。
 それまでの間は閑話などの不定期な投稿の予定です。半月に1回くらいは投稿したいと考えています。
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