ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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2便後:生徒会長

 トウマさんに連れられ、建物の中を進んでゆく。さっき一度外に出た時に夕焼けが見えたし、時間帯のせいなのだろうか。はたまたもともと人通りの少ない場所なのだろうか。その廊下は、恐ろしいほどに静かだった。

 

 生徒会。それは生徒によって組織された自治組織のことだ。基本的には全校生徒が会員であり、生徒による生徒のための活動組織で、その役員として生徒会長だとか、そういった役職が生まれてくるもので、こういった役員は生徒の選挙によって決まることが多い。

 だけど、この学園の生徒会は違った。毎年の年明けから年度末にかけて、学園で最も強い者を決める競技会が行われる。それを制した者が生徒会長を始めとした翌年度の役員になる、というものらしい。

 

「つまりあなたも」

「そういうこと。ま、会長には負けちゃったけどね」

 

 つまりはその生徒会長というのが、この学園で最強なのだ。

 ……なら。

 

「その競技会って、知識勝負とかもあったりするんですか」

「もっちろん。文武両道はこの学園のモットーの1つだもん」

 

 異次元からの訪問者のこととか、そういうことを知ってる者がいたっておかしくないはずだ。仮にその存在を知らなくたって、手がかりくらいならもっていても。だって、僕のいた次元にだって鳥満博士がいたんだから、この次元にだってそういう識者がいたっておかしくはないはず。

 そんなことを考えながらトウマさんについていくと、彼女は大きな木の扉の前に止まった。

 

「着いたよ、ここが生徒会室」

 

 トウマさんが扉を押すと、それは見た目とは裏腹に軽々と滑らかに開かれて、そして僕たち2人を受け入れた。

 その奥では、執務机にかけた、恐らくその机の主であろう者がこちらに目を向けていて……そして、僕をとらえたのだった。

 

「ふむ。確かに見たことのない顔だ。トウマ君、その子が件の迷い人だね?」

「えぇ。連れてまいりました」

「そうか。……君、そこのソファにかけなよ。それと、肩の力を抜いてもらって構わないよ。君が学園を害す意思をもたないのなら、むやみに事を荒立てるのは愚かだからね」

 

 その、推定生徒会長の言葉に従ってソファにかけると、会長さんは回収してくれてたんだろう、あの時身に着けてたはずの端末とか、チッキとかの持ち物を入れた袋を携えてむかいのソファにすわった。

 

「申し遅れたね、私は生徒会長を務めさせてもらっているシンカリムドルナと言うんだ。良ければ君のことを教えてくれないかな、()()()()()()()()()

「……えっ?」

 

 今、会長さんは何ていった? もしかして、知識を持ってる?

 顔面がこわばる。それを見たのだろう、会長さんはニコリと微笑んだ。

 

「おや、図星だったかな」

「図星って」

「常識が怪しいって、クモエコロ教諭からうかがっていたからね、だが君がどこから来たのかは私たちも何も知らない。だけどもね」

 

 そういいながら、会長さんは紙袋を机の下から取り出す。中にはチッキケースや端末、小物入れに靴などの僕の持ち物が入っていた。

 

「あまりお行儀はよくないことだけれど、君の端末のほうを見させてもらったよ」

「見たんですか」

「見たともいえるし、見てないともいえるね。私が確認できたのはロック画面だけさ。でもね、学園の中だというのに、()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()()()()なんて異常な状況。それだけで君が外部からの来訪者であることの裏付けの1つにはなるだろう?」

 

 そんな些細なことから。やはり学園最強というのは洞察力もかなり強いんだ、ということがひしひしと伝わってくる。

 だけどそれは僕にとっては絶望の材料の1つにもなった。だって、そんな彼女でさえもわかっているのは僕がここに来る前にいたのがこの次元の外側であるということだけ。その言いぶりからして、どうやってこの次元の外側とを行き来できるのかどうかも、おそらく把握できていないのだろうということも。

 ……いや、もう直接聞いてしまおう。だめならば、だめで切り替えなきゃいけない。

 

「念のため確認させてください。会長さんは僕のような人と以前に会ったことは」

「そうだね、君の疑問にも答えよう。私にはないとね。……トウマ、君は?」

「いや?」

 

 ……そっか。あんまり期待はしていなかったけど、やっぱりそうだよね。

 でもこれではっきりした。僕はおそらく、すぐにはJRNに帰れない。それがはっきりした瞬間だった。

 

「そうですか」

「やけに冷静だね?」

「ここであわてても、帰れないことに変わりはないですからね。だったら、そのエネルギーは帰る手段を見つけるのに使ったほうがいい。それに」

 

 紙袋の中から、お目当てのものを取り出す。本当はできるかどうかはわからないけれど、僕の中には絶対にそれができるという確信めいたものがあった。

 

「――この次元だって、もと居たところと繋がってますから」

 

 僕の体を黄色い光が包んだ。この光こそ、この次元とウェヌスが、みんながいる次元とが超次元的に繋がっていることの証左に他ならない。

 そう、さっき取り出したのはチッキだ。僕のキールたるクシーさんと僕とをつなぐ、モヤイの先のアンカー。そこにモヤイが伸びてこれる場所なんだ、ここは。

 だってここに僕を送り込んだのがゲッコウリヂルさんで、そんな彼だってウェヌスから力を得ているのだから。

 

「これは驚いたね。君はいったい何者なんだい?」

 

 黄色い光が晴れると、興味深いものを見るような目で会長さんがそう聞いてきた。

 いまならば、自信を持って言える。自分が何者であるのかを。

 

「僕は山根信也、JRNに所属するトレイナーです」

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