ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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7レ後:それが僕とのファーストコンタクトだった

 僕とコダマさんを巻き込んだベーテクさん達との会食は、賑やかに幕を開けた。会食と言っても、その言葉が与えるイメージのような堅苦しいものからは程遠く、かなりほんわかとした空気だ。

 僕の向かいでは、アドパスさんが美味しそうに料理をつついて頬張っている。前から疑問に思っていたけれど、ノリモンがご飯を食べたらその後体の中でどうなってるんだろうね? 僕達人間のような代謝系を持ってるわけじゃなさそうだし。

 

「ミーの顔に、何かついてたりしマースカ?」

「……え? いや、考え事をしてただけです」

 

 あ、やべ。

 考え事をすると顔が動かなくなる悪い癖が出てしまった。

 

「考え事、ねぇ……。差し支えなければ、教えてくれると嬉しいよ」

「そんな大したことじゃないんです」

「そうかい。でも、結構新しい発見になったりして上手くいくもんなんだよ、こういうところでポロって出てくる奴がねぇ」

「これで結果出してるから質が悪いんですわ……」

「じゃなかったら頻繁にこんなことしないよ、意味ないもん」

 

 あ、これってそういうきちんとした意図があったのね。

 そんな斜向かいのベーテクさんの言葉に、隣にいるコダマさんは頭を抱えている。

 ピコン。成岩さんから送られてきた個別チャットには、『このふたりの話は長いから聞き流しとけ』との一文が。

 

「君等はどうしてそういう変なところばかり論理的なんです?」

「僕が論理的じゃない事なんて過去にあったかい?」

「傍から見ると突拍子もないことやってるのは自覚してます? 根幹がそうなのは分かりきってますわ。おかげで形だけ真似して火傷するアホの対応がけっこう大変なのよ」

「それは僕が悪いのかい? 何もその意味を考えずに似たようなことをするのがいけないんじゃないのか」

 

 ベーテクさんはそう飄々と言葉を返した。

 正論を返しているようだけど、さっきコダマさんからこの派閥の特異性を聞いていただけに、さすがにこればっかりはコダマさんに同情したい。

 というか、このラボにすらポラリスちゃんがいるのに、その可能性に気付けないものなんだろうか? そう思ってポラリスちゃんを見れば、彼女はきちんとお皿に料理を取り分けて、意外にも礼儀正しく食べているのだった。

 なるほど、これベーテクさんはポラリスちゃんを基準にしちゃってる奴だ。

 

「莫迦と天才は紙一重とは、よく言ったものですわ」

「褒め言葉として受け取っておくよ」

「褒めとらんわ。これだから一桁世代は……」

 

 その時である。

 ドンと音がしたかと思えば、不機嫌そうな成岩さんが立ち上がっていた。怒ってるなこれ。

 

「ベーテクもコダマ号も、そろそろ後でふたりでやってくれないか? その話はこの場じゃなくてもできるだろ」

「そうだね、この話は終わってからにしようか」

「せやな」

 

 それからしばらくは、料理に舌鼓を打ちながらの他愛もない雑談が繰り広げられた。そしてやがて、話はなぜか昔話へと移っていった。みんながどうしてJRNの門を叩く事になったのか、だ。

 

 コダマさんの頃はまだノリモノイドに成ること自体が条件も分からず貴重な存在であったため、ほぼ自動的に前身組織に入ったらしい。次にJRNに入ってきたのはアドパスさんで、どうやら国鉄の分割民営化で元いた居場所を失って、それから世界中を放浪してからJRNに流れついたのだとか。

 そう、国鉄だ。なんならベーテクさんや成岩さんは国鉄を知らない世代だということだから、話していて全くそんな感じはしないのだけど、意外にもアドパスさんはこのラボで一番の年上なのだ。『ノリモンは外見、精神、そして見た目の齢が全て異なる』というのは、まさにこういう事なんだろう。

 

 その次に話があったのが成岩さんで、彼は僕と同じように順当にトレイナーズスクール上がりだ。ただ、なかなかキールにできるノリモンが見つからないでいて、JRNを去ることまで考えていたらしい。

 そんな彼が出会ったのが、JRNに入ってきたばっかりのベーテクさんだった。ベーテクさんはノリモノイドになって少しの間は地元にいたのだけど、その頃ちょっとしたきっかけでコダマさんと出会い、コダマさんの方からノーヴルに招いたのだとか。

 そしてそれから3年弱経ったころ、ベーテクさんがアドパスさんと一緒にラボとして独立する話になって、その時にノリモノイドになったばかりのポラリスちゃんを連れてきて今に至る、とのことだった。

 

「さて、山根くぅん。今度は君の話を聞かせてもらおうか」

「そんなわざわざ話す事もないですよ?」

「クシーとの話とかありますやんか」

 

 聞きたいって言うのなら話さない理由は無いけれど。

 トレイナーズスクールに入って2年目に、適正派閥毎に別れての授業が本格的に始まって。それで秋の訪問学習の時にたまたま僕のいたグループの担当になっていたのがクシーさんで、それが僕とのファーストコンタクトだった。

 それでその時の帰り際に、彼女の方からトレイニングの適性があることを告げられて、スクールを出たらおいでと言われたんだ。だけど、ちょうど僕がスクールを出た頃に彼女が忙しくなって、それで最初の半年は購買部にいた、というのが僕の来歴だ。

 それを話すと、まずめちゃくちゃ落ち込んでいる成岩さんが目に入った。

 

「スクール出る遥か前にキール見つかってたのかよ……。ベーテクが来るまで2年近く見つからずにいた俺は何だったんだ」

「あんまり気にしない方がいいですわ。キールが早く見つかったからと言って優秀なトレイナーになるかと言えば、経験上必ずしもそうではないし、その裏もそう。山根にも言いますけど、早くキールが見つかったからと言ってそれは君が優秀である事にはならんのですわ」

「常に頭に入れておきます」

 

 これは本当にそうだ。勘違いしてあぐらをかいていてクィムガンとの戦いで重大な後遺症の残る大怪我をした人のことは、スクールで半ば反面教師として、そしてクィムガンの恐ろしさを伝える教材としても周知されている。

 決してそうはなるまい。今ここで釘をさされたのもあって、僕はその決意をさらに強くした。

 

 こんな感じで、わいわいと2時間くらい話しながらこの日の時間は過ぎていったのだった。




【キャラクター紹介:#6】
コダマ
・誕生日:9月22日
・出身地:大阪府
・所 属:ノーヴル/JRN

 JRNでノーヴルの派閥を率いるベテランのノリモン。
 丁寧な関西弁で話す、仕事に追われる苦労人。だけどその仕事の少なくない割合は自分で増やしている。
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