ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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10便後:Watcher

「シエロ君? シエロエステヤード君?」

 

 会長さんに呼びかけられてまたハッとした。どうも話をしている間でさえ、僕はぼんやりとしていたらしい。

 

「……あっ、ごめんなさい」

「大丈夫かい、さっきからずっと反応が鈍いじゃないか」

「なんだか妙に慣れない感覚があったので。まずは慣らすところからですかね……」

 

 そう言って、笑って誤魔化す。

 この話の間、僕はずっと意識の決して少なくない割合を持っていかれてしまっていた。話を聞いていなかった訳ではないけれど、どうしてもJRNとの間で連絡が取れるようになったということがそれだけ僕にとって大きいことだったのだ。

 

「だったら今日の午後はゆっくり休むといいわRest」

「そうだね、これも含めての慣らしの期間だ。今日は君の方のフィードバックだけにしようか」

「なんか、わざわざ時間を作ってもらったのにごめんなさい……」

「なに、元から午後は別のタスクをする予定だったからね。早まったとして、前倒しにするだけさ」

 

 はんこを押す仕草をしながら、会長さんはそう言った。それを見て僕はさらに申し訳ない気持ちになった。せっかく僕のために時間を割いてくれているのに。

 よし、一旦JRNのことはできるだけ考えないように置いておいて、話に集中しよう。

 そう思って前を向きなおすと、会長さんもちょうど咳払いをして本題に戻そうとしたところだった。

 

「さて、話を先ほどの模擬戦に戻そうか。私が一番気になったのはあの光線だよ。あれは何だったのかい?」

「《桜銀河》のことですか」

「いや、そのスキルの名前は私は知らないよ? だがその《桜銀河》の光の中にいる間、ぎ装が急に鉛のように重くなって私は一切の動きができなかった」

 

 動けなかった? どういうことだろう。《桜銀河》に動きを封じる効果はないはず。

 それを伝えても会長さんは事実私は動けなかったのだと主張してくる。

 

「僕の地元では、《桜銀河》はシールドを割る為のものでした」

「シールド、とは?」

 

 小首をかしげる会長さん。しかしどこから説明すればいいのやら……。

 この次元にクィムガンは……おそらく、いない。それを踏まえて説明するとどうなる?

 

「なんて言えば良いんですかね……。クィムガンという怪物というかお化けみたいな存在が発生するので、その対応をする仕事をしていたんです。それでそのクィムガンが纏っているシールドを割らなくてはいけなくて」

 

 伝わるのかどうかは正直怪しい。恐らく伝わらないだろう。

 だけれど、雰囲気だけでも伝わってくれればぐっと説明が楽になる。

 

「Hmm……。まるでFictionのような」

「まあ、彼にとってはそれが現実なのだろう。申し訳ないが、私達はそれをイメージすることになることは頭に入れておいてほしい」

「仮に作り物の話でも、なんとなくでイメージしてもらえればいいんです。話を戻すと、そのシールドを含む……僕達はウェヌスと呼んでいるところとの繋がりを断つのがこの《桜銀河》なんですよ」

「すまない、話が突然飛びすぎていまいち理解ができないのだが……」

 

 まぁ、うん。それは仕方がないか……。

 

「要するに、人間には無害なはずなんです、《桜銀河》は」

「ではなぜ打った」

「ただの目くらまし程度にはなるかなぁと」

 

 見えていなければ、攻撃は防げまいと。

 ただ問題は僕からもその光束の中のどのあたりに会長さんがいるのかが見えなかったことで、このせいで1度止めてから打撃に移る必要があったのだ。

 

「そのおかげで私のスキルが間に合った、ということか」

「動けないのがわかっていたらそのまま近接攻撃に移ってましたね」

「それはそれは恐ろしいね……。もしそうなっていたら厳しい戦いを強いられるところだったよ」

 

 笑みを浮かべる口元とは対照的に、会長さんの目は全く笑っていなかった。その燃えるような熱い視線は僕から離れない。そんな僕たちの様子を、ミノル先生はじっと黙って見ている。

 それからしばらくは、そんな感じのやり取りが続いて。

 

「さて、今日はこのあたりでお開きにしようか。体をゆっくり休めるといい」

「ありがとうございました」

「ふふ、君の体が馴染んだ頃にもう一度お手合わせ願いたいものだね」

 

 そう言いながら、会長さんは僕を送り出した。

 

 ◆

 

「ミノル先生、貴女シエロエステヤード君の戦いぶりを見ては率直にどう思った」

「彼が異世界から来てまだ馴染んでいないというのは、真実だと思うわTruth」

 

 シンカリムドルナは、シエロエステヤードが十分離れたのを確認してからMinoruの意見を問うた。

 

「その心は」

「まず前半。彼が私達の知らないルールで過ごしていたかはまだ怪しいけれど、間違いなく彼は私達のルールで過ごした経験がない動きをしていたわMovement」

「それは即ち前者ではないのか?」

 

 ミノルは異文化コミュニケーションに長けている教諭だ。それゆえリムドルナはシエロを彼女が寮長を務める寮に充てたし、この模擬戦の立会を依頼した。

 そのミノルが言うには、シエロの動きはルールで勝利するためでなく、相手を徹底的に叩きのめすためのような動きをしているのだという。

 

「シエロの言っていたシールドやウェヌスという言葉は、確かに彼が文化を異にする人である可能性を示してるSentence。だけど確定したわけじゃないわNot clear」

「そうかい? 私には確定しているように見えるけれど。だいたいぎ装を2段階で出すことがあるか?」

「それは……別の色なのも気になるわねColour。とにかく、冬学期が始まるまでは見ておくわWatch」

「宜しく頼むよ」

 

 リムドルナとミノルはその後も少しの情報を共有し、そして未来の学園に易をもたらさせるための動きを継続するのであった。

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