ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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11レ前:掴んだ影

「おや、どうしたのブライト」

「荷物ロッカーに入れっぱで急行したからな、取りに来ただけさ」

 

 閉店間際の購買部。発注作業を行っているゲッコウフィートのいるバックヤードにスーパーブライトは姿を現した。

 

「あ、そうだ店長。1つ聞きてーことがあるんだけど」

「ん? 発注終わるまで待ってくれる?」

「わーった。暇だし締め作業手伝ってくる」

「悪いね」

 

 フィートは発注用のタブレット端末をいじりPOSや天気予報とにらめっこしながらブライトを見送った。

 

 そして、購買部の店じまいが終わり、みなが退勤した後。

 

「それでブライト。聞きたいことってなんだい?」

「店長のきょーだいのうちの1名の話さ」

「うん? 珍しいね急に」

 

 そう言いながら、フィートはブライトに手にもつ2本の暖かい缶飲料をの片方を手渡した。

 ブライトはそれを受け取ると、1口だけ口に含んで、少ししてからそれを飲み込んだ。

 

「まー、けっこー大事な話になるかもしれないし、ならないかもしれない」

「もったいぶらなくていいから、誰のことなのかを……」

「ゲッコウリヂル号」

 

 ピカリとフィートの目が瞬いて、薄っすらと光が残る。それをブライトは見逃さなかった。

 

「あの子か。でもどうしてだい? だってあの子は……」

 

 もう長らく、どこにいるのかわかってないんだ。その言葉と山根真也から聞いた情報を総合的にロジックしてブライトは理解した。

 

S(シールド)バースト」

「なんだ、知ってるんじゃん」

「いーや? 行方不明ってので頭に浮かんだのがそれだってだけだ」

「……そっか」

 

 カシュッと心地いい音を立てて、フィートはその缶を開けた。そして少しだけ飲むと、おもむろに語りだしたのだった。

 

「もう君がまだ車として走っていて一番かがやいていた頃、僕が成ってからすぐの話だよ。あの子は僕のきょうだいの中で一番早く成った子でね、あの日もクィムガンの対応に出てったんだ」

 

 だがその日、ゲッコウリヂルは戻ってこなかった。そのクィムガンの対応に一緒にあたっていた同じケンタウロス・ユニットのノリモンも、奇跡的に逃げ切った1名によりみな気絶した状態で発見された。

 その時にクィムガンが使ったのが、Sバーストだったのだ。

 それからの懸命な捜索にもかかわらず、リヂルは見つからなかった。半年の後に捜索は打ち切られ、そして彼は行方不明として扱われることになったのだ。

 

「それっきり、あの子を見た者はいない。1名たりともね」

 

 語り終えるとフィートは缶に残った飲み物を一気に喉に流し込んだ。そして荷物に手をかけて立ち上がる。今までブライトが見たことないほどにしんみりとした様子で。

 そんな彼に、ブライトは言葉をかけるのをためらった。そしてその言葉に詰まる様子を見て、彼は話を終わりだと判断した。

 

「この話はこれでおしまい。それじゃ、僕はお先に失礼するよ」

 

 くるりと、ブライトに背を向けて歩き出すフィート。だがそこに、ブライトは意を決してようやく遅すぎる言葉を投げかけた。

 

「……なー。じゃーさ、ゲッコウリヂル号に会ったって報告があったとしたら、どーする?」

「そりゃもちろん聞かせてもらいたいよ。あれば、の話だけど」

「あるんだな、それが」

 

 フィートはピタリと立ち止まって、ゆっくりと振り返った。からかいや冗談では済まされないぞとの意を載せた目線を乗せながら。

 

「どこで君があの子の名前を知ったのかは知らないけれど」

「それも含めて話す! 大事な話かもしれねーんだ」

 

 ブライトの表情もまた、負けないほどに必死だった。それを見てフィートは、話くらいは聞いてみようと彼の下へと戻る。

 

「都立武蔵国分寺公園。あそこで何があったのかは聞ーてるだろ?」

「まぁね、山根君が大怪我をしちゃったから仕方ないとはいえ、シフトも組み直さなきゃだもん」

「山根は大怪我なんかしてねーよ。五体満足で生きてる、近くて遠い場所で」

 

 それとあの子と何の関係が。そう吐き出そうとしたとき、それを遮るかのような勢いでブライトがまくし立てる。

 

「あいつはSバーストに飲まれて超次元に飛ばされた。今までずーっと音信不通で、そして今日よーやくオモテのトランジット・トレイニングで連絡がついて事情を把握できた。そこでこー言ってたんだ、『超次元に飛ばされて最初に気がついたとき、ゲッコウリヂルと名乗るノリモンにより今いる次元へと送られた』ってな」

「それであの子の名を……? にわかには信じがたいね」

「嘘だと思うなら理事長にでも確認したらいーさ、本当は山根は行方不明になってるんだとな。俺はたまたまあの日理事長と一緒に行動してた――これは店長もみてたよな?――から真実を聞かせてもらってんだ」

 

 フィートは頭を抱えて、そして数回頭を振った。彼の頭の中ではリヂルの影を掴めた嬉しさと、そしてそんな都合のいい話があるはずはないという疑いとが渦巻き、どちらの感情を表に出すべきかを判断できないでいた。

 そんなフィートが苦し紛れにできたことは、確認することだけだった。

 

「……その言葉に嘘はないね? 嘘だったら、僕は怒るよ」

「ゲッコウリヂル号どころか山根まで蔑ろにするよーな嘘をつくと思ーか? それにな、山根は前にも一度同じように行方不明騒ぎを起こして、その時も同じノリモンに助けてもらったそーだ。その時の報告書にそのノリモンの容姿だとかが書かれてる。まだ信じてもらえねーのなら、まだサーバにあるはずだからそれを読んでくれ」

 

 そう言って渡した紙片には、サーバ内の報告書のアドレスが記されていた。

 フィートは業務用端末からそちらにアクセスし、その報告書にアクセスして目を通す。すると当該部分を読み進めていく中でわなわなと体が震え始め、そして雪崩れるように座り込んだ。

 

「あの子だ。生きてたんだ、今も生きてるんだ。よかった……」

 

 ブライトは、そんなフィートの体を落ち着くまでずっと支え続けていた。

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