ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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第20D:忍耐の階段

「《イシカリサンダー》! これで、決まれぇっ!」

 

 柱を守る赤いシールドが割れて、その柱の側面の穴がついに顔を出した。

 だがしかし、数十秒ほど経つと新たなるシールドが張られ、その穴は塞がってしまう。

 

「……またか。これで何度目だ」

「落ち着いて。入口が露出している時間は確実に伸びている。だから、《バレットパレット》!」

「協力するよ、《Watet Scoop》」

 

 シンカライジングルナとFlying Foxが追加で攻撃を加えてできたてのシールドを破壊し、また穴が顔を出す。

 だがしかし、それがまた新しいシールドにより塞がれることは誰の目にも明らかだった。

 

「……どうする?」

「どうするも何も、入るしかねぇだろ」

 

 柱に開いている穴は通れないことはないもののかなり小さく、直径はおよそ0.5m程度しかない。そこを通過中にもし追加でシールドが張られてしまったら? 匍匐前進でそれを抜けるのには少し怪しいそれを考えると、穴はあってもむやみに進入する判断を下すことはできなかった。

 とはいえここで引き返すこともまた考えがたいことだった。ようやく見つけられたその道を諦めるという選択肢は、少なくとも今の彼らにはないのだ。

 もう一度張られたシールドを割ったとき、何かを思いついたフォックスがすぐさま動いた。

 

「あの穴の向こうに、我々の望むものがある。それが何なのかを明らかに探り出すというのが、このダンジョンに潜るアタシ達の目的だよ!」

「フォックス支局長、何を!?」

 

 鞭が飛び、その先が穴の中へと入った。そしてフォックスがそれを引っ張ると、それはピンと張られた形になった。

 フォックスの意図はこうだ。この鞭に沿って滑って行けば、その進行方向と垂直な断面積が小さいままで速度を出すことができる。そうすれば小さな穴であっても通過できる、というものだ。

 

「これにぶら下がって行きな。資材運びのロープウェイめいてね」

「分かった、先ず俺が行こう」

 

 そう言って成岩富貴が手と足の先の車輪を滑車のように鞭にのせて、穴の向こうへと滑ってゆく。そして同じようにしてライルと仲木戸俊成がそれに続く。だがしかし、その後彼らに続くものはいなかった。

 

「アンタらも知りたいんじゃなかったのかい」

「だけど支局長……」

「そうかい。カイロスの髪型を知らないとは言わせない。そういう判断をしたんだよ」

 

 フォックスは彼らの方を振り返ることすらせずに足の車輪を鞭に絡ませ、巻き取るように穴へと滑り込んだ。そして彼女が通過し終えるのとほとんど同時に、その穴はシールドで塞がれてしまったのだった。

 

 その柱の中では、成岩らは突入してくるフォックスと、その後ろで穴にシールドが張られるのを見張っていた。少しすると新たに張られたシールドが淡く光って、そこに攻撃が加えられている様子がわかる。にも関わらず、フォックスは後続を待つつもりは全くないようだった。

 

「意気地なしは確実にたどり着けども最速でたどり着くことはない。外の奴らは置いてくよ」

 

 フォックスは、外に残る者はシールドを割ることはできても中に入ることができるようになるのはとうぶん先だろうと見込んでいた。その言葉を証明するかのように、つぎにシールドが割られたときにも誰も入ってくることなく、追加のシールドが張られてしまう。

 それがさらにもう一度だけ繰り返されたのを見て、残りの3名も諦めたようにフォックスに賛同したのだった。

 

「そうだな、先に進もうか。と言っても階段は上にも下にも続いているが……」

 

 仲木戸は一応そう聞いてはいるが、彼の中には確信があった。いや、彼だけではない。4名全員が、直感的に正しい方向を感じ取ったのだ。

 

「全員、判るって顔してるな? 上か下か、一斉に指差して確認しようじゃないか」

 

 全員の指が、同じ方向を指した。

 後続のためにライルが自分たちの進んだ方向を示す書き置きを残してから、4名はその方向へと進み始めた。

 

 無限に続くかのような長い長い螺旋階段は方向感覚を失わせ、もはやそれを何週まわって、そしていくつ分の階層を跨いだのかすらも把握は難しくなるほどだ。途中から騙し絵のように実は昇ってすらおらず、同じ場所にとどまり続けているのではないかと錯覚させられるほどだ。

 疑心暗鬼になった仲木戸は、階段を100段進むたびに印を残しはじめた。だが進んでもその印を見かけることはなく、逆に一旦引き返せば印を発見できる。それはその階段が騙し絵などではなく本当に続いていて、そして彼らがそこを確実に進んでいることを示していた。

 

「どこまで続くんだ、この階段は」

「あの安全階層から地上まで、最速で駆け抜けた記録ですら1週間だよ。柱の中だから横移動がなくただ昇り続けるだけって言ってもね……」

「……そりゃ、そうか」

 

 だが、それもやがて終わりを迎える。

 数回の休憩を経て、丸一日以上。外からの光のない柱の中、狂いに狂った体内時計ではどれだけの時が過ぎたかはもはや誰もわからなくなったころ。

 

 彼らの前に、1枚の扉が姿をあらわした。

 

 すると仲木戸は奇声をあげながら徐ろに荷物を解き、何かを探し始めた。そして荷物の中から1冊の本を取り出すと、高速でページをめくり始めた。

 

「もしかして、心当たりがあるの?」

「なかったら探さん!」

 

 そして仲木戸は、ページをめくるのをやめた。そのページには、扉にあるものとまったく同じ紋章が印されていたのだった。

 

「本当にあったんだ、この『忍耐の紋章』が!」

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