ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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21レ前:ナリタスカイと超次元

 超次元へと消えていったトレイナーの捜索活動は、急展開を迎えていた。二次遭難で行方不明となったと推定された10名が自力で帰還したのだ。

 

「わかってる。使えることが不思議な事くらい。でも、その力を使うしかない。皆を探すには」

 

 その帰還した者のうちの1トレイナーである佐倉空は、ヒアリングにはっきりとした眼と口調でそう答えた。どうしてその領域から出ることができたのか、そしてこの次元から今も外に出ることができるのかを。

 都立武蔵国分寺公園の『無』の喪失と共に、JRNは超次元へのアクセス手段を失った。ゆえに佐倉らの得たこの力だけが頼りとなってしまったのである。

 

 だがしかし、その能力の獲得は喜ばしいことではあるが、それ以上に恐ろしいことでもあった。何せ証言によれば彼らがその力を獲得したのは――。

 

「スタァインザラブによるもの、ね……」

 

 状況を整理するとこうだ。『無』のこちら側でエンゲヰジリングとのやり取りがある間、むこう側ではスタァインザラブとのそれがあった。その結果として、『無』は両側から閉じられて、かわりに佐倉らが超次元へのアクセスの術を得た。

 ヒアリング中のナリタスカイは頭を抱えた。スタァの目的は何で、なぜそのようなことをするのか――それがいまいち掴めなかったからだ。スタァの発した『誤った秩序は、あるべき秩序に作り直す必要がある』との言葉。誤った秩序とは? あるべき秩序とは? そして、その『誤った秩序を生み出してしまった』とは? すべてが分からなかったが、その一方で彼女が一貫した目的意識を持って活動しているということだけは読み取ることができた。

 

「彼女はいったい、何がしたいのかしら」

「必ずしも、敵対を望んではいない。そう言ってた」

「その言葉には嘘がなさそうなのよね……」

 

 だが、スタァの言葉が真実であろうと嘘であろうとJRNの為すべきことは変わらない。そしてそれを成し遂げるためには、スタァによってもたらされた力を使わざるを得ないのである。

 

「スタァインザラブは超次元を使ってる。活動できてる。あそこにいたことからも、間違いない」

「だからと言ってそれは貴女が活動できる理由にはならないわよ?」

「かもしれない。でも、そうするしかない。そうしなきゃいけない」

 

 佐倉の意志は揺るがない。超次元への探訪を既に行っていた彼女にとって、最早超次元は完全なる未知の恐怖の対象ではなくなっているのも、その気持ちを後押ししているのだ。

 

「……貴女ですらそうなら、他の9名もきっとそうなのよね」

「ごめん、ナリタお姉様」

「いいのよ。私達JRNに残る者は、私達の仕事をするわ。だけどこれだけは約束して」

 

 ――必ず、帰ってきてほしい。

 そう伝えて肩に手をおいたナリタの目を見て、佐倉はしっかりと頷いたのだった。

 

 ★

 

「すまんな、エアウェイズ。お前にばっか負担をかけることになって。本当は俺が自分でやれればいいんだがな」

 

 ナリタスカイは彼らの実験スペースに弟のナリタエアウェイズを呼び出すと、まず到着した彼に兄としてそう謝罪した。スカイが彼を呼んだのは、彼がどこでもないゾーンでスタァと謙遜し、そして自由に超次元をわたる術を身につけたからだった。

 その術こそ、スカイら超次元専攻の者たちが普遍的に得られればもっとも嬉しいもの。それを意図しない形とはいえ確立したN.A.W.のその術を、スカイは解析したかったのだ。

 

「なぁに、スカイ兄さんが俺に頼んでくれたおかげでこれから新しい世界……『次元』って呼んでるんだっけ、それを見られるんだ。それが新しい歌のタネになる。その先には、俺の知らない音楽だってあるかもしれない。俺だってそれを聞きたい」

「はは、お前は本当に歌が好きだな」

「そのために必要なデータ取りならいくらでも手伝うさ」

 

 そう言いながら、N.A.W.はスカイの用意したモニタリング装置を装着した。彼が先日突然得た力を用いて超次元と行き来を行うことで、その手段の解析を行い、その技術を一般的なものにする――それがスカイのねらいなのだ。

 そして、そのセンサ類が正しく機能していることを確認すると、N.A.W.は次元の壁を容易く抜けて超次元へと飛び出した。部屋に独り残されたスカイは、モニタリング装置からリアルタイムでデータを得られているのを確認してニヤリと笑みを浮かべた。

 

 そして、10数秒の後。

 送られてくるデータの一部がもう一度だけピコンと動くと、どこからともなく静かにN.A.W.がこの次元へと戻ってくる。

 

「おかえり」

「ただいま、いいデータは取れた?」

「バッチリさ。そっちこそ疲労感とか、だるさとかはないか?」

「まったく」

 

 その言葉を証明するように、N.A.W.はその場でぴょいっと飛び跳ねた。彼にとって超次元への移動はもはや、少しだけ集中力こそ要求されはするものの、障害物競走でハードルを超えるかのごとくコツさえ掴めば難しいものではないのだ。

 

「分かった。念のためあと数回頼んでも?」

「OK」

 

 再びN.A.W.はこの次元の外に出た。そのデータはスカイのパソコンに蓄積され、機械学習により導かれたその特徴ある変位の要因分析は、回数を重ねる毎に精度を増してゆく。それが使い物になる程度まで固まるまで、彼らはデータの採取を継続したのだった。

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