ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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第24D:《門(GATESEPARATER)別》

 この次元に常駐している五元神のうちの1柱のPerseveranceはこの次元にいくつものダンジョンをこの次元の者たちの力を試すために作っていた。その中でもこの『柱』のダンジョンは特別なもので、一度最深部まで潜ってから延々と続く螺旋階段を登らなければこの場所にたどり着けないよう設計してあったのだ。

 もちろん、この者たちが途中の階層でシールドを破り強引に突入していたこともパーシーは把握していた。だが、その強引な突破というのもまたパーシーの好みであった。それがゆえ、ここにたどり着いたということを以て、その身元を明らかにし、そして最終試練を与えることにしたのである。

 

 そして、彼らはその試練を乗り越えた。パーシーがその力を分け与えるに値することを示したのである。

 

「おめでとう。貴方達は耐えきった。その忍耐を称えて、さらなる未知なる道への門を開く力を与えよう」

 

 パーシーは最終試練を突破した4名にそう告げた。

 

「未知なる道への門……夢見た世界。それに、成岩氏の推測していた柱の主。全てが今、俺の目の前にある」

 

 少年のようにはしゃぐ仲木戸俊成。表には出してはいないが、Flying Foxやシンカライジングルナも同じ心情であった。

 だが、1人。成岩富貴だけはまた異ったものを抱えている。

 

 ――これでこの次元を飛び出たとして、俺はJRNに帰れるのか?

 

 短い間とはいえ冒険を共にした仲間が喜ぶのを見て、水を差すようなそんな懸念を口に出すことは成岩にはできなかった。

 

「なあ、成岩氏! その先にあんたの生れ育った場所があるんだろ? 着いたら、案内してくれよ」

「……ああ。たどり着いたならな」

「おう、約束だぞ?」

 

 不安を隠すように表情を繕って、成岩はそう返した。舞い上がっている仲木戸はそれに気づかなかったが、普段から他の者をまとめる立場であるフォックスはその迷いを決して見逃さすことはなかった。

 フォックスは手招きをして成岩を呼び寄せると、小さく耳打ちをした。

 

「成岩君。君は……」

「いい。今話すことじゃねえ。それに彼だってすぐ実感するだろうよ」

 

 そう言ってから成岩は少しだけ冷ややかな視線を、今度はライルと喜びを分かち合う仲木戸に刺した。フォックスは苦笑して彼らを眺めながらも、一転パーシーの方へと注目を向ける。

 

「……話は済んだかい?」

 

 ひょうひょうとその視線を受け流してパーシーはそう問いかける。そして反駁の無いことを確認すると、続けざまに一番近くにいたライルの前にゆく。

 

「ほら、はいっ!」

 

 パンっ! と乾いた音が響いた。パーシーが手を叩いた音だ。

 

 しかし、何も起こらない!

 

「……え? 何、今の」

「いや、じつは、ね? あの忍耐の試練。その中で貴方達の中に僕の力を注いでいたんだよ。そしてそれにも君たちは耐えた。だから君たちはもう、門を開く力を手に入れているんだよね。――ほら、超次元の声に耳を傾けてごらん?」

 

 拍子抜けするような声でそうパーシーは告げた。しかし、その超次元声という言葉の意味は彼らには分からなかった。

 ……後輩に起きた事故から、それのさわりだけではあるが同じユニットメンバーに教えを請うていた成岩を除いて。

 

 成岩はいち早く超次元の声に耳を傾け、そしてそれを理解した。そして、何をすべきかを悟ったのだ。

 ――開け、超次元の門!

 

「《門(GATESEPARATER)別》」

 

 超次元の門は開かれた。その門の中には五色の虹の光が輝いている。それは仲木戸がかつて成岩と会う直前に見た光と同じものだった。

 

「ああ、この光だ。お前が落ちてきたのは。行こう」

 

 その仲木戸の言葉に頷いて、彼らは門を潜ったのだった。遥かなる超次元、どこでもないゾーンへと。

 そして門が閉じ、そこに何もなくなったのを見て、ひとり残ったパーシーはこう呟いたのだった。

 

「……ロペ。君の思い通りには、決してさせないよ。その次元を目指す動機を持つ者をこちらに寄越したのは、僕の力を持たせた者を招く理由になったのは、君だ」

 

 ★

 

 超次元へと飛び出した彼らを待ち受けていたのは、なんの手がかりもない広大などこでもないゾーンだった。進めども進めども、彼らの先に広がるのは変わり続ける美しくも不気味な五色のパターンばかりで、他の構造物が見つかることはない。

 そこを進み続けて数分。丸一日にもわたる螺旋階段を登り続けた彼らですら、進んでいるという実感の持てないこのどこでもないゾーンを進み続けるのには精神的か苦痛が早速にも生じ始めていた。

 

「なぁ、ここが本当にお前の生まれ故郷なのか?」

「んなわけねえだろ。こんな場所で生物が生まれると思うか?」

 

 一旦の休憩を挟む中で、そう言いながら成岩はぐるりと腕を回した。彼らを包むアイテールは空気のように軽い流体でありながら、踏みしめたり座ったりすることができた。そして力を抜けば、まるで水中にいるかのようにふわふわとその場に浮くことだってできるのだ。それは彼らにとって不思議な感覚だった。

 

「それで、どっちにあるんだ?」

「……わからねえよ。そもそも帰れるのかすら。確かなのはこの広がる空間のどこかに俺の帰るべき場所――JRNがあって、そして俺でもお前でもない誰かの地元があるかもしれないってことだけだ」

 

 でも進むしかねえだろ? そう言って、成岩は仲木戸に微笑みかけた。その言葉は、ライルとフォックスの耳にも入っていた。

 

 そして、もうひとりの耳にも。

 彼は3名に注目されている成岩の後ろに音もなく現れた。そして成岩に声をかけたのだった。

 

「今、JRNと言ったか」

 

 オオカリベが彼の鼻先に突きつけられる。成岩がとっさに構えたのだ。

 

「誰だお前」

「これは失礼。俺はゲッコウリヂル、このどこでもないゾーンの水先人さ」

 

 両手を顔の横に挙げて敵意の無いことを示しながら、ゲッコウリヂルは名乗ったのだった。

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