府中から先は百草園までが小さなカーブの続くコース。各選手のテクニックが試されます。先頭ヤマダは問題なくスムーズに1つずつパスしている、見事な加減速です。
続くデンエントおぉっとよろけたが大丈夫か? 立て直してカーブをクリア、デンエントシスズカケ分倍河原、レーサルビアはやや速度を落としながらも通過している。
第一集団、残りも次々と府中に入っていきますが皆下り線を走行しています。警戒しているのでしょう。そう、曲線と言えばこの選手、注目のポーラーエクリプスだ、いま右側上り線から速度を全く落とさずに府中のコーナーを駆け抜けています! 外側から体を大きく傾けましてポーラーエクリプス、府中2号曲線を抜けて分倍河原、勢いは衰えない! 内側に回ってさらにナンコウスミノエを追い抜きながら中河原、現在6番手ポーラーエクリプス依然速度差は大きなまま、えー多摩川の橋梁に差し掛かろうとしています。その後ろナンコウスミノエから5、6チェーンほど離れてアサヒスーパーレラは大きく失速しながらも虎視眈々と第一集団を狙っています。
その後ろキューカンバああぁああっ! キューカンバーヒカリは分倍河原で体制を崩しまして線路を逸脱して着地! これが魔の府中、これが府中の恐ろしさ! そのさらに後ろここから第二集団、並びながらオーエステン、シーズンアロー。横一線でキューカンバーヒカリの横を駆け抜けますがやや落ち着かない様子です。アカイソニック、アルペンロマンスと続きましてトウヨコハクラクが通過。ラピッドオジカここにいた、ここまでが第二集団です。後方集団はヒタチネモフィラに並びナラビスタ、マーヴェリックに最後尾ズームサンライン。えーここでキューカンバーヒカリ復帰を断念しリタイアの知らせが届きました。現在18名の選手が高尾山口を目指しています。
冬晴れの多摩丘陵を進みます、先頭は依然として地の利が功を奏してヤマダが抜けています。その後ろ抜きつ抜かれつレーサルビアとデンエントシスズカケが一進一退の攻防を繰り広げる。その後ろではウイングヘイワジマが鋭い加減速で高幡不動のコーナーからの立ち上がり、しかしもうここまで来ていた、ブレーキレスで駆け抜けたポーラーエクリプスが並びかけて今南平で抜き去りました。そこから十数チェーン離れてコマゴメホープそしてそのさらに後ろアサヒスーパーレラが上り線から再びペースを上げていくか。ここまで第一集団7名、先頭との差はおよそ……1マイル弱と いったところでしょうか。その後ろ第二集団は大きく離れています。先頭ヤマダが北野まで来たので、優勝争いはこの7名の争いとなりそうです。
速度を落としながら高尾線に入りましてラストスパートだ、2番手争いはレーサルビア、デンエントシスズカケ、そして速度を落とさぬポーラーエクリプスはどこまで行けるでしょうか。ここが山だ、先頭ヤマダは山田を抜けています。そして2番手争いは中河原から続く高低差500フィートの坂の中一切勢いを殺さぬポーラーエクリプスが既にデンエントシスズカケを抜いてレーサルビアに並びかけています。先頭ヤマダとの差はおよそ10チェーンといったところでしょうか。しかしまだここから高尾まで2マイルあります!
ポーラーエクリプスが少しずつ前に出ている、ヤマダを捉えているのかめじろ台、そしてヤマダも粘って逃げている! ヤマダが逃げる、ポーラーエクリプスが追いかける! レーサルビアは速度が上がらない! そして狭間は同じ駅構内に捉えているそしてこの先には試練のカーブ、S字カーブ!
ヤマダ制動逃げ切れるか、ポーラーエクリプス速度をまだ落とさない! 差は5チェーン、4チェーン高尾を通過。
ラストワンマイルの単線区間に先に入線したのはヤマダ! ヤマダが先に入線! しかしその背中にはポーラーエクリプスまだ諦めていない様子で勢いが衰えない差は2チェーン! ゴールに向けたチキンレースの幕開けだが! トンネルを抜けて左カーブ、優雅に駆けるヤマダは車輪から火花だがポーラーエクリプスが突っ込んで突っ込んでああっああぁ!
ポーラーエクリプス線路を逸脱、飛んでいったぁ!
そのままヤマダの横を飛んでゆく痛恨の脱せ……いや、違う、脱線ではない! 続く右カーブで復帰したぁ! 先頭ポーラーエクリプス空中を描くライン! 常識破りの追い抜き芸! ポーラーエクリプス火花を散らして高尾山口に入線したぁ!
だがまだ終わっていない、減速は間に合うのか! ブレーキシューから火花、止まれるのか、止まれないのか! 車止めは目の前だ、が!
止まったあぁーっ! 1着はポーラーエクリプス! 2着はヤマダも停止し確定! そして続いてレーサルビアもただいま入線しています。
足元不慣れな
★
高尾山口駅の車止めの前で、ポラリスは複雑な顔で自らの足を見つめていた。
(勝った。勝てちゃった。ポラリスの力で。でも……)
ポラリスがこのレースに望むにあたって引いたランカーブは、とても拙いものだった。それを示す材料がそこにはあったのだ。
それはフューエルの残量。東京や有馬温泉に着いたときにはほとんど残っていなかったそれが、今は使い切ることができずに余らせている。それをきちんと使えていれば、最後にあんな危険な賭けに出る必要もなかったのだ。
やっぱり、ブライトには叶わないや。ポラリスは漠然とそう思った。
ポラリスは顔を上げた。しかし歓声が彼女を包んでいた。彼女の中で納得は行かずとも、それは彼女の中だけの話だった。苦し紛れの跳躍ですら、周囲からはヒロイックなものに映っていた。
困惑しながらもそれに応えるように右手を挙げると、その歓声はまたわぁっと大きくなった。
そしてポラリスがホームに上がると、そこにはポラリスの予想だにしていなかった人影があったのだった。