ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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1レ後:キミならきっと上手くやっていけるよ

「やっぱりな。やればできるじゃねぇか」

「……たまたまですよ」

「謙遜するなって。……ほら、リーダー達のとこ行ってきな」

 

 俺はラッチ開けてくるから。そう言ってラチ外へと向かっていった成岩さんを横目に、僕は他のユニットメンバーのいるラッチのコア部へと走り出した。

 

 ★

 

「お疲れ、山根君。いい援護射撃だったぞ」

 

 僕が辿り着こうとするなり、早乙女さんは真っ先にそう声をかけてくれた。

 

「たまたま、うまくいっただけです。ああするようにってのも成岩さんの案でしたし」

「ほう? たまたま、か。どうなんだい?」

 

 目線を追ってみれば、その先にいるのはクシーさんだ。

 

「直近の山根クンの成績だと、2σ、つまり95%で1°の誤差だね」

「十分だな。私もたまに遠距離攻撃をする必要があって弓を扱うことがあるが、そんなに精度は出ない」

「同じ飛び道具だからって質量のないビームと比較しないでください……」

 

 風で揺らいだり重力で落ちたりしない分、弓矢や砲撃と比較すれば精度は高くなるのは当たり前だ。

 しかも、だ。1°もずれてしまうというのは、先程の条件では30m程離れていたわけだからおよそ0.5mのずれだ。クシーさんと逆側にこれだけずれれば、シールドにかすりすらしなかった訳で、その確率が95%もあるということは、やはりたまたまだったのではないかという疑惑は深まるばかりだと思う。

 

「本当にたまたまなんだって……」

「そこまで言うなら、今回はそういうことにしとこっか」

 

 そう割り入って助け舟を出してくれた北澤さんに、ジト目を向けているのは佐倉さんだ。

 

「誤解を放置するのは、良くないかと思われますが」

「誤解? いや、アタシが思うにこれはただのちょっとした認識のずれでしょ? そういうのは、場数を踏むのが一番だと思うの」

「……まあ、北澤君の考えも一理あるな」

 

 その早乙女さんの言葉に、佐倉さんの目つきは信じられないとでも言いたげなものに変わった。

 早乙女さんもその変化に気がついたのか、フォローを入れようとして、続けて口を開く。

 

「君の言いたいこともだいたいわかるが、私にも考えがある。とにかく、これからどうかよろしく頼むよ、山根君」

 

 差し出されたその手を握るのと同時に、ラッチが開いて頭上には青空が広がって、そして足元の線路が消えた。

 それを確認してから、僕達はトレイニングを解除した。

 

「山根クン」

 

 元の姿に戻った僕に、クシーさんが語りかけてくる。

 

「ユニットに入った今、正式にキミはボクの下での研修は終わり。これから先、いくつものノリモンやトレイナーとの出会いと、そして別れがキミに訪れることになると思うけど、そのどれもがキミにとっての糧となることを願っているよ」

 

 彼女はそうほほえみながら言う。

 ……でも。

 

「正直な話、ユニットの足を引っ張りやしないか心配なんですけどね」

「キミならきっと上手くやっていけるよ」

「いったいどんな根拠が……」

「根拠? そんなのボクがノリモンとしてトレイナーを認めるのが数年ぶりだ、ってのじゃダメかな?」

 

 その理由はずるい。客観的な事実でもあるし、なんなら僕から否定する材料を持ちようがないのだから。

 それに、クシーさんはかなり名がしれているノリモンであり、そもそも彼女とトレイニングをしたいと望むトレイナーも数多にいるのだ。そして彼女がそれを片っ端から断り続けているというのが、困ったことに僕の例の特別性を高めてしまっている。

 

「……逆にどうして、僕を、それもキールとして認めてくれたんですか」

「前にも言ったと思うけど、JRNにとってキミの力が確実に必要になる、そんな気がしたから」

「その理由がわからないんです」

 

 そう問うと、クシーさんの顔に少し影が差す。そして、

 

「ごめんね、今でもまだ言えないかな。でも、ボクから言わなくても、そのうちわかる時がきっと来る」

 

 と、いつも通りの答えになっていない回答が返ってくるのだった。

 

「わかりました。でも、いつか必ずその答えを見つけ出して、答え合わせをさせますから」

「ん、期待してる」

 

 そう言って僕は後ろを振り返ると、ちょうどラッチを開けてきた成岩さんが戻ってきて、ほかの3人と合流したところのようだった。

 その方へと歩きだそうとした瞬間、クシーさんから引き止めるかのように声がかかる。

 

「――あ、そうそう。これから先もノリモンとトレイナーとしての関係が切れるわけじゃあない。予め連絡さえくれれば、いつでもラボに来ていいからね」

 

 当然、トレイニングをしているうちに起きたことの知見や、逆にクシーさん側での活動でのそれは、共有しておいたほうがお互いにためになる。そういった面で、これからも定期的にクシーさんのラボを訪れることにはなるだろう。

 でも、その頻度はこれまでと比べると格段に低くなると思う。だって……。

 

「おーい、山根! 話は終わったかー?」

 

 成岩さんが僕を呼ぶ声が聞こえる。

 これからの僕の居場所は、クシーさんの下で研修をする見習いトレイナーではなく、このウルサ・ユニットなのだから。




【キャラクター紹介:#1】
山根(やまね) 真也(まや)
誕生日:10月14日
出身地:山口県
所 属:ロケット/JRNウルサ
キール:クシー

 JRNに所属して1年ほどが経ち、新しくウルサ・ユニットに配属された新人トレイナー。
 趣味はウインドウショッピング。
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