ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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2便前:仮説と陰謀のモザイク

 根源神Cycloped(サイクロペッド)。そしてリヂルさん。

 僕をこの次元に連れてきたのは、間違いなく彼女達だ。

 

 だが、どうやって?

 どこでもない領域(ゾーン)に漂う僕をこの次元に届けた、というのならまだわかる。でもいったいどうして、僕が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ?

 いや、こう考えたほうがいいかも知れない。あのクィムガンがS(シールド)バーストを起こしたのは、C()y()c()l()o()p()e()d()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。

 

 ならば、どうして? Cyclopedは何のために僕をわざわざこの次元に? ポラリスから向こうの話を聞く限りじゃ、何人かはちゃんとリヂルさんに元の次元に戻してもらっていたはずなんだ。なのに、どうして僕はこの次元にいる?

 

 そこに、理由があるとするのなら。

 

「この次元での在り方を見せることで、他の誰でもない、僕に何かを伝えようとしているのでは?」

 

 こっちにおけるノリモンはあくまでも少しだけ特別な力を持った人間の一種に過ぎない。向こうではノリモンは生物ですらないのだから、そこはとても大きな違いになる。

 でもその点を除いたら、驚くほどに僕の元いた次元とこの次元とは差異が少ない。この次元でも日本の鉄道は、フランスでサン=シモン主義を学んだ渋沢栄一が、その空想的社会主義を日本型資本主義に昇華させることにより発達した、という点まで同じなのだ。だから仮にCyclopedの意思がはたらいているとするならば、この大きな違いを()()感じ取らせたいのだろう。

 ……なぜ僕なのかは、わからないけれども。

 

 だけど、仮にCyclopedが僕をこの次元に送り込んだのだとしたら、またどこでもない領域に戻ったところで、リヂルさんはこの次元に僕を送り返すに違いない。つまり僕はCyclopedに何らかを課されているのだろう。

 それは一体何だ? 帰る術を探す傍らで、それもまた探さなきゃいけない。

 

「……それが、君の仮説かい?」

 

 それらをすべて聞き終えてから、シャイ先生は普段通りに気だるげにそう聞いてきた。そしてゆっくりと立ち上がって、そして黒板の前に立った。

 

「だったら、その仮説について論じるよりも前に、こっちからも話をしておかなくてはいけないね。信じてもらえないかもしれないが、あの倒れた日の朝、私は――Cyclopedに会っていた」

「……え?」

 

 いきなりこの人は何を言っているんだ? Cyclopedに?

 

「それが本物の神であるかどうかはわからない。だが、ただならぬ雰囲気を纏っていたのは事実だ」

「だからあの時挙動がおかしかったんですか?」

「もうちょっと手加減のある言葉運びを心がけてほしいね」

 

 少しだけ不機嫌そうにシャイ先生は笑った。笑ってから、一転して真面目な顔になった。

 

「ここで重要な話をもう1つしておかなくてはならない」

「なんです?」

「Cyclopedは言っていた。あの日から45日を過ぎるまで、君をこの次元の外に出すことは推奨しない、と。これを聞いて君はどう思う?」

 

 推奨しない、か。なるほどね。

 向こうが推奨しないということは、それまでに帰ろうとすると不具合が発生するということ。もちろん、Cyclopedにとって。

 そもそも、仮にこの次元に僕を閉じ込めておく必要があるというならば、Cyclopedは直に僕にそれを伝えるべきだ。だが実際は一度たりとも現れてすらいない。それどころかわざわざシャイ先生に伝言を渡している。

 明らかに怪しい。どう考えても、おかしい。

 

「必ず、帰らなきゃいけない。そう思いました」

「奇遇だね、私も同じだよ。正直に言えば私はあの神と会うまでは君をまだ帰したくないと思っていた。そうすれば二度と超次元にふれることはできなくなってしまう――それが怖かったからね。だが今は違う。奴の言うタイムリミットよりも前に君を帰さねばならない」

 

 そう言うシャイ先生の目は、今まで見た中でいちばん光り輝いていた。

 

「これを踏まえた上で、君の仮説はどうだい」

「全く意味がないんじゃないかと。むしろ元の次元に僕がいると邪魔だから、わざと外に出した――ただそれだけ」

「そうだろう。君の元いたところで何が起きているのかは知らないけれどね、恐らくは碌でもないことでも起きてるんじゃないの」

 

 あぁ、そうだ。あのルースの落し子を目覚めさせた連中。間違いなく何か別の目的のために動いている。恐らくは、そこにCyclopedもかかわっていると考えたほうがいい。

 なぜ僕がいると都合が悪いのかはわからない。わからないけれども、間違いなく碌でもないことだ。

 そうだとするならば、僕はできる限り早く帰らなきゃいけない。そうでなくても帰還を急ぐことは間違いないけれど、余計にそうなったと言える。

 

「……シャイ先生」

「理論は既に完成している。微弱ながらに超次元の穴を開けることにも成功している。ほかに必要なものは、より出力の高いものだけさ」

「いや、違います。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 リヂルさんはCyclopedの配下だ。見つかれば、僕を元の次元に戻すのではなく、良くてこの次元、悪ければ他の次元に送り込む可能性だって高いだろう。

 もちろん、その次元からまた超次元へ飛び出せばいいのだけれど、そうなると今の理論のような大出力を必要とするものは都合が悪い。

 それを伝えると、シャイ先生はそれもそうだなと頭を抱えた。

 

「時間がないのは分かってます。でも、もう一度考え直さなければいけない」

「確かにそうだねぇ……。だけど、既に成功している手段の改良ならば、何も道筋が見えていなかった今よりもよっぽど道筋は見えているといえる。必ず、君を帰すとここで再度約束しよう」

 

 それからもう一度、僕とシャイ先生は改めてお互いの手を握った。

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