ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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13レ前:あるにはあるけど、かなりレア

「昨日はありがとうございました」

 

 朝、割と早めの時間にユニット部室に行くと、案の定佐倉さんだけが出てきていた。この人いったい何時に部室に出てきてるんだろう……?

 

「後輩が困っていたら助ける。当たり前の事」

「当たり前、ですか……」

 

 かっこいいな。僕は佐倉さんにそんな印象を抱いた。

 それをサラッとできてこう言える人ってなかなかいないような気がしたからだ。

 

「用、それだけじゃないね? こんな早く来たのにも理由がある。違う?」

「そこまでお見通しなんですね」

「確信は無かった。なんとなく、そんな気がしただけ」

 

 まぁ、そりゃこんな早く来てれば何かあると思うのは普通か。逆に佐倉さんもなんでこんな朝早くから部室にいるのか謎だけど……。

 

「昨日の今日なんでなんとなく察されてると思いますが」

「ポラリス」

「……というより、ノリモン全体ですかね。あんなに執着される理由が分からないんですよ」

 

 ベーテクさんも大概怪しい気はするのだけど、それでも接触の頻度や濃さは通常の範囲に収まると思う。それと比べても、ポラリスのそれは異常だ。

 

「別に、人間同士でもある」

 

 いやまぁ俗にメンヘラとかヤンデレに分類されるストーカー行為をしてくる人間だって確かにいない訳ではないんだけど、そういうことを聞きたいんじゃない。

 

「ノリモン特有の何かが、そういう傾向に振らせるってことは……?」

「たぶんない。あるにはあるけど、かなりレア」

 

 レアケースねぇ。そもそもポラリスの存在自体がレアケースの塊だということは聞いているから、一応聞いておいたほうが良さそうだ。

 

「何か手がかりが?」

「あの子、色遣い的に旅客車でしょ? 機関車とか、特に貨物車とか、そういったタイプのノリモンの話」

 

 じゃあ関係ないのか。

 でもなんか引っかかるんだよなぁ。

 

「一応話だけ聞かせてもらえます?」

「時間あるしね。簡単に言うと他者に飢えてるだけ」

「飢えてる、って……」

「別にこれは食物連鎖とか、そういう事じゃないから安心して」

「流石にそれは心配してませんって」

 

 仮にそうだったとしたら誰もJRNになんて来ないよ。よっぽどの変態なら別かもしれないけど。

 

「前にノリモンは模倣子を拡散したがるって話はしたね?」

「それが本能、なんですよね」

「うん。ノリモノイドに成る前でも。旅客車の場合はお客様に薄く薄く、だけど不特定多数に直接」

「でも、貨物車はそれができない、と」

「そういうこと。だから多くはそもそも成れない。自己を確立できないから」

 

 あぁ、だからほとんど貨物車のノリモンを見ないのか。同じ貨物を運ぶ乗り物でも、貨物船だと比較的たくさんいるらしいけど、彼女らは複数の船員さんが四六時中ほぼつきっきりで濃厚に接触してるもんなぁ。そこで船員さんのメンタルモデルに模倣子を刻み込むなんてのは簡単だ。それと比べたら貨車は……うーん、厳しいというかもう無理ゲーに近いんじゃないかなぁ。

 

「それに、運良く成っても、メンタルに大きく差が出る」

「差が出ると……?」

「自分が模倣子を特に強く感染させられる対象に執着しがちになる。十分させられれば落ち着く」

「それがつきまといに」

「そういうこと」

 

 わかるようなわからないような。

 

「ちなみにそれってトレイナー側から対策取れるものなんてすかね」

「そのノリモンとトレイニングするのが手っ取り早い。通称人柱」

「通称が直球すぎる……」

 

 理屈は頭ではわかるけど。トレイニングって、キールだろうがトランジットだろうがそもそもが相手のもろもろを借りて自分に取り込むものだし。そして、彼女の話しぶりからすれば、ノリモン側は自分がトレイニングできるとわかってつきまとっているようだから、お望み通りトレイニングしてしまえば落ち着くってことだろうか。

 それでも、トレイナー側からしてみれば、なんで付きまとってくるノリモンとトレイニングしなきゃいけないんだって話だけど。

 

「心情的に無理があるのでは?」

「でも、そのまま放置すると大変な事になる」

「大変な事って」

「堕ちる。クィムガンに」

 

 えっ。

 クィムガンってそうやって生まれるの?

 

 詳しく聞いてみれば、クィムガンが発生するメカニズムの1つに、伝播させることなくノリモンの内部に溜まってしまった模倣子の暴走というものがあるらしい。自分の存在を最も効率よく他者に刻みつけることができるのが恐怖という感情だからだと、サイクロでは考えられているのだとか。

 

「そのための『ガス抜き』も、トレイナーの立派な仕事の1つ」

「うへぇ……」

「クィムガンが生まれる前に対策できるなら、それがベスト」

「そう言われるとめちゃくちゃ断りにくいじゃないですか」

「無理しなくてもいい。そのノリモンがクィムガンに堕ちた時に、自力で、他人に迷惑かけずに見納めにできる覚悟があるのなら」

 

 そうか、そういう話になっちゃうのか。なかなか厳しい世界だ。

 もし今後そういう事があったら。僕は仕事だと割り切ってしまえるだろうか。それだけ頑強な心を、僕は持てるだろうか。

 

「ま、脅しちゃったけど、さっきも言った通りレアケース。リーダーだって経験したことはない」

「なら大丈夫、なのかなぁ」

 

 念の為ポラリスにも確認しておこうかな。仮にそうだった場合に放置しておくデメリットが大きすぎる。今の所まだごめんなさいしてくれれば許せるレベルだし、悪化する前にこっちからアプローチかけて止まってくれるならそれでいい。それに僕だってトレイニングできるノリモンを探してはいる立場だし、仮にそうだったとしたら一石二鳥だ。

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