ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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13レ後:今でもいつか会えると信じてますから

 僕が生まれ育ったのは、山口県の日本海側、山陰線と国道の通る小さな町だった。

 小学生の頃の僕の遊びといえば、近所の裏山の冒険だった。当時から片親で小学校で孤立していた僕は、父さんの帰りも遅く娯楽もほとんどなかったので、よく山の中へと入っていた。

 

 そんなある日。山の中のお気に入りのスポット、海を見渡せる高台で、僕はその運命的な出会いをした。

 最初見た時は、熊だと思った。真っ黒だったからだ。当時は地元がそもそもツキノワグマの生息地ですらないから熊なんているはずもない、なんてことは知らなかったし。

 でも、腰を抜かして後ろに倒れてしまったとき。彼女が気づいて振り返って、それでようやくそこにいるのが熊ではないことを理解した。

 

「アナタ、立てる?」

 

 真っ黒な衣に身を包み、黒に近い鼠色の髪を伸ばしたその者は、優しげに微笑みながら僕の方へと手を伸ばした。

 

「大丈夫。ここに、人がいることなんてなかったから、びっくりしちゃっただけ」

「その言葉、そっくりそのままアナタにも返していいかな? どうしてアナタみたいな小さな子が、こんな山の中に一人でいるんだい?」

「……僕、友達いないから。それに、ここから見る眺めが大好きで」

「ここが一番眺めがいいのかい?」

「うん、そうだよ」

「そうかい、いいことを聞けたよ。ボクはこっちの方にくる事があまりなくてね」

 

 それから数週間に一度ほど、僕達はその高台で話をするようになった。学校でもほとんど話し相手と言える人がいなくて図書室にこもっていた僕にとっては、だいぶ久しぶりにできた話し相手だった。とはいっても、僕から話せることは殆どなかったから、話を聞いて反応を返すだけだったけれど。

 

 ★

 

「おいちょっと待てや」

 

 成岩さんは大声を出して僕の昔話を遮った。

 

「急になんです? まだ話は途中どころか始まってすらないようなところなんですけど」

「明らかに不審者だろソイツ」

「警戒心、なさ過ぎ」

「そうは言われても当時はまだ子供でしたし……」

 

 それにそのノリモン、コロマさんに何か変なことをされたという訳でもないし、むしろこの出会いがあったから今の僕がいる訳で、どちらかといえば感謝している方だ。

 まああれだ、結果良ければ全て良しって奴だ。

 

「それでいいんですの……?」

「それでいいんですよ」

 

 そもそも人に話せるような昔話なんてのは、基本的に上振れの連続だ。そうでないアクシデントだとかはあっても、基本的にその後の上振れのスパイスでしかない。

 そうじゃない昔話なんてのは、教訓にでもならない限りわざわざ人に話す意味もない。聞く人を不快にさせるだけだからね。

 さて、話を戻そうか。

 

「じゃあ、話を昔話に戻しますね」

 

 ★

 

 その時は、まだ町の外の事を全くと言っていいほど知らなかった僕にとって、目的のために日本だけでなく時には世界をも飛び回っていたというその外からやってきた来訪者の話は、ものすごく新鮮に感じられたんだ。

 

 そしてしばらく経った頃。

 

「ねぇ。アナタのこと、真也って呼んでもいいかな? ボクのとっておきの秘密を教えてあげるから」

 

 そう前置きされて知ったのが、僕の初めてのノリモンとの出会いだった。

 

「お姉さん、人間じゃないの?」

「そうさ、ボクはノリモン。だから、こんなこともできる」

 

 そう言うと彼女の右手が光り、袖から鎖が飛び出した。そしてそれを近くの木に巻き付けて浮き上がる。そして振り子のように一度飛び出すと、戻りがてら僕を抱き抱えた。

 

「よっ、と」

「えっ?」

「危ないから暴れないでくれよ? 下手したら死んじゃうから」

 

 そして僕達は、高台から国道を飛び越えて日本海へと飛び出した。

 思わず目を瞑る。だけれど、僕が濡れることはなく、目を開けたら僕達は海の上にぷかぷかと浮かんでいた。

 

「生きてる」

「そりゃそうだろう、ボクがいるんだから」

 

 波を切る音と反対側から、そんな声が聞こえる。目を開ければ、目前には道標のないブルーの世界が広がっていた。

 

「きれい……」

「気に入ったかい? 海は」

「うん」

「そりゃよかった」

 

 それから僕達は小一時間ほどクルーズを楽しんだ後、町の数少ない砂浜に戻ってきた。

 真っ赤な夕日が、僕達を照らしている。僕はその日、それまで知らなかったノリモンという存在に完全に虜にされてしまった。その時に僕はトレイナーという仕事を知って、白紙だった将来の夢のキャンバスフレームに色が入った。

 その日以降、僕は会う度にノリモンについて問うようになった。でも、そんな日々も長くは続かなかった。

 

「ごめんね、真也。もう少ししたら、ボクはここには来れなくなってしまうかもしれない。全てのノリモンを幸せにするためには、同じ場所に留まり続けてもいられないからね」

「……そっか」

「案外冷静だね?」

「初めて会ったときも、いきなりだったし」

「それもそうか」

 

 そんな話をした後、たしか3度目だったと思う。旅立たなければいけないと切り出されたのは。

 

「真也。一旦はお別れだ。でも、これだけは約束しよう。アナタがノリモンを好きでいる限り、ボク達はまた会える。ボクはまた、いつかは君の前に現れると」

「うん、約束する。僕は大きくなったら日本一のトレイナーになる。そうしたらまた会えるでしょ?」

「だいぶ大きく出たね。じゃあ、キミにはボクの本当の名前を教えてあげよう。ボクはコロマ、総てのノリモンの幸せを願ってやまないノリモンさ」

 

 それが、僕とコロマさんがした約束だ。

 

 ★

 

「……意外」

「ロマンチシストな部分もあるのですのね」

「僕を何だと思ってたんですか」

「石橋を叩いて渡る慎重なデータ主義者」

 

 今までも割とユニットでも危ない橋を渡るようなことはしてたと思うんだけど、どうしてそういう評価になるのさ……。

 

「会えるといいな。その恐らく野良の、船舶系のノリモンによ」

「僕は、今でもいつか会えると信じてますから」

 

 そのためにも。

 ユニットの活動も、しっかりやっていかないとな。僕はそう再確認した。




【キャラクター紹介:#9】
コロマ
・出身地:長崎県
・誕生日:3月30日
・所 属:???
 幼き頃の山根と出会い、彼にトレイナーを目指させるきっかけとなったノリモン。
 全てのノリモンの幸福を願い、JRNとは別で行動しているらしい。
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