ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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回16レ:他にもまだ私に話していないことがあるようだね?

「で、全身筋肉痛になってる訳か」

「ごめんなさい……」

「いや、別に怒っている訳ではないが……」

 

 ベーテクさんのラボでの一番長い日を終えた翌日。僕は全身が筋肉痛になっていた。

 冷静に考えたら、半分は僕の責任だ。早朝から重たい荷物持ってラボに行って組み立てて、ポラリスが抱きついている状態で無茶な体勢でそれを解体した後、軽く15kmくらい走って、それから会議挟んで今度は初めてやる走り方でまた走って、そして荷物を持って帰る。こんなことしてたらそりゃどこか筋肉痛になってもおかしくはなかったな……。

 

「まぁ、痛いですが我慢できるレベルなので普段通りで大丈夫です」

「くれぐれも無茶はするんじゃないぞ?」

「明日は一応活動自体は休みなので」

 

 サイクロ行って佐倉さんのとこのラボに伺う予定入ってるけど、それこそ肉体の負荷という意味ではたぶん軽いだろう。……軽いよね?

 佐倉さんの方に目を向ければ露骨に目線を逸らされた。……あした大丈夫かなぁ。

 そう考えていると、左肩にポンと早乙女さんの手が置かれた。

 

「……山根君、他にもまだ私に話していないことがあるようだね?」

 

 あれ、もしかしてバレてる?

 ポラリスのことはだいぶぼかして説明したつもりだったんだけどなぁ。

 

「何がですか」

「長年の勘でわかっているのだよ。……と言いたいところだけど、単にイノベイテック号から連絡をもらっているだけだ」

 

 おい。

 ベーテクさん? 何してくれてるんですか?

 どうせトレイニングできるようになるまで時間かかるんだから、北澤さんと一緒に例の講習受けるときまでは黙っておこうかと思ってたのに。

 

「わざわざ連絡するなんて、また変なところで律儀な……」

「それは私もそう思う。だが、ノーヴルの者としては珍しく事前にわかるだけ有り難い」

 

 ……これやっぱ怒ってるよね?

 

「怒っている訳ではないのだが」

「怒ってるじゃないですか」

「いや、むしろ逆だ。よくやった。ノリモンのかの禁断症状は早急に対処しないと大変なことになる」

 

 早乙女さん曰く、彼自身にはその経験は無いけれど、1代前のウルサのリーダーの人が昔にそうなって放置していたら大変なことになったことがあったらしい。

 

「もしかして、クィムガンにまで……?」

「そこまでは行っていない。そもそも当時は放置するとクィムガンになってしまうこと自体わかっていなかったが、今考えれば一歩手前まで行ってギリギリ間に合ったといったところだったな。で、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 ……あ。

 早乙女さんは声を若干硬くしてそう発した。これやっぱり怒ってるよなぁ。

 そして佐倉さんは……あれ、いつの間にか退室してるし。逃げたなこれ。

 

「……佐倉さんです」

「ならいいんだ。君はけっこう怪しい本も含めて情報収集をしているきらいがあるから、ハゲタカジャーナルだとかのものを引きやしていないかと少し心配にな」

「そっちですか」

 

 一応自分でも巻末の参考文献欄とか、同人誌の場合は著者のSNSアカウントとかを見て信頼できる情報かどうか精査したり、あるいは完全に事実として飲み込む前に検証したりしているつもりではあるんだけど、そう映ってしまうのも仕方がないか……。

 まぁうん、これからも引き続きそこのところは気をつけよう。

 

「……来週の土曜日だ。直近で施設の予約が取れていない日がそこだから予定を早めてそこで伝える」

「えっ? 来月から前倒しして資料の準備とか間に合うんですか?」

「間に合うかどうかではない、間に合わせるんだ。それに来週末はもう来月に入っているから、前倒しはしていない」

 

 カレンダーを確認する。いつの間にか今月はもう折り返し地点をとうに通り過ぎていたらしい。

 

「なんかごめんなさい……」

「謝る必要はない。そもそも遅かれ早かれ君達に伝えなくてはならない事ではあったことだ。それにだ、数年前のものではあるが成岩君や佐倉君に渡した資料だって残っているのだよ、そこまで負担ではない」

 

 そう言うと早乙女さんはパソコンに向かい、何かを操作した。

 ピコン。チャットで彼からpdfファイルが送られてきた。この流れだし、たぶんこれがさっき言っていた前に渡した資料なのだろう。

 

「もう接触しているのだからその資料は先に渡しておこう。君は要領がいいから理解にはそこまで時間を要さないかと思うが」

 

 モニター越しにそう伝えられる。

 ……流石にそれは期待しすぎじゃないかなぁ。

 

「期待しすぎですよ」

「既に単独対応まで済ませておいてできないとは言わせんぞ」

「あれはたまたまシールドに色がついていないのに遭遇したから初期対応として対処しただけですって……」

 

 流石に警報鳴ってから一人でラッチまでたどり着いたとして、そこに飛び込む勇気はまだない。シールドに色ついてたら詰む。そしてそれを外から確認できる手段は現状ない。

 そうなったら、他の近くのトレイナーが来るのをラチ外で待って、全派閥揃うまで中には入らないだろう。放っておいてもラッチは壊れないから、安全を確保してから入ったほうがいい。

 

「確かに、君はまだ未熟だということが解った。私が君の立場ならば、それでも直ぐに入ってから、黄色だけ全部割って撤退する」

「黄色を後ろに回されませんかそれ?」

「ふむ? 君の速度なら巻き込む心配さえ無ければ余裕を持って追いつけるのではないのかね?」

 

 あー、うん。確かにそう、そうなんだけどね。どうもシールドの色の移り変わりって立体角速度というか、そういうのに上限があるっぽいからできなくもない。

 のだけど、僕はまだ進行方向を見ないで撃ってる方向ばかり見続けて走ることにまだ不安がある。そりゃラチ内なんて障害物だとかは当のクィムガンが置かない限り存在しないとは頭では解っているんだけど……。

 

「なるほどな。ならば君の当面の練習メニューは歩行射撃からブラインドランに変更しようか」

「ブラインドラン……」

「特殊な眼鏡をかけて視野を窄めて走るものだ。最終的には視界0で走ってもらうことになる」

 

 うへぇ。頑張らないとな……。

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