ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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16レ前:ノリモンの根源に関する研究をしておる

 ここはJRN3号館。埼玉県のマスコットキャラクターのような淡紫色の外壁を持つ建物だ。

 

「君が山根というトレイナーかい?」

 

 そう言って僕を出迎えてくれたのは、赤い髪に、紫色の地下鉄の新型車両のような濃淡2色の紫色のあしらわれた服を着た青年だった。佐倉さんとか、他の見かけたサイクロの方とかもみんなこの配色の服を着ているので、制服か何かとして設定されているんだろうか……?

 

「そうですが、貴方は……」

「これは失礼。俺はナリタスカイという。スカイと呼んでほしい」

「あぁ、佐倉さんのキールの」

 

 この前見せてもらったチッキに刻まれていた名前だ。

 

「佐倉はちょっと今手が離せなくてね、俺が案内を頼まれたという訳さ。ささ、入んな」

 

 スカイさんに連れられて、内装まで紫色の廊下を進み、目的地の研究室まで案内される。

 ――『超次元専攻 鳥満研究室』。表札にはそう書かれていた。

 

「ただいまーっと、連れてきたぞ」

「失礼しまーす……」

 

 この部屋に入ってまず目についたのが、大量の本棚とそれを埋め尽くす本、本、本の山。いいなぁ……じゃなくて、かなり理論とかそっちの研究をしているのだろう。

 そしてその書斎の奥から、紫色のベストを纏った元気そうな年老いた男性が姿を現した。

 

「はじめまして。私の名前は鳥満、こちらでノリモンの根源に関する研究をしておる」

「山根真也と言います、佐倉先輩にはユニットで大変お世話になっております」

「ほっほ、そう畏まらずともよい。肩の力をぬきなされ。ささ、立ち話もなんだからどうぞこちらへ」

 

 鳥満博士はそう言いながら、研究室内の小さな小部屋に僕を案内した。

 席にかけると、スカイさんが飲み物を出してくれた。紫色……ということは流石になく、普通に翡翠色の緑茶だ。

 

「話は佐倉から聞いているとは思うが」

「これですよね」

 

 チッキケースから、1枚だけ逆向きに入れてあるものを取り出す。

 はじめて触れたときに、よくわからないイメージが広がったチッキだ。

 

「それじゃ。本題に入る前に、失礼じゃが前提知識の確認をさせてもらおう。知っているか否かで話す内容が変わってくるのでな」

「まだ駆け出しもいいところの若造ですよ、僕は。何も知らないと思って頂いて結構です」

「そうかね。ならばそもそもチッキとは何か、なぜチッキを用いて私達トレイナーがトレイニングをすることができるのか、という話からしなければいかんのだが、長くなることを承知頂きたい」

 

 鳥満博士はそう前置きをして語り始めた。

 

 ★

 

 まず大前提として、ノリモンとトレイナーはチッキを用いなくともトレイニングをすること自体は可能である。そもそもチッキの開発より前、博士が一人のトレイナーとして活動していた頃から、ノリモンとトレイナーはトレイニングをしていたのだ。

 では、なんのためにチッキは存在するのか? それは、簡単に言えば触媒であり、そして安定剤だ。

 だがしかし、ノリモンとトレイナーがトレイニングするのは、そのノリモンが車であれノリモノイドであれ、双方が接していないとトレイニングはできない。その上一定以上……ノリモンによって異なるものの、最低で1609m、最大でも1852m以上離れるとトレイニングが解除されてしまうという欠陥もあった。

 

 そんな中、ある車両が画期的な解決策を生み出した。その車は自らの担当する博多発名古屋行きの寝台特急の特急券を媒介にして、トレイナーのこの距離制限を突破させることに成功したのだ。

 そしてその特急電車の愛称に由来し、この現象はウェヌス現象と名付けられた。

 

 このウェヌス現象を調査していくうちに、これまでわかっていなかったトレイニングのメカニズムも、その一端ではあるものの少しずつわかってくるようになった。

 例えば、トレイニングというのはそれまで、その可否の認知の非対称性からノリモン側からトレイナーに働きかけるものだと考えられていた。だが実際には逆で、その主導権はトレイナー側にあったのだ。

 そしてそのことがわかると、このウェヌス現象をさらに発展させようという動きが広がる。トレイニングの維持が代替の特急券でできるのならば、トレイニングすること自体もそれを用いることができるのでは? と。

 そうして十数年にわたる長い間研究と実証実験が進められて、昭和60年になってようやく完成したのが、チッキなのである。

 

 ★

 

「このチッキの完成を期に、国鉄解体に先駆けて設立されたのがここJRNなのじゃよ」

 

 かのルースの落し子への対応のために、初めてトレイニングを()()トシマさんがしたのが昭和27年の話だから、もはやチッキができてからのほうが長いのか。どうりで今の世代である僕達にとって、チッキがあるのが当たり前という価値観になってしまっている訳だ。

 

「チッキって、最初っからあったものだと思ってました」

「失礼。私は佐倉からキールがクシー号であると聞いておる。彼女が成った頃は確かまだ最初の実証実験が始まったくらいだったはずじゃが、聞いとらんのかね?」

「クシーさん、そもそもトレイニング自体あまりしたがらないじゃないですか。そもそも僕自体キールとしては初めてだと言ってましたから」

 

 話を聞いている限りじゃ、チッキができるより前はとてもめんどくさそうだったし、そもそもやってなかったんじゃないかなぁ。

 

「彼女はそうじゃったな。……話を戻そう。つまりチッキというのは、本来平易に言ってしまえば糸電話の電話帳の1ページに過ぎない」

「糸電話……?」

「そう、糸電話じゃ。チッキを使うことで、そのチッキからウェヌスシステムに接続して、その中から対象のノリモンを見つけ出してその力を借りることができるのじゃ」

 

 ……いや、まって、突然よくわからないんですけど!?

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