ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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16レ後:科学に犠牲はつきものじゃよ

 それからいくつかのやり取りと、逆に鳥満博士から僕への質問に答えたりした後、また話に進展があれば連絡してくれて構わないと連絡先を教えてくれた。

 ただ、その時は僕自身のデータを取りたいらしい。そもそもイメージが視えた理由に対して仮説しか出せていないのだとかで、その検証にはどうしてもデータが必要なのだそうだ。

 

「別に今でも大丈夫ですよ、今日は予定ないですから」

「私もそうできるなら早く知りたいのじゃが、一昨日一部の測定機器が誤差を出し続けておるのが分かってな、業者を手配中なのじゃよ」

「なんか……ごめんなさい」

「君が謝ることではないじゃろう」

 

 そうなんだけど、タイミングが悪すぎる。

 そういう訳で、細かい検査が暫くはできないから、事態が進展するまで待とうということなのだろう。その頃にはきっと測定機器もどうにかなっているだろうという期待の下に。

 

「まぁ、そんな訳じゃから残念ながら今日は話だけじゃよ」

 

 鳥満博士は残念そうにそう言った。

 だったら生きてる機器だけで賄える測定をすればいいのでは? とも思ったけれど、その道のプロが今日はやめたほうがいいと判断しているくらいなのだから、恐らくはそう単純な話でもないのだろう。

 結局、今日は特にできることはもうないので、お開きにすることになった。

 

「ちょっと待っておれ。スカイを呼ぶからの」

「いや、外に出るくらいなら案内されなくても大丈夫ですよ」

 

 流石に僕はそこまで方向音痴ではない。そう伝えると、

 

「建物が迷宮めいて複雑であるからではないんじゃよ。君のように、明らかにサイクロの者ではないと分かるような者がこの建物内を一人で歩くのが危険なのじゃ。例えば薬学系のタムタサタキ連中に捕まってしまえば、君の体はケミカルに変性することになるじゃろうな」

 

 と俄には信じられないような情報が開示された。曰く、ここ(サイクロ)では外からお客さんを招く際にはそうであるとわかるように共用スペースでは可能な限り呼んだ関係者が付き添うのがルールで、そうでないものはただの侵入者とみなされて何をされても文句は言えないのだとか。

 まぁ、明らかにJRNへの侵入者が欲しがるような情報を持っているのはサイクロかロケットな訳で、()()()()()()()()()()()()()()ここも本当によく侵入されたりしたんだろうな。その結果として過剰に防御反応が出てしまうのも分からなくはないけど……。

 

「倫理ってものは無いんですかね?」

「科学に犠牲はつきものじゃよ」

 

 最悪の答えだ。

 ロケットの僕が言えたことじゃないけど、もしかして時折JRNの中なのに行方不明になる人がいるってそういう……?

 そしてサイクロにはホルマリン輸送のタキのノリモンなども所属しているらしく。それ敵意持って接されたら100パーセント碌な事にならない相手じゃないですか。

 僕はそうはなりたくないので、大人しくスカイさんに送ってもらうことにした。

 

 ★

 

「……のうナリタ。データは取れてるかの?」

「バッチリよ」

 

 スカイが山根を連れ出した後の鳥満研究室で、鳥満は小部屋の裏の部屋にいた者にそう呼びかけた。

 呼びかけられて出てきたのは、象牙色の長い髪を持った、ナリタと呼ばれたノリモンだ。

 

「しっかし博士も悪いですねー。許可も取らずに測定用の部屋に誘導するなんて」

「なに、データを取ること自体には前向きな反応を示しとったし、事後報告でも問題はないわい」

「あらあら、お人好しな子なのね」

 

 ナリタは山根をそう分析した。その分析は正しく、実際そうである。

 そう、先程まで鳥満と山根が会話をしていたこの小部屋は、超次元方向へと働く力により三次元内に発生する歪みを検知することで、その超次元の力を逆算できるよう数多のセンサーが壁の中に埋め込まれているのだ。

 彼らは既にこの部屋を用いて、一度返却されたチッキに超次元の力が働いていなかった事を確認済みだ。そこで1つの仮説が生まれた。山根の下にある間だけ働くのではないかと。

 その検証のために、鳥満はこの部屋に山根を招いたのである。

 

「それで、結果はどうじゃったか?」

「想像どおりね。やっぱり彼があのチッキを持っている間だけ、モヤイがチッキに纏わりついていたわ。でも、机においた瞬間パタリ」

「ふむ。興味深い結果になったな。てっきり既に刻印されたものと同じように、彼の近傍にある時は常にそうじゃと思っとったが」

「そんな感じのチッキも一枚あったけど、恐らくそれはクシー号のでしょうね。……それよりも」

 

 ナリタは興奮の混じった声で話を途切れさせた。そして、

 

「もっと興味深い現象を見ちゃった」

 

 と一言発すると、鳥満の反応を待つ。

 その声を聞いた鳥満の眉も、僅かにピクリと動いた。これは彼が興味を示している証拠だ。

 そう判断したナリタは一呼吸おいて、再び口を開ける。

 

「彼、自分からモヤイを出してる」

「……何じゃと!? 彼()人間では無いというのか?」

「いや、間違いなく人間のはず。スクールの方のデータも覗いてみたけど、健康診断で毎年きちんと身長体重の変化が見られてる」

「ではなぜじゃ。純粋な人間は自発的にモヤイを出す事はできぬはず」

 

 鳥満は、明らかに興奮していた。その眼に差さった色は、少年のような純粋なる好奇心。

 

「落ち着いてよ博士。なんのために、サクラちゃんを下関へと向かわせたと思ってるのさ」

「じゃが。自ずからモヤイを出すことの能うことが、既に観測されている彼の特異な体質に関わるのだとすれば? 彼女の例から考えて、その蓋然性は高まってきたのではないのかね」

「それもそうなんだけどね」

 

 そしてその好奇心の色が差さっているのは、もう片方の者も同じだった。

 

「となると、()()()のもそれが原因やもしれんな。こうしてはいられん、今日はそのデータを解析するかの?」

「言われなくたって、そうするつもりよ」

 

 その日の鳥満研究室は、夜遅くまで明かりが消えなかったという……。




【キャラクター紹介:#11】
鳥満(とりまん) 絢太(けんた)
・誕生日:7月7日
・出身地:長野県
・キール:ゲッコウリヂル
・所 属:サイクロ/JRN

 JRNで長い間ノリモンの研究をしている博士で、ラッチ開発の主要な人物の一人。
 昔はトレイナーとしても活躍していたが、老衰には抗えなかったらしい。 
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