土曜日。木曜の活動には出張で顔を見せなかった佐倉さんも戻ってきて、火曜ぶりのユニット全体での演習だ。
ちなみに昨日18時過ぎまで僕達をほっぽってベーテクさんとふたりだけの世界に入ってしまっていた成岩さんは、流石に申し訳なさそうにこちらを見ている。
「さて、今日は合同演習の予定なのだが」
「久しぶりだな、北澤が入ってからは初めてじゃないか?」
「そろそろ北澤君はユニット対ユニットでも問題ない程度にはなってきているからな。山根君は……既にトレイナー同士じゃ1対9でも無双できるポテンシャルはあるのだが……」
うん、それ僕が凄いんじゃなくて《桜銀河》が、というかクシーさんが強すぎるだけだ。一回彼女にクィムガン役やるときはどうしてるのか聞いたけど、単純に動かない事で《桜銀河》を打てる余裕をわざわざ殺しているというのだから、相手の攻撃をいなしたりする技術の未熟な僕にはまだ無理だ。
……改めて客観的に見ると僕って色々酷いな。逃げて一方的に勝つしか芸が無いのだから。やっぱり近接戦闘できるようになった方がいい。
「という訳で、山根君。君は今回、攻撃は私達のうち3人が脱落するまで禁止だ」
「完全に禁止ではないんですね」
「単純にウルサとしても負けたくは無いのでね」
その時、珍しく早乙女さんの目がぎらりと光った、ような気がした。
「だが、攻撃回避の練習として、今日も半分より外側に出るのは禁止なのは変えん」
「……わかりました」
それはそれで、僕は得物を使ってガードできる訳じゃないんだから秒殺されてしまいそうな条件だけど。まぁできる限り足掻くからなる様になれとしか言いようがない。
早乙女さんはそう僕に伝えると、再び全員へのアナウンスに戻った。
「先方との約束は10時だ。それまでに各位準備しておくように」
「承知。それで、相手はどこ」
「ドラコだ。それも向こうからのご指名でね」
「え、ドラコが……?」
ドラコ・ユニット。この前(と言っても1か月以上前だけど……)の出動でもお世話になっていた、JRN屈指の実力派のユニットだ。
そこがわざわざ新人2人いるここをご指名? 僕達が入る前のウルサは確かに活動報告漁る限り結構実績積んでいたらしいけど、構成員が4割も変わったらもうそれは別ものなのでは?
「まぁ十中八九、山根君の《桜銀河》が目当てだろうな」
「取り扱いには苦労してるんですけどね」
「強力なのに違いはないだろう?」
それはそうだ。そもそも誤射が致命的になるほど強いから取り扱いに苦労しているのであって、弱かったら多少の誤射は許容できる。それこそ仲間の黄色を消し飛ばしていたクシーさんみたいに。
まぁ、他の物理的な技と違ってノリモンやトレイナー、それにクィムガンにしか効かないだけ、ある意味では誤射リスクは小さいのだろうけど、悲しいかなラチ内で使うんだったら最早関係のない話で。
「ある意味じゃ、時代遅れな技なのかもしれないのかな……。でも、」
それを最大限に生かすのがトレイナーの仕事だ。使いこなせれば、強力なのは間違いないのだから。
「だからこそ、燃える」
「……そうか。なら頑張りなさい」
とりあえず今回もいつもどおり近接で躱して逃げる特訓の一環だと思えばいい。
そう考えていると、北澤さんが不意に口を開いた。
「……なら、《桜銀河》を禁止すべきじゃないんじゃない?」
「ほぅ。どうして我々が向こうの都合
早乙女さんはここで一度言葉を止めた。だけれど、語りかけるのは止まっていない。その目線が、北澤さんに語りかけ続けている。
「我々を
「はい……」
「言っておくが、私はそこまで甘いわけではないからな」
北澤さんは、バツが悪そうにしゅんとしている。
なんで? と頭の上にクエスチョンマークを浮かべていたら、佐倉さんが耳打ちで教えてくれた。どうも僕が瞬殺して自分は強いウルサの人たちとやり合わずに済むのを期待してたんじゃないかという見解らしい。
なるほど、そりゃ早乙女さん怒るな……。普段だって僕がわざと手を抜いた場合すぐに察知して注意してくるもの。
というか、流石に《桜銀河》使っても瞬殺は無理だと思う。味方を巻き込んでいいなら話は別だけど、許可もなくそうしたらそれはそれで絶対早乙女さんに怒られる。実際の現場でこんなことをしたら私達はただじゃすまなくなる、と。
「他に確認したいことは無いな? なら、45分までは各自の調整としたい」
「「「「承知」」」」
……さて、久しぶりの模擬戦闘だし、足回りとか一応確認しておかなくっちゃな。