ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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18レ続:卑怯でも勝てば正義

 ――それでいいのかい?

 

 どこからともなく、そんな声が聞こえた気がした。

 それでいいも何も、早乙女さんにまだ《桜銀河》を禁じられている以上、拘束されてしまえばおしまいだ。

 そしてドラコバランス(死神)が、こちらに近づこうと動き出したのも見える。もう無理じゃないかな。

 

 ――本当に、そうなの?

 

 そんなことを言われても。羽交い締めになっている以上、手の可動域は狭まって後ろを攻撃できやしないし、足を動かしで後ろ蹴りをしようにも密着していると近すぎて駄目だ、かんたんによけられてしまう。

 これがトレイニングしていないのであれば、踵で小指のつま先を踏んづけてしまうのが手っ取り早いけど、今やったところで下に車輪がある。つま先が地面にぴたりとくっついている訳ではないのでほとんど無意味だ。

 ……いや、ちょっと待てよ。

 今の僕の足の先には、車輪がついている。さっき蹴りを入れようとしたときにも使おうとしたアレだ。ならば!

 

 滅多に使わない逆転機を作動させ、車輪を後ろ向きに回す。そしてそれを真後ろにいるドラコパレイユに押し付ければ。

 

 ほとんど衝突のエネルギーのないこれが、シールドにどれだけのダメージを与えられるかはわからない。でも、確かなのは僕の体に上方向の加速度がかかり続けるということ。そしてそれは、羽交い締めをしている方からすれば、相当きついはず。

 

「あのね、ぼくの体は線路じゃないんだよ」

「今の僕にとっては、そうなんです」

「なら、こうするしかないね」

 

 その言葉とともに、足の先にあった接地感が消える。次の瞬間、僕の体は地面に衝突していた。()()()()()()()()()()()

 抜け出せるかどうか確かめようと、激しく体を揺らすなどしても拘束は外れない。しかもどうも今のでシールドが削られたらしく、意外と余裕が残っていない。

 

「このとんだ暴れ馬め」

「悪いですか」

「いいや。同じJRNの先輩としては頼もしいよ。今みたいな模擬戦じゃご遠慮願いたいけれどね」

 

 一定の評価は得られたって、ことかな?

 とはいえ、これでもう本当におしまいだ。ドラコバランスはもう半分くらいまで距離を詰めてるし、早乙女さんも……あ、ちょうど今ドラコロケットと同時にトレイニングが解けた。これで4対2。

 

 ……あれ?

 気づいてしまった。つまりこれで3()()()()()()、ってことな訳だ。

 いけるのか……?

 

 羽交い締めにされ、恐らくドラコパレイユの頭より上にある手の先に力を溜める。

 そして……。

 

「でも最後まで、足掻いてみせる! 《桜銀河》!」

「なっ……」

 

 ドラコパレイユの驚くような声が聞こえるが、もう遅い。止めようとドラコパレイユがこの光に手を伸ばせば、逆に彼のシールドも割れてしまうだろうから。そして桜色の光はあと少しで到達できそうだったドラコバランスへとまたたくまに到達し、それから彼が完全な回避行動に移った直後までの数秒でシールドを割りきった。

 続けて僅かに腕の先と意識を動かして、乱闘を唯一生き残ったドラコノーヴルへとその目標を変える。

 

「この体勢で撃てるんだ……」

「最悪片手でもいけますからね」

 

 何ならクシーさんいわく力込められさえすれば口とかでもできなくはないらしい。僕はまだやったことないしどう考えても視界が塞がるからあんまりやる気もないけど。

 

 それはさておき、これで形勢は……逆転はしていないけど、たぶんだいぶ取り戻せたと思う。3対2で、うち1対1はそれぞれやりあっているし、残る2のうち1は迂闊にこちらに近づけず、1もほとんど動けない。あとはドラコノーヴルに当ててしまえばほぼこちらの勝ちは決まったようなものだけど、ちょこまかと動くのと、手の可動域が微妙に制限されて動かしにくいせいでなかなか当たらない。

 そう考えている時だった。

 

「《ホライゾン・レッド》」

「しまっ、2対1は卑怯だって」

「戦いは、卑怯でも勝てば正義」

 

 佐倉さんの攻撃が、僕を拘束したせいで逆に拘束されてしまっていたドラコパレイユを死角から襲う。そして拘束が桁違いに弱まった――トレイニングが、解けたのだろう。

 

「剥がすから、止めて」

「承知。助かります」

「私の戦いが終わって、余裕ができただけ」

 

 一旦《桜銀河》を止めて、佐倉さんに拘束を剥がしてもらってから、僕達は残ったドラコノーヴルと対峙する。彼は僕のが止まった一瞬のうちに、かなり距離を詰めてきていた。

 

「私が止める。()()()()()()()()から、後はよろしく。……《アークティック・ホワイト》」

 

 佐倉さんはそう言うと、一瞬だけ紫色の光を纏って彼の方へと駆けていった。そしてその双剣が白い軌跡を残しながらドラコノーヴルへと向かうのを横目に、僕は少しずつ動きながら彼女の思惑通りに両手の間に力を溜める。

 ……よし、近接戦闘で応酬している二人を、横から見られる場所に出た。佐倉さんの白い剣の軌跡が空中に残って、ドラコノーヴルの動きを制限しているように見える。そして一瞬だけ佐倉さんと目があって、僕は強かに頷いた。

 

「《桜銀河》ぁっ!」

 

 手元に集まった黄色の光から桜色の光が伸びて、ドラコノーヴルに突き刺さる。そのうえ、彼の周りには佐倉さんの残した軌跡がまとわりついており、どうも十分に動くことができないようだ。

 

 そして《桜銀河》の光に飲まれぬよう、数歩後退しつつも脱出を警戒していた佐倉さんの動きは、その意味が必要とされることなく終わった。

 ドラコノーヴルのシールドが限界を迎え、その表面に崩壊の兆しが見える。それを確認してから僕が《桜銀河》を止めて、佐倉さんも《アークティック・ホワイト》の軌跡を消し去れば、そのシールドは割れて、彼のトレイニングは解かれた。残りのトレイナーは、0対2。

 

 この模擬戦、僕達ウルサの勝ちだ。

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