「次は負けないからな、早乙女」
「引分だっただろう」
「援軍貰っての引分なんて、実質負けみたいなものだろ」
最後にとどめをさした者の義務として、ラッチを開けて戻ってくれば、早乙女さんとドラコのリーダーがそう再戦を誓い合っていた。結局全体巻き込んだユニットの模擬戦でもそうなるんだったら、できれば二人だけでやってほしいね。
……というか。
「お互いがお互いで各個撃破をやりあうんだったら、全体で模擬戦する意味なくないですかね……?」
「それは違うぞ、山根君。お互いがお互いを牽制し合った結果としてそう見える結果になっただけだ。例えば私の場合、君に攻撃が回らぬよう彼を引き付けたり、あるいはわざと援軍がこちらへと向かうよう、戦いながら視線の間に割って入るような位置に移動したりしていた」
「えっそんなことしてたんですか」
勝手にライバルとタイマン始めてたみたいな捉え方してごめんなさい。そのことは口には出してはいなかったので、心のなかで謝っていると、気がついたら脱落していた成岩さんが口を開く。
曰く、近接戦闘の術がない僕に攻撃を集中させるわけには行かないから、先輩方3人で僕達新人2人を庇ってたようなものだったらしい。なので、僕達が各個撃破のように感じたのであれば、それは彼らの作戦が上手く行っていたことの証左なのだとか。
「でもこの人北澤さんの援軍向かって、返り討ちにされてた」
「それは言うなって」
「アタシより先に沈んでってたよね」
まぁ、こればっかりは相性の問題もあるのでしょうがない。僕だって今回みたいに近中距離のレンジに入ればだいぶ苦戦するけれど、長距離だったらほぼほぼ勝ち確定だ。そして今回戦った人も、おそらく中距離が得意だけど極度に近接されると有効手段を失ってしまうパターンだったと思われる。長い槍だったし。だからこそ、お互いに膠着状態になってそれが長く続いてしまったのだろう。
同じように、成岩さんにも不得手なレンジがあって、そこがたまたま北澤さんの得意とする範囲だったらそりゃ北澤さんの方が耐える。先輩としてのメンツは丸つぶれではあるけれど、それも仕方のないことなんだ。
「いい若手に恵まれてるじゃないか」
不意に、ドラコのリーダーがそう割って入ってきた。
……いや、強豪ユニットなんだから募集かければ優秀な人は放っておいても集まるのでは?
「予備要員として十数人既に囲っておいている君達に言われたくはないぞ」
「だからこそ、ギリギリで回してこうなっているお前達を羨ましくも感じるんだよ。それにうちの若手同士は割と殺伐としちゃってっから」
「そりゃ選抜形式にしたらそうもなるだろう……」
早乙女さんはこいつ何を言ってるんだとでも言いたげな、半分呆れたような目でドラコのリーダーを見つめた。
当たり前だけど、ユニットの欠員補充の方法は当然ユニットによって異なる。このドラコみたいに予め欠員が出ること前提で囲い込んで研修しているユニットもあれば、ウルサみたいに欠員が出ることがわかってから補充に動き出すユニットもある。その補充の方法もまちまちで、全体の不特定多数に募集かけて集めるところもあれば、ウルサみたいにユニットから親交のある者を通じて――要するにコネだ――候補となるトレイナーにオファーを出すユニットもあるのだ。
僕の場合は、確か早乙女さんの前のリーダーだった人がコダマさんをキールとしていて、それで早乙女さんとコダマさんとで親交があって、コダマさん経由でクシーさんが僕のキールになろうとしている話が伝わったんだとかで、クシーさんとの研修中の割と早い段階に話が降ってきていたんだよね。
閑話休題。
そんな訳だから、ウルサとドラコとではおそらくユニットの中の空気が全然違うのだろう。しかもドラコの場合は、予め予備メンバーとして囲っておいているのが各派閥毎に何人かいて、その中から正規メンバーを選ぶ形式のようだ。そりゃあ優秀な人は集まるかもしれないし、ドラコという
その結果を当のドラコのリーダーが憂いているのだとすれば、結構皮肉な話だな、と感じた。
「まぁでも、今回いい演習にはなった。ドラコとしても得られるものはあったからな」
「こちらこそ、各メンバー不足している部分を洗い出せた。お誘い、感謝するよ」
それから僕達は、握手と礼を交わして演習場を後にした。
★
「それで、お前はあの桜色の光線を間近で見てどう感じた?」
「あの《桜銀河》、たぶんモヤイを断ち切るような、そういうものに見えたね。だから別のノリモンさえ巻き込まないこと考えれば、ラチ外でも使えるやつじゃないかな」
「そこまでわかるのか」
「伊達にパレイユやってないよ。あそこは観察眼が無きゃ生き残れないんだもの」
「それもそうか。……しかしこう聞くと、この前に巻き込むからと攻撃を中断していたのも納得できる」
「本人も扱いは結構苦労してそうには見えたよ。だって早乙女さんが脱落して、味方巻き込まずに打てるってわかるまで打とうともしてなかったし、最後はウルササイクロがわざわざ
「遠距離勢共通の悩みからは抜け出せそうもない、か。……で、
「いきなりだね。まぁ光線系の例に漏れず、透過する量にもよるけど単純な構築物で防げるんじゃない?」
「それはラチ内じゃ割とどうしようもねぇだろうが。
「ぶっちゃけ他の光線と違って温度が上がったりとか、物理的に押されたりとかはなさそうだったから、厚紙一枚でも平気な気はしたけどね。それでも心配ならたぶん波だし空気で層を作れば屈折するんじゃないの? 蜃気楼はアンタの十八番でしょ?」
「なるほどな」
【TIPS:ユニット】
それぞれのノリモンが割ることのできるシールドは1色に限られるため、それを補うように5派閥からひとりずつで構成されるようになった、JRNでのクィムガン対応の最小単位で、星座に由来する名を持つ。
その大まかな意義や枠組みはユニットを構成するものがノリモンからトレイナーに変わった現在でも変わっておらず、その名前も引き継がれている。