昼休みを挟んで、午後の活動。
各自フィードバックを踏まえ、二手に分かれてのユニット内での模擬戦闘、なのだけれど。
「開始5秒前、4、3、2、1、スタート!」
今回の組分けはかたや早乙女さんと北澤さん、そしてもう片方は佐倉さんと成岩さん。……僕は、今回は立会人としてお休みだ。
どうしてこうなったかといえば、現状僕がこの形式の模擬戦に参加したところで、結局は大きく逃げて《桜銀河》を差すしか勝ち筋がなく、そしてその精度もかなり上がった今となってはもはや参加するよりは立会人として戦闘を間近で見ていた方が良い、という成岩さんからの進言が採用されたのだ。
だいぶ前どころか所属した最初っからそんな状態だったような気もするけれど、曰く逃げる技術が仕上がってきたのはここ最近だということらしく、そこができるまでは黙っていたんだと。……そんなに変わってるのかなぁ?
でも、確かにいつもみんなの戦っている姿は遠くからしか直接は見ていなかったので、こういう機会もあったほうがいいだろう。
「先手必勝! 《クレインリバー》!」
「《ホライゾン・レッド》」
北澤さんがすぐさま距離を詰め、それに呼応するように佐倉さんも前へと移る。
スモールソードが舞い、双剣が燃え上がる。そして2つは衝突した。
双剣とスモールソード。どちらも接近戦を得意とする前衛の用いる得物だけれど、その役割は大きく違う。それは彼女達の戦いを見ればよく分かった。
佐倉さんの双剣は、連撃タイプだ。一撃一撃はおそらくそう強くない、速度の比較的ない斬撃を高頻度で繰り出している。そして真っ赤に燃えるような炎が、弱い各々の一撃を補助しているのだろう。
逆に北澤さんのスモールソードは一撃タイプだ。そう繰り出す頻度は高くないけれど、その一発一発の刺突の速度が非常に速く、そして重いのだろう。
勿論それぞれで得意なレンジもおそらく異なっている。佐倉さんは思いっきり近づき踏み込んでいるけれど、北澤さんは攻撃前に一歩下がっているのが見て取れる。
その裏で、後ろの2人は何もしていなかったわけではない。彼らは2人の激突とほぼ同じ頃に同時にトランジットをはじめて姿を変えていた。成岩さんはオモテを真紅に、早乙女さんはスターを白色に。
そしてこの2人うち、先に動いたのは成岩さんだった。彼はトランジットの光が消えると共に、すぐさま移動して北澤さんと早乙女さん
……えっ、そこに?
成岩さんの速度なら、もっと回り込むべき場所があるのでは? 例えば、早乙女さんの真後ろだとか。基本的には、前と後ろの両方を警戒しないといけないのだから、挟まれるというのは相当分が悪い配置のはず。
なのになぜ、彼はそんな場所に?
そう思った束の間。佐倉さんが何かを確認した後、急に《ストラトス・グレイ》で斜め後ろへと飛び上がった。
次の瞬間。突然、成岩さんが高速で回転をはじめて、そして巨大な鎌が伸びて彼を中心とした四方に襲いかかる。とても危なくて険しい攻撃だ。横で見ている僕ですら、巻き込まれそうになって距離を取らざるを得ない。しかし、なるほど確かに真ん中に陣取った方が効率的。
だけど、その攻撃範囲はとても単純で。冷静にその回転のタイミングを読めてしまえば攻撃の回避は容易。事実北澤さんは飛び上がった佐倉さんを警戒しながらですら、鎌の襲うタイミングを読んでジャンプして回避することができている。
そして、それは反対側の彼もそうだ。
落ち着いたように躱し続けた早乙女さんが、その右手の先に構えた扇子を大きく一振りすれば、つむじ風が生まれて成岩さんへと向かっていく。
その風の進みはそれほど速くはない。だけど、その場で回っている者がそれをやめて逃げることが能わないという面では、十分な速さだった。
回転の止まっていない成岩さんは、同じ向きに回るつむじ風に囚われ、真上へと打ち上げられる。彼はそれでも、空中でチッキケースに手をかけようとしているし、空を飛んでいる佐倉さんも彼を回収しようと近寄る。
だけれど、それは間に合わなかった。
その飛ばされた先の近くにいる……いや、おそらくそうなるように飛ばしたのだろう、北澤さんが地面から跳び上がって渾身の上突きで成岩さんを襲う! そして彼は、トランジットの解ける光に包まれながら地面に激突した。
たが、そこにはまた別の隙。
彼女が地面へ降りて着地の姿勢を取っている間に、佐倉さんの剣が北澤さんに通り、そのシールドを見納めにする。
これで残りは、1対1。
そう思って視線を早乙女さんに戻せば、彼はまた、今度は黄色の光に包まれている。それが晴れれば、ポートは橙色にかわり、その手の先には大きな盾。
……盾って、どうあがいても前衛用の装備にしかならないんじゃないかなぁ? 前衛が既に崩れてるなら、いいのか?
そんなことを考えつつも、危険はだいぶ減ってきていそうなので早乙女さんに近寄って、この模擬戦を最後まで見届ける。
早乙女さんは続けてスターのトランジットを解除し、いつもの大剣を片手で構える。もう完全に前で戦うそれだ。その間にも、佐倉さんは《ホライゾン・レッド》を使って高速で早乙女さんに近寄ってくる。そして。
「《コスモ・ブラック》」
「《銀水斬》」
双剣と大剣が、激しくぶつかりあった。