模擬戦は、結局早乙女さんが佐倉さんのシールドを割って終わりになった。とはいえ、早乙女さんも相当きつかったようで、あと少しで割られてしまうところだったらしい。
この前でも最後まで殴り合っていたのに立っていたあたり、実は佐倉さんって相当強いのでは……? 僕は相手が拘束してきたら相手も何もできなくなって時間だけ過ぎてただけだし。
まぁそれはともかく。
僕達は部室に戻って、再度の振り返りを始める。そして直ぐに駄目出しをされたのは、案の定成岩さんだった。
「成岩、あれはない」
「近づけずとも自分が動けないのは、遠距離攻撃ができれば隙だらけだ」
「いや飛び道具使ってくるって分かってたら使わねぇからな? 今回山根が休みだから行けると思っただけだ」
だと言っても真上がガラ空きでは? そう思ったけど、それはあの大鎌を振り上げることでほぼ半球状の領域に攻撃できるから意外にも対応できるらしい。
それはそれで結構恐ろしいような気がするが。遠距離攻撃できなかったら詰みだし、場合によっちゃ飛び道具でも弾き飛ばされてしまうって事だよね……? 僕のようなビームやさっきの早乙女さんの風みたいな、実体のない飛び道具を持っていない人からすれば悪夢のような攻撃なのではないだろうか。
そして、早乙女さんの風といえば。
「そもそも、リーダーのあの風は何なんだ? 中衛下がるって事だから飛び道具使えそうなトランジット先は警戒してたが、どうも漏れてたっぽい」
「確かに、初めて見た気がする」
そう、僕が見た活動報告の中にも言及があった覚えがないのだ。流石に全部を読んだわけじゃないから見落としがあったのかもしれないけれど、この2人がこういう反応をするってことは少なくとも彼らが入って以降はその姿をとっていなかったということだろう。
そして、それを裏付ける言葉が早乙女さんから出てくる。
「制御できるようになったのがつい最近のことでね。それからトランジットする機会も無かったのでここでお披露目させてもらった」
つまりはまだこの人手札増やしてるって事か。凄いというか何というか、早乙女さんらしいというか。
「どうしてそんなにすぐ増えるの……?」
「長年やっていると、目の前のノリモンとトレイニングできるのかが
「そうなんだ」
「えっ」
質問を投げた北澤さんではなく、隣の佐倉さんが露骨に驚いている。鳥満博士の解説を聞いたおかげで驚いている理由は僕にもよくわかった。
だって、
この矛盾した証言。だけど、僕には早乙女さんも鳥満博士も嘘をついていたようには思えない。だとすれば、外れ値として早乙女さんがいて、その存在をかつての腸チフスのメアリーのように博士や学界が
「どうしたんだい? 佐倉君に山根君。2人して急に黙り込んで」
「いや、なんでもない。よね?」
「はい、何でもないです」
佐倉さんの「言うな」とでも言いたげな目線を受けて口を噤む。……あの笑顔、なんか変なこと考えてそうだな。言わないけど。
「それはどう見ても絶対君たちの中で共通の認識がある反応だろう……。深くは追求しないが」
「助かる」
「私を巻き込むんじゃないよ?」
「……努力する」
あ、これ絶対巻き込まれるな。そんな気がするぞ。
それを薄々察しているのか早乙女さんも苦笑いで、そして話をこれ以上進めまいと強引に話を戻す。
「とりあえずそれはおいておいて話を戻そう。今回中衛ということで風のノリモンとトランジットした訳だが、皆から見て私のに改善点があったと感じるなら教えてほしい」
「「「「ない」」」」
早乙女さんは懐疑的な目でこっちを見てるけど、そもそも完成したからこそようやくお披露目できたんじゃなかったのか……?
「無いわけがないと思うのだが」
「俺は回ってたし、佐倉は遠い、北澤は後ろ向いてたからそもそも山根しかまともに見られてないぞ、あの攻撃」
「なら山根君、君の意見をだな」
「全く知らないメカニズムで一発撃っただけ、それをきっちり当てられているのにどう改善点を見いだせっていうんですか?」
よっぽど溜めの時間が長すぎるとか、出した後に体のバランスを崩してしまうとか、そういったのがあるなら別だけど、普通に立ち続ける事ができていた訳で。
これが例えばよく知っているメカニズムだとしたら、フォームのどこが悪いとか指摘ができるんだろうけど、僕はまだその域にまでは到達していない。
「なので、無理です」
「そうか。ならばいいのだが」
ここまでして改善点を見つけようとするハングリー精神こそが、早乙女さんの強さの秘訣なのだろうし、そこには見習うべきものがあるのは確かだけれど、無茶な要求まではしないでほしいな。
そう思いながら、残りの前二人の振り返り――これはほとんど新規性がなかったのですぐに終わった――をして、今日はおわりになった。