ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

72 / 306
22レ前:まったく成功していないのでノーカウント

 トランジット・トレイニング。トレイナーの持つ、最大の武器の1つである。

 そしてその知識を最も多く持っていると言われている人のうちの1人が、何を隠そうウルサのリーダーたる早乙女さんなのである。

 

「さて、2人とも資料は既に渡していると思うが、一応目を通しておいてもらえているかな」

「僕は読みました」

「アタシも大丈夫」

「よし、ならば書いておいたことは重要な箇所以外は割と飛ばし気味で行こう」

 

 いやあの文書の内容飛ばし気味って、この人どれくらい情報持ってるんだ。事前に読んでおいて助かった、と言うべきなんだろうか……?

 

「まず、トランジットの方法だが、ただチッキを使うだけでは駄目だ」

「あの光の改札機、ですよね」

「そうだ。この辺りは重要だから重複するけどやるぞ」

 

 あの光の改札機は、そもそもチッキに組み込まれている機能の1つらしい。その割には今までトレイニングするときにすら1度も使ってなかったのだが、それは単純にキールであるから必要としなかっただけらしい。

 

「だからキールであろうとそれを使うことは可能だ。そもそもキールでこれが省略できることがわかったのだって割と最近なのだよ」

 

 そう言うと早乙女さんはチッキから改札機を出してみせた。ここが一番謎くさいんだけどなぁ……。

 早乙女さんが言うには、呼び出した改札機は別にその元のチッキを使わなくともよく、別の人が使っても正常に動作する。何なら空のチッキでも念じれば出るとのことで。

 

「うわ、本当に出た……」

「なんか不思議な感じ」

 

 説明を聞いた僕と北澤さんがそれぞれ空のチッキで改札機を一対ずつ呼び出す。そこまで広くもない部室の中に3対も自動改札機が生えているし、なんならその向きもぜんぶ違うので、冷静に考えるとものすっごく絵面がおかしい状況が展開されている。なんだこれ。

 そして次に、早乙女さんは僕達にチッキを入れるよう促した。言われるままにその改札機の間に入り、投入口にチッキを入れる。

 ガコン。両側の2対4枚の扉が閉まる。そして。

 

 \ピンポーン/\ピンポーン/

 

 エラー音が鳴り響いた。それと同時に後ろ側の扉が開く。

 

「……君達、どうしてそこで空のチッキを入れるんだい?」

「いや、なんか入れてみたくなって」

「左に同じです」

「気持ちはわかる。私も昔1回やったが、やはり皆通る道なのだろうか……」

 

 いや、やったんかい。

 そう心の中にツッコミを入れつつ、投入口に戻ってきていた空のチッキを回収し、代わりにクシーさんのを投入した。

 すると六角柱状に黄色の光が伸びる。そして光が消えると共に改札機の進行方向側の扉がガコンと開いた。僕はいつもと同じようにトレイニングしている。

 

「あんまり変わらないんですね」

「キールであることに変わりはないからな。だがこれはキール以外となると少々話が変わる」

 

 そう言うと早乙女さんはいつものようにトレイニングしてから、別のチッキを改札機に通した。

 青色の光の柱が立って彼を包む。だけど、その()()()()()()()()()()()()()、早乙女さんの姿()()()()()()()()()。そして、僕達が空のチッキを入れた時と同じように後ろ側の扉が開き、投入口にチッキが戻ってきている。

 

「このように、ただチッキを入れただけではトレイニングはできない。どこに問題があったか。北澤君、答えてみなさい」

「トランジット・トレイニングの先を、オモテ・スター・ポート・トモのどれにするかを選んでない?」

「半分正解だ。だがもう1つ、重要な要素が欠けている。山根君、何かわかるかね。ヒントは、トレイニングの1種であるということだが」

 

 ……いや、わからん。

 そもそもまだトレイニング自体クシーさん以外はチッキ使ってはやってないし、それ以外含めてもポラリスとの2回だけ。昨晩ウッキウキで試行錯誤して大量に失敗しまくったのはまったく成功していないのでノーカウントだ。

 

「……もしや、スクールの方ではキール以外のチッキを用いてのトレイニングの方法について教育されていないのか?」

「無かったですね、キールは特別で簡易だというのと、昔はチッキを使ってなかったのは教わったと思うんですけど、その詳細までは……」

「トランジットについては?」

「存在だけ、現場で覚えろって感じでしたね」

 

 そして早乙女さんは僕がサボっていたわけではいなかったことを北澤さんにも尋ねて確認すると、ため息を1つついた。

 何せよ普通に3年で詰め込んで、それを習得させる以上わりとカリキュラムはきつきつだったからなぁ。僕は授業だけでどうにか詰め込めたから余裕あったけど、復習詰め込んで死んでた同期とかいたし。

 

「そうか、そこが変わっていたか。成岩君の時はあったと聞いていた」

「なるほど、だから資料でも書いてなかったと」

「こればかりは仕方ない。それでだな、答えを伝えると、チッキを用いてトレイニングをするときは、発声による呼びかけを要するのだ。声を出すことそのものが重要で、実際は小声でも問題はないのだが、今回は分かりやすくするために声を張る」

 

 そう言うと、早乙女さんはもう一度、チッキを改札機に入れた。

 再び扉が閉まり、そして青い光が彼を包む。

 そして。

 

駆け抜ける想いよ夢よ希望よ、風も谺も光すらも追い抜かん! ノゾミタキオン号、今このトモに宿れ!

 

 ……え、何この痛い口上。

 なんだろう、トランジット・トレイニングがかなり有用なのに適正があってもそもそも使わないトレイナーがいる根本的な理由がわかったような気がする……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。