ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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23レ後:めがみさまに出会ったんだ

「びっくりさせちゃったみたいで、ごめんなさい」

 

 ポラリスは小部屋から出てくると、僕達にそう謝ってきた。

 

「それよりも、お前が無事で良かったよ」

「本当にそう、痛いところとかないよね?」

「ポラリスは大丈夫だもん」

 

 ならば、話を聞かないとね。

 

「ねぇポラリス。今朝ここで、僕がトレイニングをしたことは覚えてるよね?」

「うん、かっこよかった。それで、真似したらめがみさまに出会ったんだ!」

「女神様?」

 

 詳しく話を聞いてみれば、どうも僕のトレイニングに使うフレーズをポラリス本人が唱えたことがトリガーとなって、「めがみさま」に連れて行かれた、という事のようだ。まるで意味がわからんぞ?

 

「そこでね、こんなの貰っちゃったんだ! てん、てん、てーん!」

 

 そう言って、ポラリスが手を振ると、その手先には、おそらく木彫りであろう、柄付きの鞘に柄が突き刺さっていた。

 ……うん、どう見ても、あからさまに刃物だ。それもそこそこ大きく、柄が20センチ弱、刃渡りはおよそ30センチほどの。なんてもの渡してくれてるの? 神様じゃなくて悪魔では?

 

「一応、気をつけて、抜いて見せてくれるか?」

 

 その成岩さんの言葉に、ポラリスはゆっくりと刃を引き抜いた。

 すらり。先が円弧状に細った美しい矩形の刀身が姿を現す。

 

「小刀か包丁か……いや、鉈だな、このサイズだと」

「ポラリス、それ無闇に振り回しちゃだめだからね、危ないから」

「はーい」

 

 そう、僕達ヒト組がポラリスに発現したウェポンの確認をしている間に、合流したべーテクさんたちノリモン組は別の話をしていた。

 

「女神様って、要するに……」

「たぶん、Novelty様じゃないデースか」

「青い光を纏っていたというのですから、おそらくそうに違いありませんわ」

 

 Novelty。スクールで習った五元神の1柱の名だ。

 彼らはノリモンが我々に認知されるよりも200年強ほど前の機関車で、機関車としての名前をそのままに神性を得ていた存在、安定の神Rocket、速度の神Novelty、根源の神Cycloped、出力の神Perseverance、美麗の神Sans Pareilの5柱だ。今もなお全てのノリモンを見守ってくれていると信じられているし、ノリモン達の間では、ごくまれに夢に出てくるのだとか、そう言った話が囁かれているのも聞く。

 

「ねぇ、ポラリス。めがみさまとは、どんなお話を?」

「めがみさまね、()()()()()()()()()()()って」

 

 ……ん?

 ()()()()()()()()()()()()? 文字通りに受け取れば、Novelty神がポラリスに以前からアプローチを試みていたのが、何らかの理由でできずにいて、そしてあの瞬間にようやく繋がったということなのだろうけど。

 

「……なぁ山根、ポラリスが倒れる直前、ポラリスは()()()()()()()のか、覚えてるよな?」

「えっと、僕がトレイニングをするために、ウェヌスに()()()()()()()の――!」

 

 もしかして、アレって本人が唱えても効果があるのか!

 

「そうだ。それを()()()()()()()()ことでようやくポラリスに接触できるようになった。多分こうだ」

「じゃあどうして、今までできていなかったんですか?」

「わからん」

 

 むむ。ただ、トリガーを考えるとこの仮説自体はおそらくそこまで間違ってはいなさそうだ。

 正直ウェヌスに繋がるたびにこうも倒れられたらめちゃくちゃ困るので、その理由は詳しく知っておきたい。

 

「ねぇポラリス。確認したいんだけどそのめがみさまと前に会ったことは?」

「ないよ」

 

 つまり、今回が初めてだということか。……よし、ものは試しだ。

 

「ポラリス、僕の後に続けて、もう一度言ってごらん。『失われし星の輝きよ』」

「失われし星の輝きよ」

「『果てしなくなつかしい大地に』」

「果てしなくなつかしい大地に」

「『最後の煌きを』」

「最後の煌きを!」

 

 ポラリスは、まだ目をぱちくりさせながら立っている。

 

「何も、起きないね?」

「そりゃ神だってそんなすぐに用事は無いだろうよ」

「つまりこれで、そのNovelty神の()()()ポラリスが倒れたって事が分かったと言うことですよ」

「もうちょい言い方ってものがあるだろ」

「いいんですよ、神なんて基本的にこっちの都合なんか気にせず気まぐれで定命の者を振り回す存在なんですから」

「お前の神感どうにかしてるぜ」

「でも、ギリシャ神話とか、神に気に入られた者が迎える結末はわりと大抵碌でもないことになってばかりじゃないですか」

「あの神話そもそもが登場人物ほぼ全員バッドエンドだろうが」

 

 まぁ確かにそうなんだけどさぁ。

 あの神話世界で平穏に生きる方法は神に見つからないこと以外にないのだ。

 

「で、そんな神嫌いのお前が考える対策はどうなんだ」

「そんなものはないですが?」

「は?」

 

 いや、だって、ねぇ。

 

「だって、無駄じゃないですか。僕達が()()()()()()()()()()()()()なんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

「お前神を信用しているのか信用してないのかどっちなんだ……」

「めちゃくちゃ信用していますよ?」

 

 とにかく、定命の者はただ目の前に突きつけられたものに対して、自らの全てをかけて、その守りたいもの、守るべきもののために戦い続けるしかないのだ。予め、突きつけられないようにすることなんてできっこないのだから。

 ポラリスの聞いたNovelty神の言葉を愚直に受け取ると、彼女はもう既に神に目をつけられてしまったということになる。その事実は変えることはできない。

 ただ、1つ分かったのは、ポラリスが気を失ったとして、あの青色の光がうっすらと覆っている間はNovelty神がアクセスしている蓋然性が高いということ。その間は、おそらくポラリスの命が直接は脅かされているという訳ではなく、それは今回のように大騒ぎする必要もないということだ。今は、それが分かっただけでも十分だと、僕は思った。

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