ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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24レ(終):Epilogue

「はああーっ!」

 

 僕は二刀流用の小刀という短い竹刀でもって、早乙女さんに殴りかかった。

 

「まだ甘い。力が乗ってないぞ」

「とりあえず当てればいいんじゃありませんでしたっけ?」

「それが出来るのであれば次を求めたくなるのは当然だろう?」

 

 そう、このタイミングで始めたのは、近接戦闘の訓練。ポラリスに発現したウェポンである、鉈を用いることを想定したものだ。

 それは、相手に攻撃を当てたり、または相手の攻撃を受け止めたり、あるいは受け流したりする練習だ。ちなみに避ける訓練は必要ない程にすでにできていると早乙女さんに判断された。どうして。

 

「今日はこのくらいにしておこうか」

「ありがとうございました」

 

 それから部室に戻ると、他の3人は既に戻ってきていて僕達を待っていた。

 

「さて、今日の伝達事項だが。本部から夏期合同宿泊研修の注意事項等がようやく送られてきたので共有したいと思う」

 

 グループチャットにドキュメントファイルが共有される。集合は各ユニット共にユニット部室に朝7時。……あれ?

 

「あの……」

「どうした? 山根君」

「合同宿泊研修って、()()()()()()()()()?」

 

 そう、資料を見返しても行先の情報がどこにも乗っていないのである!

 そう尋ねると、経験者3名がくすりと笑った。

 

「いい質問だね、山根君。北澤君もおそらく同じ事が気になっていると思うが、これが合同宿泊研修の特徴の1つだ」

「……はい?」

 

 何を言っているのかよくわからない。行先を隠す必要性がどこにあって、それがどうして特徴になるというのだろうか?

 

「もう少し噛み砕いて説明しよう。合同宿泊研修はユニット対抗のものだというのは前に話したと思うが、その種目自体はほとんどが3日目の朝にユニット側に通知される。ただし、毎回恒例の初日に通知される種目があるのだよ」

「第1種目、()()。最初の丸2日で、指定された集合地点まで移動する種目」

「そしてその地点や使える予算等は、当日朝にようやく通知されるのさ」

 

 つまり、行きあたりばったりで行程を組み立てて、そしてたどり着け、ってこと……?

 しかも、予算が決まっているときた。流石に常識的に辿り着けるよう考慮されて設定されていると信じたいけれど、当日朝に行先発表だと言うことを考えると早割系のが使えないからけっこう予算は厳しいものになるんじゃないだろうか。

 

「そういう訳だから、遅刻は厳禁で頼むよ。スタートの遅れが致命的な遅れになり得る」

「一応聞いておきたいんだけど、それって2日目に到着できなかったら……?」

「ペナルティは特にはないが、到着するまでに始まった第2種目以降が不戦敗扱いになって素点がゴリゴリ削られる上に、既に到着してるチームは敵が少なくて点を重ねやすくなる」

 

 それは実質ペナルティなのでは? 僕は訝しんだ。

 ちなみに、過去に遡れば昔台風の襲来が重なって交通機関が麻痺し、公道をローラースケートで走ってギリギリ時間通りたどり着けたユニットが不戦勝を重ねまくった珍事も無いわけではないらしい。なんだそれ。

 そんな状況でも競技が中断されなかったのは、ひとえにこれが緊急出動の訓練を兼ねているという面もあるからだとか。確かに、台風が来ているからといってクィムガンは待ってくれなさそうだもんなぁ。

 

「そういう訳だから、地味に見えてかなり重要な種目なのだよ」

「競技時間自体は一番長ぇけどな」

 

 なるほどなぁ。って事は、荷造りの段階からいろいろ考えなきゃだめだなぁ。

 

 ★

 

 週があけて、月曜日。

 今週の金曜日はもう夏合宿に出発してしまうので、べーテクさんのラボでの活動はない。そして、僕達が夏合宿に行っている間にべーテクさん達はミッドランドに出発してしまうので、しばらくの間ふたりとはお別れになる。

 

「おふたかた、お世話になりました。ミッドランドでもお元気で」

「やめたまえ。今生の別れじゃないんだ、遅くとも年末までには戻ってくるよ」

「その頃には僕は購買部に戻っているはずですから」

「購買部ならミー達だって普通に使いマスからね?」

 

 それもそうか。

 あそこじゃあまり業務中に知人とお喋りしたりするのは本当は良くないんだけど、暇な時間帯は黙認されている面もある――なんなら店長自ら来店した知人とお喋りしていた――し、まったくの他人に戻る訳ではない。

 

「それに、戻ってきたときのパーティーには招待するつもりだよ。だからそれまで、コダマ号と君とにポラリスを頼むよ」

「わかりました。1人のトレイナーとして、ポラリスのことは責任を持って面倒を見ます」

 

 僕は差し出されたべーテクさんの手を握った。

 

「べーテク。お土産話、期待してっから」

「もちろん、戻ってきたらたくさん話せることがあるように努力するよ」

「それとアドパス。こいつが出先で失礼な真似をしたときは遠慮なく殴っていいからな」

「任せてクダサーイ」

「ちょっと!?」

「冗談だよ」

 

 べーテクさんのラボは、一旦の休止期間に入る前に、また賑やかな空気に包まれたのだった。

 

「それじゃあ、君達も夏合宿、頑張ってね」

「そっちこそ、ダービーでの活躍を期待してるぞ」

「それからポラリス、僕が戻ってくるまでの間はコダマ号や山根君の言うことをきちんと聞いて、いい子にしているんだよ」

「うん!」

 

「それじゃあ、お互いに」

「「「「「ご安全に!」」」」」




【第一章:インターン篇 完】

 事前にお知らせしました通り、この先数ヶ月の間不定期投稿となります。




「仰せの通りに、Cycloped様。リロンチの手段は、ほぼ確立したよ」
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