午前8時。かわち号は定刻通り、北九州港新門司北埠頭に入港した。僕達は下船してフェリーターミナルの前から無料の連絡バスに乗り、山を越えて北九州市街へと向かう。
……なんで港から最寄り駅に向かうバスが山を越えているのだろうね? これ、逆に港に向かう段階で連絡バスが山を越えようとしたら誤乗を疑うと思う。
そして、ここ北九州から長崎へ向かうルートについて、連絡バスの中でようやく話が出てきた。どうも船の中では電波が悪くて調べられなかったらしい。
「さて、ここからどうする? 昨日と同じ切符で普通列車だけで行けば到着は15時過ぎ。だが予算は十分に余しているから特急に乗って13時頃には長崎に着く選択肢も有りだ」
「いくらくらい追加でかかるの? それにも依ると思う」
「船の中で電波がなかったのでネットきっぷの料金を調べられてないのだが、恐らく2000円強ほどだと思う」
成程、なら特急もアリじゃないかなぁ。
「さらにもう1つ。
「……リーダー、なぜそれを特急より先に言わない?」
「天神の乗換が10分しかない。間に合わなければ1時間待ちだ。そして今日は三連休の初日……渋滞に巻き込まれる可能性だってある」
ハイリスク・ハイリターンな乗り換え。
皆の顔を伺えば、佐倉さんは悪い笑顔をしているし、成岩さんも興味津々だ。
「確認したいんですけど、1時間後の便でも普通列車よりは早いんですよね?」
「1時間以上遅れなければ、だが」
なるほど。ならばいいや。
多数決をとると、僕と成岩さんと佐倉さんが高速バス、北澤さんが特急に票を投じた。
「そっか。みんなの意見がそうなら、アタシも高速バスでいいかな」
こうして、北澤さんの合意も得られたところで、集合の長崎までのルートがようやく確定した。
フェリーターミナルからの連絡バスを砂津で降りて、中谷経由天神行の高速バスに乗り換える。携帯端末をポチポチと弄って購入したWEB回数券は4枚綴りだったので、佐倉さんだけがサイバネICカードをかざして乗り込んだ。
バスは小倉駅前を経て、モノレールの下を南へと走る。小倉駅前ではほとんど誰も乗っていなかったこのバスも、この区間ではポツポツとバス停に停まって、その度にお客さんが増えていく。なるほど、小倉駅から遠い場所からの直通で福岡まで出る需要がメインの路線のようだ。
そうして小倉南から九州道に乗ると、バスは速度を上げて西へと走る。三連休の初日の午前というのもあり、少し渋滞しているのかなとも思ったけれど、むしろ混んでいるのは反対車線の方で僕達の乗るバスはそうでもない。おかげでスイスイとバスは進む。
途中少しのバス停に停まって、バスは数分だけ天神の高速バスターミナルに早着した。
「急ぐぞ。長崎行きのスーパーノンストップは4番乗り場だ」
「詳しいんですね」
「まぁ、地元だからな」
そう言葉をかわしながらトランクから荷物を取り出し、バスの転回場をぐるっと囲むような細い通路をやや早足で進み、乗り場の方へと向かう。ちょうど、長崎行きのスーパーノンストップが転回場に入り、乗り場へとぐるりと方向転換するのが見えた。
ギリギリのところで乗車の列の後ろに並び、スーパーノンストップに乗る。幸いにも空席はまだ残っていたようで、5人とも乗車することができた。
だけれど、順調なのはここまでだった。
ブレーキランプの、天の川。
天神を出たバスは、都市高速に乗り南へと進もうとした。そこで待ち受けていたのがこれだ。
バスに宿るノリモンが言うに、この先鳥栖ジャンクションまでのおよそ30kmの間、断続的に渋滞しているのだという。
少しずつ、ゆっくりゆっくり進み、太宰府から九州道に入って車線が増えてもまだ先は見えない。ただ、早乙女さん曰く止まっていないだけまだマシな渋滞なのだとか……。
結局、天神を出てから鳥栖ジャンクションを抜けるまで、1時間以上もかかってしまった。でも、その先の長崎道は嘘のように流れてスイスイと進む。
そして。
『長らくのご乗車、お疲れさまでした。間もなく、終点、長崎駅前に到着致します』
僕達を乗せたスーパーノンストップは、若干の遅れを巻いて30分弱の遅れで長崎駅前に到着した。
バスを降りるなり、早乙女さんがどこかへと電話をかける。
「もしもし? こちらウルサ・ユニット、只今長崎駅に到着、合流地点を指定していただきたく。……拝承」
彼は電話を切って、僕達を率いて動き出した。そういや資料には集合場所は往来の邪魔にならないよう適宜移動するので到着次第連絡するようにって書いてあったっけ。
そうして少し歩いて、僕達はJRN職員の下に辿り着いたのだった。
「お疲れさまでした。荷物はこちらで預かります。合宿所までの迎えのバスが次は15時の予定なので、それまでは適当に街中で時間を潰しておいてください」
第1種目・集合、完了――☆
それから僕達は駅ビルで遅めのランチを取るなどして時間を潰してから、迎えのバスで合宿所へと向かったのであった。