「お疲れ様。それじゃ、結果を確認しようか」
午前の5種目が終わって、全員が合宿所に戻ってきた。今はそれぞれのユニットに充てがわれた部屋で、再びユニットごとに集まり、昼食をとりつつ振り返りや作戦を練る時間だ。
「第2種目・マラソン、3位。ムドだったせいで30分弱かかっちまった」
「第3種目・遠泳、1位。他に船舶系のトレイニングが満足にできる者が不在で助かった」
「第4種目・剣道、4位。やっぱまだまだ精進しないとだね。ドラコのリーダーに負けちゃった」
「第5種目・バトルロイヤル、1位。なんか徹底的にマークされてましたね」
「第6種目・障害物競走、失格。ゴール自体は1番だから実質優勝」
「おいちょっと待てや、失格って何したんだお前」
佐倉さんの結果に成岩さんが突っ込む。僕も思わずそうしそうになってしまった。
「めんどくさかったから、ルート上空を《ストラトス・グレイ》で突っ切ったら審議の末失格になった」
「何やってるの……」
「お前後輩2人が好成績叩いてるのに一人だけそんなんやって恥ずかしくないのか?」
「別に」
成岩さんがキレているし、北澤さんも半分呆れたような目つきで佐倉さんを見ている。
うん、これに関してはどう考えても佐倉さんが悪い。当の本人はどこ吹く風だけど……。
「終わってしまったことは仕方あるまい。明日以降、残る10種目の割当を建てようか」
成岩さんはそう言うと、今朝方渡されたタイムテーブルを取り出した。
朝は5つある個人種目の集合時刻が異様に早かった――遅刻ユニットを弾くためだとトシマさんが言っていた――ためそれだけでいっぱいいっぱいになってしまっていたが、今なら時間にだいぶ余裕がある。
残る種目は14。うち4種目は5人全員で参加するもので、のこる10種目は2人種目と3人種目が半々、つまり各ユニットのトレイナーの数とおなじだけ。
そして、これ以降の種目ではさっきの1人種目のような同時開催がなくなり、全員で競技場所に行って非参加者は応援に回るという形態になるらしい。なるほど。
「……ところどころ変なの混じってませんか」
「そういうものだ」
まぁまともに見える競技でも基本的にトレイニングが許可されているせいで局地的におかしなことになるのは目に見えてはいるのだけれど……。
各ユニットメンバーが担当すべきは2人種目2つと3人種目3つ。正直得体の知れない牽引とかいう種目とか、どう考えても嫌な予感しかしないデュエルとかいうのは避けたいのだけれど、まぁそんなにうまい話はないわけで。
みんなで話し合った結果、僕の担当は2人種目は模擬戦とスワンボートレース、3人種目はサバイバルクイズ、デュエル、ユニットレースになった。……なってしまった。本当にデュエルって何すんの? そもそも言葉の意味的には3人一組でやったらその時点でデュエルとは言えないのでは……?
だいたいなんでスワンボートレースとかユニットレースみたいななんとなく何をするのかわかるような競技にはちょっとした補足が記されているのに最早謎でしかない競技は名前しか書いてないんだ。
「眉間に皺が寄ってるぞ」
「謎の競技に突っ込まれたら普通そうなりますよね?」
「安心してほしい。当日朝には詳細が明かされる」
いや、遅いでしょ。まともに準備もできないって。
そう反論したら、JRNの夏合宿はそういうものだから慣れろという旨の回答が戻ってきてしまった。そう言われたら反論がしにくくなってしまうのでずるい。実際、本部の意図はわからなくもないからだ。
これも集合の時と一緒で、おそらくはその場での情報収集の能力とか判断力とかを育てる一環なんだと言われれば、多分そうなんだろうと納得してしまう自分がいる。
まぁ、納得してももやもやすることには変わりはないのだけど……。
「山根。前も言ったと思うけどよ、事前にああだこうだ考えるのも必要だが、そればかりに固執してっといつかは潰れるぞ。
「楽しめって……。一応勝負ですよねこれ」
「確かに勝負だ。俺だってやるなら全力で挑むし、勝ちたいとは思うさ。でもよ、それが全てじゃねえ。聞くぞ山根、それに勝って得られるものはなんだ? それは、
「それは……」
「そういう事だ。いいか、夏合宿はもちろんここで得られるものもあるが、半分余興みたいなもんだ。一応得点とか順位とかはつけられるけど査定に響くものじゃない。だから全力で楽しめばいい」
ま、真剣なのは悪い事じゃねぇけどな。成岩さんはそう言った。
楽しむ、か。
「そそ。私みたいに」
「お前はもう少し自重しろよ?」
「えー」
「今さっき失格叩きつけられてたのはどこのどいつだよ」
……なんか悩んでたのが莫迦らしくなってきた。
言われてみれば、特に勝っても貰えるのは得点だけなんだから、何日も前から対策を取る必要なんかない。競技詳細が伏せられているのも、きっと過度に構えるなというメッセージなのかもしれない。
もちろん、その競技中となれば話は別だ。本気できちんとやらないと失礼だから。
メリハリをつけて、詳細を明かされるまではあまり考えないようにしよう。午後には第7種目の枠が6時間以上もある狂気のようなクイズ大会が控えているし、そこまでもやもやを引きずってしまうのはよくない。
微妙な悩みを強引に吹っ飛ばしたところで、僕達は昼食へと向かった。