『それでは第21問です! ラッチはノリモンもクィムガンも超えることができず、唯一トレイナーのみが出入りすることができますが、これはなぜでしょう』
クイズを解き続けて、最後まで体力や集中力が持つのか不安になってきた頃。クイズ大会は21問目に入って、問題の傾向がガラリと変わった。
今までのクイズは基本的に短答式と呼ばれる、答えを単語で記入するもの。それに対して、この問題では急に答えを文章で記入する記述式の問題に変わったのだ。
まぁ、問題自体はまだ難しくない。クィムガンに逃げられないようにするためには、
ちなみに、佐倉さん曰くノリモンも出入りできて、なおかつクィムガンの出入りを許さない理想的な新型ラッチの開発は今でも続けられているらしい。が、20年かけてもそれができる未来が見えないという茨の道なのだとか。
閑話休題。
表現を話し合ってまとめて答えれば、流石にこの問題を間違えたユニットはいなかったようで、全てのユニットに正答の判断が下された。
そしてこの第21問以降、全ての問題がこのような記述式に変わったようで、回答に用意された時間も、そして採点に要する時間も伸びる。最初の20問は合わせて1時間程度だったのに、その後は1問あたり10分弱もの長い時間を要している。
そして、記述式のクイズが始まるとどうなるのかって?
そのターニングポイントとなったのがこの問題だった。
『第24問、JRNの前身、安全輸送管理委員会はなぜ新小平の地に建てられたか。答えよ』
この問題、一応僕達のユニットはまともに考えていた。軽くではあるけど僕達がスクールで習った話でもあったからだ。
そもそも安全輸送管理委員会が最初に発足した敷地の一部が、現在のトレイナーズスクールのある場所だからだ。その敷地の元を辿れば、戦争が終わって使われなくなっていた旧帝国陸軍の経理学校。そして、その後そこだけでは手狭になって、国立武蔵療養所が国府台へと機能を集約した跡地へと拡張移転したのが現在のJRNの敷地。
だけれど。
「元の敷地が何だったかはスクールで習いましたけど、どうしてここに来たのかは……」
「確かに、アタシ達が教わったのは、新小平に昔あったのが療養所だったって話だけだよね」
そう、肝心の
そして、早乙女さん達もその答えを持っていなかった。だが、何か思うところがある人はいた。
「でもよ、新小平って立地はけっこう便利だぜ? なんたって
国立ら国分寺、北府中というのは、それぞれ近所の鉄道系の研究所がある場所だ。特に国立のとは、元が国鉄に由来するだけあってJRNとしても交流は比較的深い。
つまり、彼が何を言いたいかといえば……。
「近所に研究所がある国有の空地だったから、ってこと……?」
「ありそう」
こうやって、ウルサ・ユニットはまともな答えを用意できた訳だ。訳なのだが……。
『それでは各ユニット、解答を上げて下さい』
司会は掲げられた解答を読み上げる。『そこに空地があったから』『ダーツで決めた』『偉い人の故郷が新小平だった』『運命』などなど……。僕達と似たような『鉄道技術研究所に近いから』といった真面目な解答や、真面目にやろうとしたけれど途中で撃沈してしまったと思われる解答もあるけれど、いくつか大喜利としか思えないような解答が混ざっていたのだ。
そして、この第24問でそのような風潮ができてしまったのか、それ以降のクイズでは少しずつ大喜利が増えていった。得点圏に入らないとわかったユニットが、次々とわからない問題で大喜利を始めたのだ。
もちろん彼らとて、本気なのでわかる問題には普通に答える。なので簡単な問題だったときは真面目な空間だ。
だが時折現れる難しい問題になるとどうなったか? 大喜利が始まる前はかなりギスギスしていたのだが、大喜利解答が増えてくるにつれてだんだんと和やかな雰囲気になってきて、笑いが聞こえてくるようになってきた。ウルサは早乙女さんがJRNやノリモンについての、北澤さんが教養の知識を広く持っていたため僕達どうしようもない3人が大喜利をしている余裕はほとんど無く、本当に手も足も出なかった数問でしかさせてもらえなかったけれど……。
ちなみにこの現象、一応早乙女さんに聞いてみれば毎年途中からこうなるらしい。ただ、最初にいつ大喜利を始めるのかは毎年波があるらしく、今回の第24問でのスタートは平均的な水準なのだそうだ。
そして、ワイワイガヤガヤとしたクイズ大会の時間は、嘘のように早く過ぎていった。正直、体感時間では前半の短答式20問と、後半の記述式30問がだいたい1対2くらいだった程だ。実際には5倍近い差があるのに。
なるほど、6時間をダレさせないための、大喜利の許容。そういうのもあるんだなぁ。
そう思いながら、僕達は誘導されるままに夕食会場へと向かった。全ユニットを交えた上での立食パーティーの裏で、このクイズ大会の集計が行われて、そしてパーティーの途中で結果発表があるのだという。
ちなみに、クイズ大会の間に最後まで遅刻していた残りの2つのユニットもようやく到着したそうな。