ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

91 / 306
回3レ:パーティーにて

「お久しぶり、期待のルーキー!」

「えーと、ドラコのパレイユの……」

「そういえば名乗って無かったね。ぼくは中泉。少し、時間をもらってもいいかい?」

「別に構いませんが……」

 

 パーティが始まるなりこちらに近づいてきた中泉さんは、手に持つお皿を机に置くとそう言って名刺を差し出した。

 

「ごめんなさい、僕はまだ名刺を用意してないんです」

「いいよいいよ、そんなの気にしなくたって。それより、ぼくもさっきのバトルロイヤルに参加してたから見てたんだけど、キミ、また腕を上げたね?」

「僕はまだまだ新人なんですから、腕は上がってない方がまずいと思いますけどね」

 

 あ、いたんだ。そりゃ5人のうち誰かはいたんだろうけど、正直あの時は遠くから狙撃していたから全員の顔が見えていたわけじゃなかった。

 

「気づかなかったんだ、そういうところはまだ未熟で安心したよ」

「遠かったのと、割と両隣とあの雷の人しか見てる余裕が……」

「あはは。うちのバランスのも似たような事を言うことあるけど、それで勝てちゃうんだから遠距離主体ってすごいよね。ちなみにあの雷、カンケルのサイクロね」

「カンケルって……」

 

 確か、前に現場に出たとき僕が事故で誤射をしてしまったところだ。なるほど、そりゃ《桜銀河》の危険性を強く認識している訳だ。

 

「なるほど、狙われてた理由がよく分かりました」

「やっぱり把握してなかったんだ。って事は、このままでもまだ伸び代があるってことでしょ? 妬いちゃうな」

 

 なんだろう、背中がむず痒い。

 僕としては、仲間を巻き込むリスクが異常に高い今のまんまじゃ全然ダメだと思っているのに、外からはそれがあまり見えずに圧倒的な火力だけで判断されてしまうようだ。今回のような味方のいないバトルロイヤルなら、それを心配する必要も全くないからなおさら。

 

「おだてても何も出ませんよ……」

「そうかい? でも、これだけは伝えておくよ。少なくともぼく等ドラコはウルサに期待してる。キミ達新人2人にね」

「それはどうも」

「あの様子だと、この合宿終わった頃には、ぼく等だけじゃなくてJRNみんなそうなると思うよ?」

 

 もしかしてこれアレかな? 目立つなよっていう威圧?

 

「手は抜きませんからね?」

「ん? ……あ! ごめんごめん、そういう意味じゃないんだ、単純にぼくはね、キミ達には頑張ってほしいし、みんなに認められるべきだと思ってる」

 

 中泉さんは両の掌をつきだして、高速で振りながらそう言った。

 

「本当ですか?」

「本当だよ! だいたい実力派が少ないとお給料変わらないのに手当のわりにめんどくさいタイプのお仕事が大量に舞い込んでくるからね。同じ位強いユニットがあってほしいし、そうだと知られてほしいってのがぼく等の本心だし、オヒュカスとかペガススとかもそう考えてると思う。いずれにせよ、実力あるルーキーを潰すのはぼく等にとっても、そしてJRNにとってよくない」

「だいぶぶっちゃけましたね……」

 

 特にお金周りの話。

 だけれど、彼は僕がそう漏らしてもそれをさらりと受け流して飄々と言葉を続けた。

 

「まぁね。そもそもぼく等がクィムガンの対応に当たったって、外からじゃラチ内の様子は見えないでしょ? だからこの仕事に奪われるべき名誉なんてものはない。だったら、自分が楽するためには後輩が育っていくのを邪魔するなんてとんでもないよ」

 

 それを聞いて、僕はふと、気になった。

 

「……失礼なことを聞くかもしれないんですけど、なんでこの仕事続けてるんですか?」

「なんで、ねぇ。大きなニュースに()()()()()()()()()()()()、かな。ぼくはね、ただ悪いニュースを見たくないだけの大人気のない身勝手な男だよ。だから目の前に悪いニュースになりそうなことがあったら全力で潰す。それを繰り返してきただけ」

 

 一瞬だけ、少しだけもの悲しそうな顔が視界に映る。だけどすぐに元の飄々とした雰囲気へと戻っていった。

 

「ま、だからこそこうやって、楽にやるために強くなろうって思えてるんだけどね。……そう言うキミは、なんでトレイナーになろうと思ったのかな?」

「昔の約束ですよ。僕が一番のトレイナーになったら、また会えるって約束です」

 

 そう答えると、中泉さんは急に黙り込んでしまった。

 あれ、なんかマズい事言っちゃったかな。そう不安になりかけたところで、ようやく声による反応が戻ってくる。

 

「そっか。じゃあ、キミはその人と会えたらトレイナーをやめちゃうのかい?」

「それは無いと思います。手伝いたいんです。僕に広い世界を見せてくれた、あの人の夢を。全てのノリモンが、幸せになれる世界を作るっていう夢を」

()()()、か。難しい夢だね。でも、キミならできるかもしれないね」

「どうしてそう思ったんです?」

「こうやって、落ち着いて話してみて感じたんだ。キミの魂は美しいってね。その純粋な心を忘れない限り、きっと夢に近づけるよ」

「……はい! がんばります」

「その意気だよ、ファイト!」

 

 その後僕達はもう少しだけ言葉を交わしてから、それぞれのユニットへと戻った。

 それから早乙女さん達の知り合いだろうか、ブラブラとやってきた始めましての他のユニットの人達を交えてしばらく歓談していると、ようやくクイズ大会の結果発表があった。僕達は第5位で、上からオヒュカス、ドラコ、ペガスス、サギッタリウス、ウルサの順だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。