ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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あけましておめでとうございます! 2022年、出国はいつから解禁されますか?
そしてC99お疲れ様でした。新刊からこの小説に飛ばされてきたみなさん、そういう事ですのでよろしくお願いします(?)


4レ中:バックスリップ

 ウルサの2人が、前を走るサギッタリウスの2人を本格的に抜こうと仕掛けたのは、スタートからおよそ7kmほど経った緩やかなカーブでの事だった。

 

「行くぞ」

「承知。――《ホライゾン・レッド》」

「――《早々来々(サックハヤキタル)》!」

 

 瞬間、2人の束ねられた足が爆ぜる。そして地面に突き刺さると、土の塊が勢いよく後方へと飛んでいった。

 ……これは。

 

()()()()()()ね……」

「地面が耐えられなかったか」

 

 土が抉れてしまう。それは、土と足との間の許容される粘着力を超えて力をかけてしまうことにより発生する現象だ。立ち位置としては、軌道上における空転と近いだろう。

 これ、自らの加速のために使うべき力を土の加速のために使ってしまう行為なので、本当はあまり好ましくないのだ。

 

 だけど、この2人は強かった。

 それは逆に力強く地面を蹴ることができるという証明でもある。そして2人は少し力を抜いたのか、数歩ほど進んでしまえば2人の足元からえぐれる土はかなり少なくなって、そして加速度が高くなっているのが横から見てもすぐにわかった。

 それはまるで、()()()()()()()()()()()()()()、見事なリカバリーだった。

 

 そして2人は、いともたやすく左カーブの外側からサギッタリウスを追い越して2番手に立った。

 サギッタリウスの2人も抜かれまいと加速をしていたのだが、それ以前に成岩さんから突っつき回されて自分たちのペースを保てなくなったのだろう、思うように加速できていない様子だ。1メートル、2メートル、その差はどんどん広がっていくばかり。

 ウルサ・ユニットが第2集団から完全に抜け出して、単独での気ままな走りを実現するまでに、時間はそうかからなかった。

 

 そもそも、最近気がついたことであるが、どうもウルサ・ユニットのメンバーのキールは、高速走行に縁のある車だったノリモンが多い。僕のキールのクシーさんは新幹線だし、早乙女さんののコクサイさんは特急用の機関車だ。佐倉さんののスカイさんと北澤さんののオトメさんはどちらも特急電車だが、前者は車だった頃に埼京線を時速160キロメートルでぶっ飛ばした逸話をもち、後者も私鉄特急の癖して東海道線を爆走した伝説の車両の姉だ。

 こうなると、成岩さんののベーテクさんは逆にローカル線用の一般気動車だったらしいので、すっごく失礼なことを言えば、それがものすごく場違いのようにも思えてくる。実際はベーテクさんもノリモンに成ってからはかなり速く走れる方に分類されるノリモンなんだけど。

 

 つまり、何が言いたいかっていうと。

 スカイさんとベーテクさん。そのふたりの力を纏っている佐倉さんと成岩さんが、周りを気にせずに気ままな走りをすると、普通に速いのである。

 正直、それ以上に速いドラコが路面状況をズタズタにしながら爆走してさえいなければ、最初っから一番前を独走できるだけのポテンシャルはあったんじゃないか。今目の前にあるのは、2人のそんな走り。

 

「いいや、それは違う。路面もあるが、それならわざわざサギッタリウスの後ろに甘える必要はない」

「じゃあなんで……?」

「サギッタリウスの2人とて、そんなに遅くはない。だから前に出ると普通に追いつかれる可能性が高いだろう。体力に余裕があるうちは、あのドラコ(莫迦共)のように圧倒的でない限りは、真後ろについていって空気抵抗を減らして速度を上げた方がいい」

 

 バックスリップ。

 鉄道界隈では先頭車両の形状を検討するときに頻出する、空気抵抗に関する有名な物理現象の1つだ。

 基本的に何かが移動するときは前にある空気をかき分けて進む。故に、そこに圧力の変化を生じさせてこれが空気抵抗となるのだ。

 そして、その圧力の変化は進行方向の後ろ側でも同じように起きる。もともと移動体があった場所は前で押しのけた分気圧が下がるから。このとき発生する空気の渦が騒音となるから、先頭形状はこちらも考えなきゃいけないよね、というものだ。

 

 そしてもう1つ。バックスリップに関して、鉄道ではミニ新幹線を併結する時くらいしか聞かない言葉ではあるが、スリップストリームというものもある。高速道路で前を走るバスやトラックなどの大型車両を抜かそうと追越車線に入ったら、急に大型車両が加速したように錯覚するアレだ。

 これはバックスリップの発生する気圧の低い場所なら、より後方から減圧された空間へと空気を吸い込もうとする力が働くというもの。さらには、かき分けるべき空気の量が減るので空気抵抗もそれに従って減るので、とても走りやすいのだ。

 

 佐倉さん達は、これを利用して力をセーブしながらサギッタリウスの後ろにつけ、そしてサギッタリウスがそれを利用できるだけの余力がなくなるまで待っていた。成岩さんはそれが早く訪れるようサギッタリウスを後ろから突っついていた。早乙女さんの見解はこうだ。

 

 そして事実、加速したウルサにサギッタリウスはそのスリップストリームを利用できるほど近づくことができずに、ウルサの独走――ドラコのそれほどではないけれども――は始まった。

 二人三脚レースはまさに中盤。ちょうどその頃、ドラコがゴールした旨が無線で告げられて、ウルサの2人がこのレースでの正真正銘の先頭に変わったのだった。

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