ノリモントレイナー:輸送の生命   作:だぶるすたぁ

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回4レ:審議

 2時間ほどして、全てのユニットがゴール又はリタイアした。

 この種目の結果は、決定するまでにいろいろと――本当にいろいろと議論があったけれど、結局到着順にドラコ、ウルサ、サギッタリウス、ゲミニ、ドラド……というものになった。

 

 ちなみに、ここでおきた議論というのは、当然の事ながら主にドラコの悪行のことである。流石に路面を凍結させて滑走し、後続の走行を妨害するのはルール違反ではないのか。このような意見が複数の、決して少なくないユニットから出たからだ。

 そしてその最中、局所的に氷を溶かしてさらに後続に負荷をかけたウルサも槍玉にあげられてしまった。だがこちらはドラコを訴えたユニットの中でも評価が割れ、学級会の中でも最終的には諸悪の根源たるドラコが悪いという結論になって、お咎めなしとなった。

 

 これらに対して、本部のくだした判断はこうだ。

 

『路面の凍結自体は、自然現象でも十二分に起こりうる事態であり、それを引き起こしたとて走行妨害にあたることはない』

 

 つまりは、路面凍結対策をしてこなかった方が悪い、という判断だ。

 理屈は分からなくもないが、どうして夏合宿で路面凍結対策をしなければならないのか。理不尽だ。そのような声も上がったが、この判断が覆ることは無かった。

 

 それはなぜか。なまじっか対策をしてしまったユニットが存在してしまったからだと、本部は回答した。そう、《ホライゾン・レッド》を繰り出した佐倉さんだ。そしてウルサと同様に氷をものともせずに抜け出して第二集団を形成したサギッタリウス、ドラド、ゲミニ、エクレウスの4ユニットに、氷を生み出したドラコを含めた計6ユニット。これは参加する全24ユニットの4分の1にもなるほど大きく、対策が無理だったと断定することはできない。そう判断された。

 真の勝者には、選ぶ権利がある。そしてそれが選んだ、どれだけ一方的で理不尽な戦場ですらも立ち向かい、対応して食らいつけるのが真のノリモントレイナーであり、そもそものJRN本部の描くノリモントレイナーの理想形。その理想形は、突然路面が氷になったとて決して怯むことなく駆け抜ける。それに近かったユニットを優遇すべき。これが本部の理論だ。

 

 もちろん、後ろのユニットはこれにも反駁する。いくら権利があるといえど、その濫用は許されない。そもそも、二人三脚というのは、他からペースを乱されればすぐに転倒の危機のあるレースなのだからと。だが、ウルサとサギッタリウス、そしてゲミニなどの第二集団の起こした競り合いがまた後ろへの再反駁のタネにされた。

 こうなってくると、後ろの目は原因を作ったドラコではなく、普通に走ってしまった第二集団5ユニットへと向けられる。――()()()()()()()()()()()()()()()()()と。言いがかりに近いと思う。

 だが、思い出してほしい。第二集団の中で転倒しなかったのはサギッタリウスとゲミニの2組のみで残りの3組は転倒した。しかも、ゴールしながら転倒したウルサはともかくドラドは転倒したにも関わらずその後も懸命に走り、5位を死守したのだ。そんなドラドの頑張りすら、なかったことにするのは如何なものだろうか? これは惜しくも転倒し、最終的には9位となってしまったエクレウスの走者の言葉だ。

 そして午前中いっぱい似たような議論が延々と繰り返されて、結局は全ユニットお咎めなしの到着順通りの結果が採択されたのだった。

 

「2人も理解できただろう? この夏合宿において、各競技時間が長くとられている理由が」

「痛いほど理解できました」

「なーんか、醜い争いだったね……」

「醜い、か。確かにそう感じるかもしれないが、あれだってきちんと意味があるのだよ。議論が起きるということは、その最中に嫌でもそこにあった好プレーや対策手段が共有されることになるだろう?」

「あ、そっか」

 

 なるほど。

 そもそもがそういう目的の合宿なのだから、議論を発生させて各ユニットにフィードバックを起こしたほうがいいって魂胆なのか。

 

「特にこれからの2人、3人種目はまぁ半分弱はこうなるが、その議論から学べるものも多い。だからこそ、君達には発言はしなくてもいいので参加して、議論を聞いておいてもらいたいと思っている」

「わかりました」

 

 それから僕達は、競技に参加していた2人を交えてのランチタイムに入る。

 

「成岩君、最後だいぶ無茶をしたね君」

「ああでもしなきゃ勝てなかったんだ。サギッタリウスの奴らの事はリーダーもよく知ってるだろ?」

「勿論だとも。先程話をした際に君の事を高く評価していたよ」

「そりゃどうも」

 

 成岩さんはあれだけ派手に転倒したにもかかわらず元気そうにそう返す。シールド様々だ。

 だが、もう1人の走者である佐倉さんは不満があるようだった。

 

「いや、シールドあっても衝撃は来る。怪我はしなくても痛いものは痛い。成岩は反省すべき」

「悪かったって」

「カステラ一本で許す。西海バス停近くの」

「えらく具体的だな……。明日休養日だし買ってくるから」

「やった」

 

 ……これ最初っからそんなに怒ってなかったやつだよね? コソコソと北澤さんとそういう話をしていると、向こうから言うなよという目線が飛んでくる。面白そうだし黙っとこ。

 

 そんな感じで振り返りを交えたり、あるいは次の種目――僕と北澤さんで出る、模擬戦。それの注意点だったり他ユニットの動向だったりを再確認したりしながら食事を終えて、僕達は次の種目の行われる場所へと移動したのだった。

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