午後、合宿所の前。昨日と同じように少し開けたところにラッチが今日は2つ張られている。これが第9種目の会場だ。
さて、今回の模擬戦のルールだけれど、少し変則的だ。まず、各ユニットの2人は10メートル以上離れられず、離れたらリタイア。そして、片方のシールドが全て削れたらその時点でそのユニットはリタイア。つまり、どちらもが最低限自分の力で自衛する術が無かったら負けなのだ。
なんで僕をここの担当にしたのさ、早乙女さん……。逃げたらリタイアじゃないですかこのルール。一応、スタートがラチ内なので、予めトランジット・トレイニングをしてからスタートできるところだけは有難いルールだけどさ。
「ルール聞いたら勝てる気がしなくなってきた……」
「いや、いけるでしょ?」
「過大評価しすぎですよ……」
だって巻き込んだら完全アウトだから《桜銀河》は使いにくいし、ポラリスとのトレイニングで出てくるナタの扱いもまだ完成されていない。もちろん、できるところまではやるけどどうせ足を引っ張るだけになると思う。僕の得手不得手はけっこうはっきりしてるのだ。
「大丈夫。最悪アタシが守るから」
「……なんだか自分が情けないなぁ。お願いしますよ、委員長」
「もう委員長じゃないって言ってるよね? ……まぁいっか」
とりあえずこの模擬戦はなるようになってもらうしかない。合宿終わったらナタの扱いを早急にマスターしよう。そう心に決めた。
そして北澤さんの引いた
そしてしばらく待っていると、グループ1の入っていったラッチが開けられた。どうやら終わったみたいだ。
それから審判役の準備などを挟んで再びラッチが張られ、僕達グループ3の予選の準備が整う。
「行こっか」
その声に誘われて、僕達はラチ内へと入場した。そしてすぐさまトモをポラリスにトランジットしてから、事前に聞かされていた通りのスタート位置へと向かった。
足回りのパーツに取り付けられていた鞘からナタを引き抜く。普通はウェポンはスターかポートに紐付いているものなんだけれど、ポラリスの場合はなぜかトモにひっついているので、機動力という面でも好ましい。これは、ポラリスは車だった時から重いものを床下に集めて重心を下げる設計思想だったから、重いウェポンもここについているんだろうとベーテクさんが推測していた。
自分達の準備が終わって辺りを見渡せば、残りの3つのユニットもスタート位置へと入るのが見えた。エキステーションがそんなに広くないので隣のユニットもけっこう近く、恐らく200メートルほどしか離れていない。こりゃやっぱり《桜銀河》は間に合わないか。
そして少しだけ間をおいてから審判が合図代わりの花火を打ち上げて、戦いの火蓋は切って落とされた。
3つのユニットが、皆揃ってこちらの方へと駆け出す。だけれど、うち1つ、左のユニットはその段階で離れすぎてしまったのか、届く前に失格を告げられてしまっていた。
「少し時間もあるし、迎撃の準備をしよっか。《銀桜花》」
北澤さんがそう宣言していつものスモールソードを振るうと、剣先が桜の花びらを描くように舞い、軌跡が宙に残る。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、そしていつつ。軌跡が閉じれば、その内側に光は染み込み、桜の花が開く。
そして彼女がスモールソードを前へと差し込めば、その花は鍔となり、刀身は力強くも美しく桜色に輝いている。
今回の僕達の戦法は、積極的には動かないものだ。ドッシリと構えてやってきた攻撃を受け流したりしながら、近寄ってきた相手を北澤さんが斬りつけるというもの。僕が集中的に狙われるであろうことは想像に難くないので、このチョウチンアンコウめいた作戦が採択されたのだ。
さて、距離的に近かった右のユニットが先にこちらに到着し、攻撃を仕掛けてくる。見た目だと、そのウェポンは日本刀とハンマーだ。
「喰らえいっ!」
降り下ろされた日本刀をナタで受けつつ後ろに下がる。すると日本刀と地面との間を大鎚が通過!
そうして当たるものがなく、反動を得られずによろけたハンマー使いに北澤さんの《銀桜花》を纏って輝くショートソードが直撃し、そのユニットはリタイアすることになった。あと1組。
「……北澤さんの使ってる技も大概威力おかしくない?」
「アンタのとこの《桜銀河》と同系統ってオトメ号は言ってたけど?」
名前似てるしそれはうすうすそんな気はしてたけど。
だとするなら、その特性は僕の知るものに近そうだ。長く発動し続けていた方が強い。《桜銀河》の
そして、間違って味方に当たったときにどうなるのかも恐らく同じだ。まぁ《桜銀河》みたく射程距離が長いわけじゃない分そのあたりは安心できるけど……。
そして、僕の想像通りに《銀桜花》はやってきたもう1ユニットの片方のシールドもあっという間に割り、僕達の決勝進出を決定させたのだった。