第9種目・模擬戦の決勝戦は、ウルサの勝利で終わった。
「信っじられない……」
「流石に僕も、こうなるとは思いもしませんでしたよ……」
そして僕達は、超絶の不完全燃焼である。
何事が発生したかといえば、スタートした瞬間4ユニットが一斉にドラコに殴りかかって僕達はノーマークになったのだ。そしてその外側から《桜銀河》でまとめて終わらせてしまうことができてしまった。本当に一方的に勝ってしまったのである。僕も北澤さんも一歩たりとも動かずに。
正直、これが起きれば一瞬で終わってしまうのだから、それをさせないように動くはずだと僕も北澤さんも読んでいたのだけれど、現実は午前中の
「そもそも、昨日のバトルロイヤルでどのユニットも《桜銀河》を見てるはずですよね」
「あっでも、パウォとウィルゴは遅刻組じゃなかったっけ?」
「あー……」
遅刻かぁ。そういえば昨日の午前って夏合宿参加ユニットの3分の1にあたる8ユニットがまだ到着できていなかったんだっけか。
遅刻で参加できない種目があると、そこで得られるべき得点だけではなく得られるはずだった情報アドバンテージも失って、残酷にもこんな形でより後の種目まで響いてしまう。
そう考えると、だいぶ酷いルールというか日程だよなこれ……。昨日のお昼の時にいろいろみんなから情報もらえたからわかるけど、情報アドバンテージってけっこう大きいぞ。
それから、暫くして他の3つ、予選の2位から4位のそれぞれの順位が集まって行われたラッチも開けられて、少しして結果が発表された。今日も昨日と同じように短い間隔で一方的に全員を薙ぎ払ってしまった訳だけれど、2位以下は予選の際の実績できちんと決まる。なので再試合は行わず、上からウルサ、ドラコ、パウォ、リュガ、ウィルゴ、カンケルの順となった。
「お疲れ様。……なんか勝ったのに不満そうだな」
ユニットに戻ると、まず成岩さんが出迎えてくれたのだが、どうやら僕達は一目見てわかる程度には渋い表情をしていたらしい。
「完っ全に、不完全燃焼!」
「一方的に勝つのって、こんなにも虚しいものなんですね……」
「お、おう。何があったのかは知らんが……」
「後で録画見たらいいと思いますよ」
「たぶん笑いしか出ないんじゃないかな」
それからしばらくして、参加した全ユニットに10試合の録画データが送られてくる。すぐさま部屋のテレビに端末を繋いで、その録画データのうち、問題の決勝戦を再生した。
開始するや否や、攻撃が飛んでくると予想して構える僕達。それを無視するかのごとく、僕達の向かいのドラコしか見えていない4ユニットが駆け出して、そして僕の困惑している顔が写されている。情けないからそれは写さないでほしかったなぁ。
その後、僕と北澤さんが少し話――桜銀河を打つべきか否かの軽い相談――をしているのが写ってから、《桜銀河》で5ユニットがまとめて薙ぎ払われるところまで、全てがその録画データにのこされていた。
そして案の定、それを見て成岩さんは状況を理解した瞬間爆笑していたし、佐倉さんは苦笑いで、早乙女さんは乾いた笑いを発しながら頭を抱えている。
「山根君」
「……はい」
「君の行動は正しい。スキを見せるのが悪いというのは、私からも言っておこう。……だが、これは予選の映像ではないのか?」
「6ユニットいる。間違いなく決勝」
「午前中に路面を凍らせた奴はこの種目には出てねーと思うんだが、どんだけヘイト集めてたんだ」
そういや、他のあの時第二集団にいたユニットは予選で負けてたんだな。決勝に上がってきそうなサギッタリウスはまさかの予選でドラコにぶち当たってたし、エクレウスとゲミニはグループ6でカンケルに負け、ドラドはグループ4だったからウィルゴの前に沈んでいた。つまり、決勝戦に残っていたのはみなドラコに敵意が沢山だったという訳だ。
「この4ユニットなら確かに複数纏まればドラコに勝ちうる力は有しているが、それでもそのドラコに単独で一方的に勝ちうる山根君を放置して向かうのは理解できんな」
一方的にって、うーん……。
やっぱり過激な技だよなぁ、《桜銀河》って。
「あの、1つ相談いいですか?」
「なんだい、言ってごらん」
「僕はこのまま《桜銀河》を
正直、対トレイナーの模擬戦では最強であることは疑いようがない。だが、対クィムガンならどうだろうか? 当たれば強いが誤射リスクの高さが長所が台無しだ。
そんな理不尽な技を模擬戦で使って一方的に勝っていては、僕はそのうち駄目になってしまうし、相手のためにもならないのでは?
それに、今までならば《桜銀河》しかないという言い訳だってできた訳だけれど、今となってはポラリスとのトランジット・トレイニングでナタがある。ならば一度僕は《桜銀河》を封印した方がいいのではないか。昨日今日であまりにも無双してしまってそう感じざるを得なかった。
「意味あるんですかね、《桜銀河》を使った模擬戦って」
「難しいな。何度も伝えているが、私としてはいつクィムガンが《桜銀河》のような技を使ってくるかわからない以上、それに対する対応策は必須だと思っている。故に無駄とは言いきれない」
「でも、結局最初の糸口が見えるまでは無駄じゃないですか」
「それはそうだ。だからこそ君次第とも言える。君が使うべきではないと感じるのであれば、無理して使う必要はない。ただ、どちらにせよまだ君は考えるには早すぎる。ナタの扱いが十分でないがゆえ、しばらくの間はそれを
……うーん、たしかにそうなんだけど、《桜銀河》になれてしまうとそれが基準になってしまっていつまでも必要だと感じ続けてしまうような気がする。
これ、本当にどうしようねぇ……。