ギャルですけど、キャンプします?   作:白黒パーカー

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0話:ギャル時々、志摩リン

 

 

 自分の世界に踏み込まれるのはあまり好きじゃない。嫌いではないけど、苦手。そう思ってしまう理由はきっと、そこが心の底から大好きで、安心できる場所だからだ。誰だって人に寄り付かせたくないテリトリーは存在するはず。

 そんな世界にずかずかと乗り込んでくるバカもいたけど……。

 でも、あいつがいたからこそ、広がった世界もたぶんあると思う。見えてなかった景色、知らなかった感情。いつもはめんどくさいし、ほどほどの距離感が楽なんだけど。

 まぁ、なんだかんだ言って。

 私はアイツのそういうところが好きなのだ。

 

 

 

     ★

 

 

 

「うーん」

 

 放課後の図書室。

 図書委員の仕事を終えた私は、ひとり悩んでいた。

 斎藤はもう帰っちゃったからあいつに頼ることもできないし、どうしたもんかな。

 

「……帰れない」

 

 はぁ、とため息をつく。

 時間的にはもう鍵を閉めて家に帰ってもいい頃なんだけど、未だに図書室に生徒がいるため帰ることもできない。

 

 それなら図書室から出てもらうように、さっさと声をかけてしまえば済む話なんだけど。……人が人だけに話しかけにくい。

 私はバレない様にこっそりとその生徒を見る。

 

 椅子に座っている生徒は女の子で、失礼ながら図書室には来ないだろう人物だった。

 染められたであろう金色の髪は巻かれていて、季節はすでに冬近くなのに制服は校則ギリギリまで着崩されている。

 スタイルも良くて美少女って言われてもおかしくない容姿だけど、強気な瞳のせいで人を寄せ付けない圧を放っていた。

 

 本田(ほんでん)みやび。

 一言にまとめるなら、そう。都会のギャル。私が関わらないタイプの人間だ。

 今年の7月と、珍しい時期に転校してきた同じクラスの生徒。私は一切関わったことがないけど。

 

「あいつ怖いんだよなぁ」

 

 スマホをいじる本田に聞こえないように、内心をこぼす。

 転校してきてから今日まで、あいつは孤高というか、一匹狼スタイルを貫いていた。雰囲気的には明るい性格の友人とか作ってワイワイ騒いでそうな感じなのに。

 前に本田に声をかけたクラスメイトが冷たくあしらわれた時は、マジかよとドン引いた。

 

 とはいえだ。いつまでもこうしてウジウジしてられないんだよなぁ。今日出た課題もさっさと終わらせたいし。次のキャンプの予定もそろそろ立てたい。

 でも、行くのかぁ。行かなきゃダメかな? ダメだよなぁ。

 渋々と覚悟を決めた私は、恐る恐る本田に近づいて声をかけた。

 

「本田さん。……そろそろ、図書室閉めたいんだけど」

「…………」

 

 無視かよ。

 あんまりな対応に頬が引きつった気がする。今度はもっと強く言ってやろうか?

 

「あ、あの本田さ——」

 

 声をかけようとして、ふと本田の手元にあるスマホに目がいった。

 てっきりLINEかインスタでもしてるのかと思っていたら、画面には可愛らしい女の子の絵が映っていた。いや、現在進行形で本田の手によって描かれているが正しいか。

 

 私がすぐ真横にいるのに気にしてないというか、気づいていないのか、本田は黙々と手に持ったペンを動かしている。

 どうやら私のことを無視したんじゃなくて、集中していたから聞こえてなかっただけみたい。

 

 にしてもこの絵、どこかで見たことがあるんだけど……なんだっけ?

 えーと、ああ、あれだ。私が働いている本屋に置いてあったライトノベル。その表紙みたいな絵だ。

 一人私が納得している最中も、本田は作業を続けていて、画面の中の少女が綺麗に彩られていく。そして、その絵を描いている本田の目はいつもと違いキラキラしていて、楽しそうだった。

 初めて知った一面だったけど、なにより私が思ったことは本田の絵ってめちゃくちゃ、

 

「上手いな」

「ッ⁉︎」

 

 関心のあまり、つい声が漏れてしまう。

 だからか、私の存在に気づいた本田がバッとこちらを振り向き目を丸くしていた。

 あ、かわいい。

 そして、私の視線の先がどこかを理解したのか、スマホの電源を切った。

 

「なに?」

 

 怖ッ!

 さっきまでのかわいさが嘘のように、教室にいる時よりも何倍も鋭い目付きと低い声になった。あんまりにも怖くて、声がでない。

 

「用もないのにあたしに話しかけたの?」

 

 そんな私の態度に、イラついたのか本田の威圧がさらに増した気がする。

 や、やばい!

 

「い、いや! そろそろ図書室しめなくちゃいけなくてッ……」

「はぁ?」

 

 慌ててそう言うと、本田は訝しむようにスマホの電源を再度つけて時間を確認した。

 訪れる沈黙。しばらくして、

 

「……悪かったわね」

 

 そう、一言だけ呟いて、身支度をした本田が気だるげに立ち上がり出口に向かった。

 数秒してドアがぱたりと閉まる。

 

「ふぅ……帰った。怖かったわ」

 

 さっきよりも大きなため息がでた。

 図書室を包んでた重い空気が軽くなったような気もする。

 

 いや、マジで怖いわ。

 なんていうかどっと疲れた。……でも、これでようやく帰れる。

 

「よし、私もさっさと片付けて帰ろ」

 

 頬をパチンと叩き、気持ちを切り替えた私は自分のカバンを取りに行こうと後ろを振り向いた。

 そして、帰ったはずの本田と目が合った。

 

「ヒィッ!」

 な、なにごと⁉︎

 あまりの出来事に今度こそ、悲鳴が出てしまった。

 

「…………」

「な、なに?」

 

 すげぇ、間近でジロジロ見られてる。

 あまりの居心地の悪さと恐怖に、冷や汗をかいていると、本田が口を開いた。

 

「ねぇ、あんた。——あたしの家で裸にならない?」

「…………は?」

 

 なんでもないように、本田はとんでもない提案をしてきた。

 

 

 

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