「……えー、火山予知連絡会は本日、南極のエレバス火山が破局的な噴火を起こしたと発表しました。この噴火は人類が有史以来経験したことのない規模の噴火と見られその影響は世界に甚大な被害を与える可能性があります……」
(2030年8月15日
「……オーストラリア南岸では高さ10メートル規模の津波が押し寄せた可能性があり、メルボルンとの通信は完全に途絶しています。また火山灰が押し寄せ、オーストラリア中部でも降灰が観測され既に送電網に重大な影響を及ぼしつつあると考えられます……」
(2030年8月16日 英国連合放送 実況中継より)
──アメリカ地質調査所の公式発表ではエレバス火山の噴火は火山爆発指数LEVER-8に相当するという。場合によってはイエローストーン国立公園の爆発に匹敵するというが、規模が大きすぎてよく分からない。が、かつてと訪れたというトバ・カタストロフの再来とも言われているのだから、これは全人類の危機だ。
だから、一致して協力しなければならないのに戦争を始めるのだから、人間の本質はカインとアベルの頃からなにも変わっていないのだろう。
(2030年12月8日 西日本日報社説より)
──気象庁の気象衛星ひまわり13号の画像分析の結果、エレバス火山の破局的な噴火は、ロス氷床の凡そ8割を消滅させた。放出された淡水は推定値すら大きい。東京ドーム何個分という量ではない。
たが、安全保障環境は日々厳しさを増している。先日にはアメリカ軍の無人偵察機が北に撃ち落とされたという。もはや日米同盟は日本の存亡をかけた同盟だ。米軍は先月からデフコンを5から3に引き上げたという。これが本当なら半世紀前の冷戦期より引き上げられた警戒体制だ。
(2030年12月15日 産業中央新聞社説より)
「君たち自衛隊は、本日、この瞬間を以て国防軍となる。だが、本質的に君たちの任務は国民の生命、財産の保護、そしてそのために日本国を守ることに変わりはない。
今、日本は、世界は非常時なのだ。君たちが日本に迫る悪意の最後の砦である。今こそ、日々の訓練の成果を発揮てほしい。
どうか、日本国を、この国土にすむ無垢の命を守ってほしい。内閣総理大臣として全国民にかわって申し上げる」
(2031年4月1日 国防軍発足式典にて)
──国会・南極エレバス火山噴火対応委員会発言要旨
自由新党 参議院議員「総理にお聞きします。先日エレバス火山が破局的噴火いたしましたが、日本への影響はどのようにお考えですか」
自由新党 内閣総理大臣「えー、エレバス火山の破局的噴火の影響は現在、諮問会議によって討議されておりますが、一部ではありますが抜粋をご報告しいたします。えー、日本への直接的な影響は大きくないと見られておりますが、経済や安全保障環境の激変は避けられないというのは、諮問会議の一致した見解であります。
放出された噴出物の総量は凡そ1800万立方キロメートルに達するとの報告を受けております。これにより、地球での火山の冬の到来は避けられず、7万年前のトバ・カタストロフに匹敵すると我々は考えております」
議員「その対応策をお聞きしたい」
総理「えー、具体的な対応ですが、経済産業省及び環境省の合同プロジェクトにおいて屋内型生鮮食品プラント技術が採算ベースに乗ったとの報告を受けております。まだ決定ではありませんが、アメリカなどの諸外国と連携して、ことに当たる次第であります」
(2031年 6月10日)
「……9月11日午後9時、アメリカ、ワシントンDCにその威容見せていたホワイトハウスに民間旅客機と思われる2機の航空機が相次いで突入しました。ホワイトハウスは真っ黒い黒煙を立ち上げ、その下には未だ赤々と炎が燃えたぎっています。副大統領は先ほどペンタゴンから声明を発表し、テロリストによる攻撃と断定、テロリストを殲滅すると宣言を出しました。大統領の生死は未だ確認されていませんが、副大統領は既に合衆国憲法修正25条に基づき、副大統領が大統領としての地位を継承することを宣言しています。
これは新たな世界大戦の始まりを意味するものなのかもしれません……」
(2031年9月11日 NHR実況中継より)
──「もしかしたら」が現実となった瞬間だった。中露国境でついに軍事衝突が始まった。両軍とも先制攻撃は相手国だったと主張しているが、ここまでくればどちらだろうと関係ない。鉄量こそが決着をつける基準となるのだ。
世界各地で緊張は増し続けている。日本が再び戦火を浴びる日が来てしまうのだろうか。
(2034年5月15日 産業中央新聞より)
──地球の短期的な寒冷化と急激な海面上昇はとどまるところを知らない。先日はついに海抜ゼロメートル地帯に海水が押し寄せた。政府は止水壁の構築を急いでいるが、間に合いそうにない。
NASSの画像分析によれば、南極エレバス火山は完全に消滅し、最大200キロメートルにも達する巨大カルデラが確認されたという。信じがたい大きさだ。具体的には1万8千平方キロメートルと関東平野より少し大きいくらいの面積だ。こんなものを簡単に作り上げる大自然というものは本当に恐ろしい。
(2040年1月4日 東京新報記事より)
「……ただいま連邦議会議事堂前に来ております。今夜、連邦議事堂ではアメリカ、カナダ、メキシコの3ヶ国による国家連合条約締結が行われようとしています。多くの国民が集まり、3国の国旗を振っています! あっーと今連邦議事堂で合衆国大統領がプロジェクターによって投影されています。ちょうど演説を始めました……」
(2044年7月14日 NHR現地中継より)
──今この年になって〝M資金〟の話を聞くことになるとは思わなかった。第二次世界大戦から100年経つわけだが、ずいぶんと息の長い噂話だ。
日本の敗戦後、国家規模のへそくり呼ばわりされていたM資金が今では日本の戦費呼ばわりされている。実際、日本の赤字財政でいかに捻出したのか気になるところだが、さすがにM資金はないだろうと思ってしまう。
(2046年8月15日 週間じゃぱんより)
──今一番ホットな話題は国際魔法協会の発足だ。
魔法師というのが国家の非人道的実験により作られたのは暗黙の了解だが、隣人が銃器も刃物も使わず人を殺めることが出来るというのはなかなか怖い。
それに国は魔法の不適正使用監視のためサイオンレーダーとやらを街頭に配置するつもりのようだが、まさか日本全国津々浦々に監視カメラ以上に配置するつもりだろうか。日本も個人のプライバシーの取り扱いに随分乱暴になったものである。
(2046年9月21日 産業中央新聞社説より)
──ついに内戦が始まった。すでに事実上分離し、内部対立でぐだぐだしていた訳だが、大亜連合と大漢に分離した中国の状況は現代の国共内戦だ。覇権主義はたいして変わらないが、台湾もどうやら荒れているらしい。
帝国主義は100年の時代を越えて今に現れたようだ。
(2053年1月13日 東京中央新聞記事より)
「経営不安が急激に進行していたアメリカの証券会社、ユナイテッド・アメリカン証券が経営破綻を宣言しました。負債総額はリーマン・ブラザーズの負債の約1.5倍、9300億ドル、日本円で約94兆円を越える見通しで、世界最大の倒産です。
またアメリカでは全面株安となっており、第三次大戦以来復興を重ねてきた各国の経済にエレバス・カタストロフ並みの影響を与える恐れが危惧されています。
すでにヨーロッパの主要証券取引所では軒並み株価が急落、日本でも主要な株価が値下がり、市場関係者に不安が広がっています」
(2087年3月15日 NHR証券取引報道より)
劣等生は詳細がガチガチのわりに、舞台背景がガバガバなので背景作成は自由自在です。本編はやたらと細かいけど。
登場している新聞社等は完全に架空です。