「お疲れ。危なげもなかったね」
「当たり前。この程度」
昨日から始まったランキング戦。初日参加組は意外と少なく、私は堂々の勝率10割を維持して無事に圧倒的首位で初日を乗り切ることができた。
「この調子なら1期の首位は余裕そうだね」
「この環境なら当然」
「あれ、気に入らない?」
「つまらなさ過ぎるし、全然かっこよくない」
みんながみんな手探りで始まったランキング戦は、ロボットバトルというジャンルのこの対戦においてロマンの“ろ”の字も無いような弾幕アクション
「盾、買い足しておく」
「お金足りる?」
「足りてる。マッチの勝利報酬で賄えてる。むしろ儲かってるくらい」
そんな汎用型低火力ガトリング砲台が相手なら話は簡単。使い捨ての盾で距離を詰めれば、こっちの盾が割れても相手の射撃でこっちの機体が削れるより早く私の刃が相手の首をちょん切る。ランキング戦は、特攻首ちょんぱを繰り返す作業ゲーへと成り下がってしまっていた。
「ショップから戻ったら、またしばらく潜る」
「そんな根詰めなくてもいいんじゃない?今のままなら余裕でしょ」
「ダメ。
「多少メタられてもアドリブで勝つ癖に。というかそういう戦いの方が好きでしょうルストは」
「
私の戦い方がメタられる。現状私はワンパターンな戦い方しかしてないし、十分その可能性はある。実際にそれを望んでいる私がいるのも事実。そのほうが絶対楽しい。
もしかしたら、私と同等の人間性能を持ったプレイヤーが、現状ランク首位の私に目をつけて、『出る杭』を打ちに来るかもしれない。才能のあるゲーマーっていうのは、決まって負けず嫌いなもので、私がこうしてマッチを回していれば、必ずその手のゲーマーは
そんな猛者たちをドンドンと釣り上げて、どれだけの才能を秘めているかもわからない相手を片っ端から返り討ちにして、その戦いの先で、私の機体が赤く光り輝いていたら。
そんな『ブチ上がる』シチュエーション、絶対、逃せない。
「じゃあ、ちょっとショップに行ってくるから」
呆れたようで諦めて身を委ねるようなモルドの視線、そして、大量の恨めしそうな私に負けた
◇
慣れた手つきで対戦受け付け。ロビーで少し待機していると、何度目かわからないマッチング通知が届いた。
何度となく繰り返しても代り映えのしない
ネフィリムに乗り込んで、カウントとともにマップへと出撃。不意打ちだけを注意しながらマップを索敵して回る。その時、私のネフィリムがとあるものを検知した。
「スキャン型」
それもかなり広い。
スキャン型は、大きな装備枠を潰してでも障害物の多い地形での戦闘に有利を取るためにレーダーを搭載した戦型だ。地形にもよるが、序盤戦で有利に戦えるとして一部のプレイヤーの間で人気らしい。もっとも、装備が減るために開けた地形での打ち合いにはめっぽう弱く、距離を詰められようものなら手も足も出ないと言った始末だった。
これだけ広範囲のスキャンを行えるっていう事は、装備枠も相当消費するはず。こっちが見つけてしまえさえすれば、もう勝負はついたようなものだろう。
私は持ち前の機動力に物を言わせてこのマップ上を縦横無尽に高速で飛翔する。
そうすれば、ホラ。
「……いた」
物陰に隠れるようにして砲台を構えていたのは緑色のネフィリム。相手はこちらの動きをずっとレーダーで把握していたのか、こちらからの射線が通った瞬間に射撃をしながら逃走を始めた。
何度も見慣れた試合展開だ。この試合も私が距離を詰めてさえしまえば……。
「っ……速い?」
速さ自体は私の方が速い。ただ、私は相手の射撃を極力躱し、盾の耐久地管理をしつつ、地形の不安定なフィールドで、相手がレーダー持ちともなれば、確かに私の速さが落ちてしまう。
だけど、それにしても相手の機体が、速い。
思うように距離が詰まらない。距離が詰まらない中で距離を詰めようとして、盾の耐久値だけが削れていく。
「それにしても、他より、上手い」
二人の機体はそれでもほかプレイヤーと比べれば十分以上に速い速度で飛翔している。これが並のプレイヤーであれば、とっくに地面にめり込んでスクラップと化しているだろう。このゲームのプレイヤー層はまだそこまで育っていないのだから。
でも、それが起こらない。
つまり相手もネフィリムの動かし方を、
「……ちっ」
今の私のネフィリムの装備は、
言うなれば、移動や近接装備よりも遠距離射撃の精度と手数に偏重した『環境』へのメタ特化。つまり、未だいないと思われていたネフィリムでの動き方に『なれている』プレイヤー相手にはこの上なく不利なビルドであるという事だ。
圧倒的不利対面。
相手はそれなりの熟練者。
私の盾はもう耐久が尽きようとしている。
……でもね。
「機体差で諦めるくらいなら、ロボゲーやってらんない」
これが、ロボゲーの醍醐味じゃないか。
自分で選んだカスタムで戦い、不利対面を覆し、有利対面でボコボコにする。どんな相性であろうと勝ちの目はあるから、勝って得られる喜びがあるから、ゲームってものは楽しいんじゃないか。
それを私は諦められない。それが私たちゲーマーって生き物だから。
「モルドッ!アイツの使ってる武器全部調べて!射程、威力、連射性能、全部!!」
『―――えっ!?』
私は急いで通話を開いた。繋ぐ先はもちろん
「速く。1分以内で」
『え、ちょ…………あぁ、もう!!』
ついに、勝負は最終局面に入る。こっちは
そんな勝負で勝ち切れたらさ、絶対、『面白い』じゃない?