「お!!盾削り切ったぞ!!」
「おい、これワンチャンあるんじゃねぇの?」
「つーか、二人ともあれだけ飛び回って一切事故らないのバケモノすぎるだろ……」
本来では多くのマッチが行われているはずのアリーナ内。しかし、プレイヤーたちはバトルを行うことはなく、その全員が現在行われているその対戦の中継に釘付けとなっていた。
試合時間は既に10分を超えようとしていて、未だに2機ともダメージを受けていない。しかし、今まで無敗を誇っていたそのモノクロカラーの機体の装備していた盾は今しがた破壊されてしまった。
「……違う……うぅ…あっ、これだ。次……」
そんな中で、僕は一人試合の画面とは別の画面に必死で目を走らせていた。
「うぅ、ルストも無茶な注文を……」
確かに、今回の対戦相手は強い。というか上手い。だけど、ルストに及ぶほどではない。多分、ルスト一人でも勝てないことはないのだろう。
……それでも、僕をこうして頼る理由は。
「はぁ……しょうがないなぁ!!」
口角が勝手に吊り上がる。楽しくて。嬉しくて。
そうだ。そうだよ。僕たちはゲームをしてるんだ。とことん楽しまなきゃ損じゃないか!
僕は手元のウィンドウを勢いよく閉じた。きっとこのボタンが旧時代式のPCだったら気持ちの良い打鍵音が響き渡っていたことだろう。
「―――ルスト!!今からいう事一発で頭に叩き込んでね!!」
『―――』
ルスト、君の描く|最高に楽しいシナリオに、僕も一枚噛ませてもらうよ。
だって、君もその方が楽しいでしょう?
◇
「了解」
そう一言だけ返して、私はモルドとの通信を閉じた。
『ありがとう』とか『任せて』みたいな無粋なことは言わない。だってモルドの力を借りた私が勝てることを彼も知ってるから。
『もう一回』とか聞き返したりもしないし、『念のために』とか通話を繋ぎ続けたりもしない。だってその方が
今このシチュエーションが、最高に
「正面で構えてるライフル、連射は30発。追尾ミサイル、5発でクール30秒、今3発。背中の砲台からのビーム。チャージは14秒。…………12,13,14!!」
タイミングを完全に合わせて私は大きく飛び立つ。いきなりの急発進についてこれず、追尾性能を持ったミサイルが、私の元居た場所で一斉に衝突して派手な爆発を起こしていた。
「いい、私
通信の最後、モルドが楽しそうに笑っているのが見えた。私はそれに応えなきゃいけない。別に義務とかではないが、その方が絶対に
ここで問題。対戦ゲームで最大限に楽しむにはどうすればいい?
答えは簡単。とても簡単。勝つことだ。勝てることだ。だって勝てない対戦ゲームなんてつまらないじゃん。
じゃあ、私が、この既にボロ耐久と化したネフィリムが、あの超高速移動連射砲台に立ち向かうには、どうすればいいのか。
「これも答えは簡単。
一発も喰らわなきゃゴミ耐久でも死なない、でしょ?
(――右3左1上2正面5……下抜け。その先で左4正面2……右抜け。その先で……)
コマンドを入力するように、小さく状況を呟いて確認する。気が付けば私は敵機から打ち出されたすべての射撃・砲撃を背中に置き去っていった。
「ほら、避けれる」
後は、知らない攻撃さえ来なければ私に攻撃は当たらない。だけど、あなたの攻撃は、全部、
避ける。近づく。避ける。近づく。
今まで他の対戦では愚直に突っ込むしかしてこなかった私の突然のプレイスタイルの変更に驚いたのか、射撃の雨が一瞬止んだ。
……今の私相手にその隙くれるの?
「私
大きく羽ばたいた翼が私の背中を押し上げて。後ろに置いてきた数多の爆発が
すれ違いざまに振りぬいた刀身の感触が腕と脳をを痺れさせて。外した視線の向こう側で破損していく敵機が私の勝利を祝福していた。
終わってみれば、私の機体は無傷。
◇
ネフィリムホロウ、通称ネフホロ。
そのゲームのサービス開始は、最悪とも言われた操作性への大ブーイングで溢れた。しかし、それでも残ったコアなファンたちによって支えられて、何とか対戦環境まで整えるに至ることができた。
そんな待ちに待った対戦環境は、とある
そのすべてのプレイヤーをもってして敵わないと言われたそのネフィリムは、5度のランキング首位防衛という、圧倒的な実力と実績を持って、緋色の機体とともにその名を
緋翼連理。
ルスト誕おめでたいいいいいい!!!!!!!!!!!(n回目)
ルスモルの一年が輝かしくあることを、そして、シャングリラ・フロンティアという作品のこれからが明るいものであることを、心から祈っております。
……ところでルストのマガシャン登場っていつなん(瀕死)?????