もしもゼオンが魔界でガッシュと会っていたら 作:ちゃんどらー
アポロとロップスのペアは、実はそこそこ多くの魔物と遭遇している。
ガッシュを含めて四組。目の前のゼオンを含めれば五組目である。戦闘経験という点ではガッシュ達やブラゴ達の次くらいに戦闘経験があると言ってもいいのかもしれない。
危険を感知できる特殊能力は魔物に対しても発動しているようで、魔物が持つ魔力の大きさを直感で感じ取れているのだろう。
そんなアポロをして、目の前のガッシュによく似た魔物―――ゼオンのことを測りきることは出来なかった。
昼食を楽しむ彼はロップスの隣でにこやかにホットドッグを食べていて。時折ロップスが口の端にソースを付けたりするのを拭いてやったりと世話を焼いている。
それが嬉しいのかロップスも彼の口にポテトを運んだりとやり返したり……先ほどまでの威圧感などまるで感じさせない穏やかな姿。
アポロとしてもう一つ気になるのは……目の前の青年―――デュフォーだ。
優雅にコーヒーを飲みながらゼオン達のやり取りを眺めるだけで何も語らない。
その瞳に浮かぶ感情がここまで読めない人間はアポロにとって初めてで、少しだけ不気味にすら感じた。
こちらの視線に気づいているだろうにそれでも視線すら合わせようとしないデュフォーに対して、アポロはせめてと声を掛けてみることにした。
「ねぇ、デュフォー。キミたちは相当の実力者に見えるんだけど、これまでどれくらいの魔物と戦ったんだい?」
ふいと、彼の視線がようやくアポロに向けられる。
吸い込まれそうなほどに真っすぐした瞳。浮かぶ感情はやはり読めないが、少しばかり呑み込まれそうになった。
「……三体だな」
「へぇ、その魔物達とはすぐに戦闘を?」
「いや、どれもいきなり戦闘などはしていない。ちなみにこうしてテーブルを共にするのはお前達で三組目だ」
なるほどと、アポロは思考に潜る。
―――ガッシュや清麿と同じで無駄な争いはしたくないタイプなのかな? それとも強者故の様子見……?
直感からの確実な答えとはならないが、どことなく違うとアポロの勘が告げていた。
力の底が見えないとはいえ、テーブルをはさんで相対するということは話し合いをしたということだ。最後の一体になるまで戦わなければならないという発言から、戦闘になれば相手に容赦しないのだろうという予測を立ててはいるが、それでも自分の思考が正解と感じられない理由が分からず首を捻る。
戦いについて厳しい意見を言ったのにテーブルを挟んだというのもおかしな話だ。どんどんと思考の深みへと嵌るしかない。
そんなアポロをじっと見つめるデュフォーは、唐突に彼の度肝を抜く言葉を投げつけた。
「お前、面白い力を持っているな」
「な……」
デュフォーの発言にゼオンがこちらに意識を向け、ロップスも同じように視線を向けてきた。
二対の瞳が浮かべる色からは感情が読み取れない。特に真っすぐ見つめてくるデュフォーは、恐ろしく冷たい眼をしていた。
「人より優れた危機回避と他者の力を感じ取れる感応能力。しかもそれは……感情すら読み取ることが出来るらしい」
ぴたりと言い当ててきたデュフォーに、アポロの背筋に冷たいナニカが這ったような感覚がした。
確信をもって告げてくるその声は、予測や予想などではないもっと別のナニカに従って告げていて、アポロはデュフォーに感じた不気味さの一端を感じ取る。
「ほう。ロップスの記憶にあった戦闘での回避はソレが理由か。まだ幼いロップスをサポートできるいい能力じゃないか、人間」
ゼオンが感嘆の声を上げる。
「魔界の王を決める戦いはもう既に残り七十名を切って日が経った。日に日に激化していく戦闘と、悪意すら向けられるだろう人間界での生活の中で、お前のような力を持ったパートナーを得られたロップスは運が良かったのかもしれん」
もう一度ロップスの口の周りをごしごしと拭いたゼオン。今度は彼がアポロに視線を投げかける。
「さて……お前達は何が聞きたい? 礼をすると言ったんだ。オレに分かる範囲であればこの戦いや魔界のことについてある程度答えよう」
「ありがとう。僕たちとしてもあんまり魔物の知り合いはいないからとても助かるよ。文字を指さして意思疎通が出来るけどロップスもまだ話せないしね」
話に入るからと、入れ替わるようにデュフォーがロップスを抱き上げてその膝に乗せ始めた。
頭を撫で始めたその手つきに満足げなロップスを横目で見ながら、アポロはゼオンに質問をぶつけ始める。
「まず、せっかくだしキミとガッシュの関係を聞いてもいいかい?」
「む……先にその質問から来るのか」
眉根を寄せて悩む彼はため息を一つ零す。聞かれたくないと顔に出ていた。
「残念ながらそれを
聞くからに怪しい答えではあったが、アポロの特殊な力でゼオンの感情が読み取れてしまった。
其処にあった大きな悲哀の感情は、隠そうとして隠しきれるほどの大きさではない。
―――何か事情があるのか。ならこの質問は此処でやめた方がいい。
知りたい、とは思っても深入り出来るモノではなかった。今まで感じ取ってきた中でも一番大きなその悲哀の感情が、アポロという部外者が入り込んでいい隙間はないと教えていたから。
次の質問を考え始めたアポロは、幾つか聞いておきたい他の事柄を確定させる。
「じゃあ、そうだな……この本について、とかは何か教えてくれるかな?」
魔本を翳すアポロに、ゼオンはまた難しい顔を浮かべる。
「……オレであってもその本について答えられることは少ない。魔物本来の力がその本に封じられているということが一つ。魔界でのオレ達は呪文を唱えて自分の持つ魔力の範囲で術を出せたが、この戦いでは人間に唱えて貰わなければ術が使えずそれも人間の心の力によって威力が左右されてしまう。
もう一つ。魔物の子が成長すればその本に
そして最後にその本で分かっていることは、この戦いの区切りに於ける案内を受信する受信機で、魔物の子同士を引き寄せる不思議な力を持ち、この戦いの為だけに特別に制作された……魔界で創られたモノではない本、ということくらいか」
「魔界のモノじゃない?」
「まあ、オレも
悔しそうに目を伏せるゼオンに、アポロは大きく一つ頷く。
「いや、ありがとう。新しい術がどうやって出現するか、その情報だけでも僕たちにとっては大きい。
そうか……最初から本に術が刻まれていて読めるようになるのではなく、魔物の子の成長に対して本が応えると言ったほうが正しいのか」
「術に関しても少し教えてやろう。お前の特殊な能力なら心配ないかもしれないが、戦闘に於いて術の法則を知っていれば相手の声を聞いてその術への対処が容易になる。
基礎呪文を主として、身体強化の“ルク”系、盾としての“ルド”系、連射の弾を打ち出す“ガンズ”、回転の力を加える“ガル”、中級ならば“ギガノ”や“テオ”などの付属詞が付き―――」
術の構成を知っている範囲で語るゼオンに、アポロはメモ帳を取り出して書き出していく。
上位の教育を受けた魔物達にとっては当然のことでも、まだ幼いロップスでは知りえなかった情報はアポロにとって宝となるのだから。
王を目指すと言った以上、アポロも真剣に取り組むと決めていた。故にゼオンとの出会いは彼にとってとてもありがたいこと。
「―――という感じで、術に関してはこれくらいか。魔物の特性についても知っておくか? ロップスの知識量はそれほど多くないだろうし、保護者であるお前は知っておくべきだろう。個人の記憶を覗かせて貰った礼として受け取っておいてくれ」
魔物の使う術、魔物の特徴、参加している魔物でも名のあるモノ達。話を広げていくゼオンは情報を並べていく。
知っていると知らないでは明確に差が出てくる事柄は多い。
特に名のある魔物の情報などは戦闘を行うかどうかを決める指標と成り得るし、己の力量以上の相手に対して逃げ切れる確率も上がるだろう。
「―――バリーはやはり外せない。民間の生まれの中に腕っぷし一つで名を轟かせている魔物は多いがその中でも段違いだろう。あとは最も警戒すべきは竜族の二人、神童とさえ呼ばれるアシュロンとエルザドルで―――」
「あのさ」
話を聞いている中で、ふと、アポロは疑問に思ったことを口に出す。
「……キミは、どうなんだい?」
そのまま止まったゼオンは、アポロの瞳から目を逸らさない。
語られる名の中にゼオンは居なかった。位置としてはどうなのかと、問いたくなるのも必然。
「易々と他者に己の情報を与えるとでも? それもお前のような特殊な能力を持った輩に」
至極当然な回答を突きつけられる。自己紹介が終わっても名前を呼ばないゼオンは、アポロに対して一種の線引きをしているらしく。
其処にある警戒は彼の大切なナニカを護る行いのように感じた。
「これはロップスという客人が記憶の開示という最大限の礼を以ってオレを楽しませてくれたことに対しての返礼だ。客人に対しての礼の範囲であり、友に対する情報開示とは違うと分かっていての発言か?」
踏み込むことは出来る。
きっとガッシュが絡んでいるだろうと予測してはいる。
聞き方によっては怒らせることになるし、戦闘になることもあるだろう。
意を決して、アポロは尋ねようと口を開きかけ
「ゼオン、少し肩の力を抜け。騒がしくしたらロップスが起きる」
ロップスを撫でていたデュフォーに止められる。
声を挟んできたデュフォーにびっくりしてそちらを見ると、更に彼の膝ですやすやと眠るロップスに驚き、アポロは何も言えなくなった。
何故か不機嫌になったゼオンがデュフォーに牙を剥く。
「なぜお前の膝の上で寝ている?」
「“答え”を出して疲労回復のツボを圧すマッサージしつつ寝かしつけたからだ」
「重いだろう? 代わってやる」
「別に構わない。起こしてしまうのも悪いだろう」
「起こしたりなんかしない。代われと言っているんだ」
「乱暴をしようとするなゼオン」
「乱暴などしていない!!」
「わがままを言うな。声も大きい。起こしたりしないと言いながらそんな声を出すなんてお前―――」
「だ・ま・れ!」
静かに怒鳴るという器用なことをしながら、ゼオンはふっと姿を消した。
一瞬の後には、デュフォーの膝の上でロップスを自然な体勢で抱えているゼオンがいた。
「これで問題ない」
「邪魔だが」
「ふん、いい気味だ」
「丁度いい機会だから身体能力向上促進のツボ圧しをしておくか。関節の可動域を柔軟に広げる為のモノは……」
「や、やめろバカモノ! なぜそんなに不機嫌なんだお前は!」
「……」
「!! ぐぅぁぁぁぁぁ……やめろぉぉぉぉぉ」
わちゃわちゃと揉める二人。
ロップスを乗せているから暴れることも出来ないゼオンと何故か意固地になってツボ圧しを始めたデュフォー。
「ゼオン、どうしてロップスに其処まで世話を焼こうとする?」
「ぐぅぅぅぅ……別にいいだろ……」
「……」
「ちょ、強くするなっ……うぁぁぁぁ……!」
「言わなければもっと
「や、やめ……か、カイルと同じ理由な……だけだ……くそ……」
悔しそうに白状するゼオンに、納得したように頷くデュフォーが指を離した。やっとツボ圧しから解放されたゼオンは、肩で息をしつつもロップスを起こすことは無かった。
「ふっふふっ」
そんな彼らの様子に、アポロは思わず笑ってしまう。
「おい、人間」
「くふっ……だってキミ……ふふっ」
「デュフォー! お前のせいで笑われたじゃないか!」
「明らかにお前がおもしろいからだろ」
「オレのどこに笑う要素があった!? お前が余計なことをしたから抗っただけだぞ! オレは被害者だ!」
「とりあえず重い。そろそろロップスを置いてどいてくれ」
「話を逸らすな!」
「声が大きい。ロップスを起こすつもりか?」
「そんなつもりはないと言っているだろう!?」
「……丁度いいからツボ圧しを―――」
「それももういい!!!」
「あっはっはっはっ!」
もう我慢できないと机を叩いて笑い出したアポロを見て、更に眉を寄せて不機嫌になったゼオンは、デュフォーの膝の上でもはや何も言うまいとその笑いが収まるまで押し黙ってしまったのだった。
しばし後。
ごめんねと一言謝ったアポロが先ほどよりも砕けた空気で口を開く。
「いや、すまない。ちょっとキミたちに抱いてた印象とさっきのギャップが凄くてね」
「ふん……失礼なやつめ」
ゼオンは不機嫌になりながらも、怒りをぶつけるようなことはしない。
レインやカイルと居る時のような姿を見せてしまったことになったが、それはあくまでデュフォーが余計なことをしたからだと考えているため。
デュフォーはレインやカイルと仲良くなってから、大きく感情を顔に出すことはまだないが、ゼオンをこうして困らせるようなことをするようになった。
理由は単純明快にたった一つ。ゼオンが面白いから、らしい。
ゼオンとしては誠に遺憾なことではあるのだが……デュフォーが少しでも多く感情を心に浮かべてくれるなら、そう思って彼はデュフォーに本気で怒れずに仕方のないやつだと許すことにしている。
からかわれている姿を他人に見られるのは恥だ。
ゼオンの高いプライドからそんな隙を晒すのは許されないことだ……ほんの少し前までは。
レインやカイルという友を得て、彼らのからかいに乗っかってやったり、逆にからかってやったりすることを覚えたゼオンは、デュフォーが肩の力を抜けと言ったこともあって外でそういったからかいを受けることも是としたのだった。
少しずつ、少しずつではあるがゼオン自身の心は変わってきている。それを自分自身でも自覚しているゼオンは、これがいいことなのか悪いことなのかと考えることも少なくない。
反してデュフォーは、己の変化の全てを把握しきれてはいない。
いつも共に居るゼオンの表情の変化が多彩になったことは、間違いなくデュフォー自身にも影響を与えている。
心に灯っている火が暖かさを放つことも多くなった。ゼオンをからかっている時は素直に面白いし、レイン達がそうしている時も面白いと感じるようになった。
今回のロップスのことにしてもそう。ゼオンがやたらと構うのでそれを逆手にとってからかえばどうなるか分かった上で行動した。
本気で怒っていないことも分かっているし、此処までは大丈夫という線引きも理解している。
カイルやレインと一緒でなくとも、感じるモノは同じだった。
そういったやり取りをゼオンとしている時間に、面白いと感じる自分に……名前を付けるならばなんといえばいいか。
―――ああ、そうか。これが……“楽しい”というモノだったか。
遥か昔に忘れ去られていたモノの名前を、ようやっとデュフォーは思い出す。
最後に感じていたのは何時だったか。それはきっと、自分に同情していた研究員や自分が世話をしていたネズミがいた頃のこと。
精神に与えられ続けてきた負荷と憎しみの海が、そんな些細な感情の発露さえ思い出させなくしていたのだろう。
長い長い施設での生活で忘れ去られていたモノで、ゼオンと出会ってから名前が分からずとも感じていたモノ。
あの絶望の夜。ゼオンとガッシュと共に過ごした時に感じていた温もりの一端もきっとこれだった。デュフォーはそう思う。
あの時デュフォーは、確かに楽しいと感じていたのだ。
ゼオンと過ごしている間に些細な言い合いをして心に浮かんでいたのも同じモノだと言える。
―――コレは、今まで分からなかった“答えの一つ”。
すっと胸に手を当てたデュフォーは心に戻った感情の一つを大切に噛みしめた。
緩んだ口元が出るようになったことを、ゼオンは当然気づいている。
確かめて、自分で消化して、己のモノとして……変わっていくデュフォーにゼオンも嬉しくなっていた。
―――オレが変わったことで
横目で見ながらも、今はまだそれを言うことはない。気にしてまで直接言ってやることでもないだろうと一人ごちる。
こういった気づきを得られたのは大きい。内心でロップスとの出会いに感謝しつつ、彼はアポロに対して語り掛けた。
目の前に居る客人との時間にもそろそろ終わりを付けねばならない。
「人間」
―――ロップスは幼くともこの戦いに同条件で参加している魔物の子の一人。ならばあの記憶での一戦で覚悟を決めたとはいえ……おせっかいだろうと、確かめてやらねばなるまい。
名乗られてもアポロの名前を呼ぶことはしないゼオンはロップスの記憶を見て、どうしても許せないことが一つあった。確かめる為に彼は問いを投げる。
「記憶を見せて貰った中で、お前はロップスを王にするとそう言っていたな?」
「うん。清麿とガッシュとの出会いでロップスを王にする為に戦うことを決めた」
強い意思を宿した目。揺るがないだろう意思の力が感じ取れるその目に対して、ゼオンは紫電の輝きを深める。
「何が何でもか?」
「そうだ。清麿達にだって負けない。他の魔物だって倒す。キミ達はとても大きな力を持っているけれどそれだっていつかは越えて見せる。ボクは……ロップスを王にする」
「だが……もし、高め合った後に、ガッシュと戦って負けたとしたらお前はどうする? どう思う?」
「その時は……うん、後悔はない……だろうね。負けるつもりはないけれど、ライバルと全力で戦っての結果なら、きっと受け入れられると思う」
清麿とガッシュと戦った日の青い空を、アポロは思い浮かべていた。
勝負に勝てなくともあの清々しい青空が広がっているのだろうと、彼はそう思う。
少しの間。
デュフォーがコーヒーカップを傾けてソーサーに置く音がやけに響いた。
「……そうか……あいつらと戦ったというのに、そんな答えを吐けるのか」
「……どういうことだい?」
「度し難い甘さだ、と言っているんだ」
すっと細めた紫電に浮かんだのは……些細な失望の感情だった。
読み取ったアポロは驚愕と僅かな怒りを浮かべるも、ゼオンはもういいというように首を振る。
唐突に、ゼオン達の会話のやり取りにおいては
「ブラゴの時とは違ってこの先は無意味だぞ、ゼオン」
「違うなデュフォー。あの時とは違う」
「……
「それらも違う。後々まで残れるならどちらかになるとはいえ、これはあくまでオレの矜持の問題だろうな」
「分からんな。お前のしたいことが」
「なに、他の有力者から見ればただのお遊びだ」
悪戯っぽい笑みを向けてから、ゼオンはまたアポロへと向き直る。
「人間。お前は勘違いをしている。大きな、とても大きな勘違いだ。ロップスを王にしたいというが、根本的に根付いている勘違いに気付かなければそんなモノは夢物語にすら成り得ない」
見上げる紫電の中に浮かぶ光は、アポロの能力をしても読み取れないほど大きな感情を宿していた。
自信にあふれた笑みの裏側にある、悲哀と絶望を越えて生まれた大きな願い。渇望。
今まで出会った誰よりも力強く大きなその想いに……アポロは息を呑む。
「この戦いの現実というモノを教えてやろう。まやかしの自由に囚われている旅人もどきにな」
二時間後に街外れの風車前まで来いと告げてゼオンは席から立ち上がる。
眠れるロップスをアポロに渡したデュフォーは、感情の籠らない瞳をアポロに
「ゼオンがああいったからには逃げることは出来ない。あいつの現在の魔物探知能力は本気を出せば国境すら越えるから」
歩き始めたゼオンの背を追いながらの声。
「油断も慢心も許されない。全力で来なければお前もロップスも此処で終わりだ」
立ち去り際に放ったデュフォーの一言は、アポロの心臓を一つ大きく跳ねさせた。
「ガッシュとそのパートナーのライバルを自称するというのなら、無様な姿は見せるなよ」
デュフォーが頭に浮かべた“問い”は二つ。
問――何故、ゼオンの機嫌がロップスとの戦闘を見ただけで今までにないほどによくなったのか。
問――何故、ゼオンがロップス達二人ではなく“人間だけ”に辛辣なのか。
大まかにしか出なかった答えはゼオンの心情が絡んでいるせいだろうと分かり。
後でその戦闘を自分も見せて貰おうと、デュフォーは小さな期待を持ってその場を後にしたのだった。
読んで頂きありがとうございます。
戦闘まで書きたかったのですがキリが良かったので此処までで分割します。
・デュフォーくんも少しずつ変わってるという話。
・ロップスの世話を焼きたがるお兄ちゃん。
・デュフォーくんとゼオンくんは仲良し。
会ったこともないお兄ちゃんの心を揺さぶってアポロ達と戦わせるよう仕向けるなんて……清麿……なんて恐ろしいヤツなんだ……っ
これからの楽しんで読んで頂けたら幸いです。
次の1000年前の魔物編で好きな魔物はどの子ですか
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