もしもゼオンが魔界でガッシュと会っていたら 作:ちゃんどらー
更新滞っていてすみません。
今回は少ないですが、再開していきます。
「ダンナ、これでよかったんで?」
山の中腹にて瞑想をしているアシュロンへの問いかけ。
人型へと変化している彼は片目だけを開けてパートナーであるリーンへと声を返す。
「ああ、これでいい。
数日前に分かれた雷帝のペアを思い出せば、アシュロンの口元に自然と笑みが浮かんだ。
信頼が見える瞳は穏やかの中にやさしさを含み。
「あれが雷帝ゼオン、ベル一族で最高の才を持って生まれた雷の申し子……か」
所々焦げた鱗を撫で、残存する魔力を感じ取る。
「凄かったッスね。ダンナが自分と争うに足る相手だって言った理由がわかりやした。それにデュフォーの兄さんの方も」
「……
ゼオンとデュフォー二人が合わさった強大な力であっても、自分は負けることはないとアシュロンは思う。
未だに成長途中の彼らを見て劣るとは思わない理由が彼にはあった。
「身体の不調があるってのに、とっておきの隠し玉……覚えたての“シン”まで見せちまって、よっぽどあの二人のことが気に入ったんスねぇ」
「あいつらが全力で来いと言ったんだ。出し惜しみをする方が無礼だろう。この身体が千切れるかどうかの瀬戸際だったが使っておく価値はあった。デュフォーのヤツが教えてくれた魔力循環の適応化のおかげだな。とはいえ、俺達が“ディオガの上”を互いに出し合って互角だったとしても……クリアはそれを遥かに超えて来るんだ。見せておいたことであちらも得るモノがあったはず」
「うーん……まあ、こっちもダンナがおっきな収穫を得たみたいですし、あっしもデュフォーの兄さんから効果的な心の力のコントロールの鍛錬法も教えてもらいましたからヨシってとこか」
「“この傷を完治させる方法”も知れた。“竜族の真なる極みへと至る方法”も知れた。何より……“本気を出して、これから成長しても敗北を予感させられる二人目”を知れた。フフフ……」
グッと握られた大きな拳を見れば、まだつい数日前のゼオンとの“本気の戦闘”での痺れを思い出す。
「あんなちっこい身体でダンナと殴り合ってたのもそうですが、ダンナを押し返して来た時なんかさすがにひやひやしましたぜ?」
「ふん、クリアの体術に近しい水準で戦える相手などそうそういないから……随分とためになった。クリアを入れてこれで三人目……世界は広いな」
悩みも迷いも切り替えて戦う少年の紫電の眼差しは、アシュロンの内に眠る竜としての本質を呼び覚ますに足りる相手であった。
そしてそのパートナーのデュフォー……人間と呼ぶにはあまりにも外れた能力を持つ青年が雷帝に付いていることで、アシュロンとリーンは得難い本物の好敵手を得ることが出来たと言えよう。
「ゼオンが選んだ選択をオレは取ることが出来なかった。しかし……オレにもそれを与えてくれた。まだ遅くはない」
「……ふふ、そうっスね。確かに」
誰かと高め合うことはもうないと思っていた。
この戦いは本来、他の魔物は敵でしかないはずで。
だからこそ己の親友であるエルザドルにさえクリアのことをまだ相談できずにいた。助けてくれと、その一言を真っ先に頼るべき相手に伝えればよかったのに戸惑ってしまった。
“バオウ”という魔界の脅威をどうにかする為に仲間を集めている……ゼオンはそう言っていた。
それはアシュロンには踏み出せなかった一歩。アシュロンは自分一人でクリアに対抗できるよう訓練を積むことから初めて、その一歩を先送りにした。
デュフォーという反則的な存在が答えを示したのだとしても、己の実力を理解しているプライドの高い王族のモノが仲間を作ることなど、通常は有り得ない。
この戦いでは周り全てが敵、徒党を組むのは弱者の証。そも、誰であれ背中を晒すことには抵抗があるのは当然のこと。一時的な共闘をするにしても、そもそもの信頼関係が構築されていた場合だとて容易には手を組めないモノだ。
魔界の為にと、アシュロンは心の底から灯がともっていた。それでも、親友に対しても手を繋いでくれとすぐさま頼みに行くことは出来なかった。
それを彼は……紫電の雷帝はゼロからはじめた。
実力はあっても誰と関わりを持っているわけでもない少年が。
たった一人の弟を救う為だけに早々にその一歩を踏み出している。
そして、ゼオンはこうも言った。
エルザドルの所にはゼオン自身の友が向かっていると。お前の親友は必ず仲間になるはずだから、竜族二人でオレとあのバカの前に立ちはだかって見せろ、と。
既に彼は、アシュロンの先を行っているのだ。
協力者を見つけ出し、友となり、己の目的を果たす為に協力して行動を開始し……全幅の信頼から友の成果を疑っていない。
くくっ、とアシュロンの喉が鳴る。横でリーンが不思議そうに首を捻った。
拳にはまだ雷の魔力が残っていた。じんじんと芯に響くような熱さをすら持ったその魔力の残滓を、彼は嬉しそうに己の魔力で抑え込む。
「オレも、バカだなぁ……きっとエルザドルのヤツにバレたらぶん殴られらぁ。なんですぐに頼んないんだ、オレは親友じゃなかったのか、自分が強いと思ってつけあがるなバカ野郎ってな。あいつのことだから……ベロベロに酔った時においおい泣いて絡んできやがるんだぜ」
「くっくっ、そうでしょうねぇ。親友ってんならその拳を受けなきゃならんスわ。そりゃあダンナが悪い」
「あいつの拳、いてぇんだ。ま、腑抜けたオレにとっての気付けには丁度いいか」
「クリアを倒した後で、ゼオンくんとデュフォーの兄さんと戦う前くらいに殴ってもらうのが良さそうッスね」
互いに喉を鳴らして笑い合う。
二人の心は穏やかだ。強大な敵の情報を自分達だけで知り、それを打倒出来るのは自分達の使命だとして張り詰めていた彼らにとって、こうして心の余裕を持てるのは随分と久しぶりのこと。
油断も楽観もしていないが、余裕が出来るということは一番ベストな状態を作り出せるということである。
明晰な頭脳を持つリーンも、自分とアシュロンの状態がベストに近付いたことにすっと肩が軽くなって軽口の調子も取り戻してきていた。
「あとは……ゼオンくんの心の成長に期待ッスかね?」
更には、他人のことを気にかけることも。
「……あいつの心にこの戦いでの迷いはあった。だが弟のこととなると迷いなど欠片もなかった。あの拳にあるのは、あの手が掴みたいと思っているモノは……今はまだ、一つなんだろう」
「そいつぁ……そうでしょうね。修行も、勉強も、何もかもを血のつながった弟と暮らす幸せの為にってしてきたんですから」
空を見上げつつ吐息を溶かし込んだリーンは、情報収集の為に見たゼオンの過去を思い出す。
「魔物ってやつはあんなちっこい内からあんな目に合うもんなんです?」
「あいつのアレは異常だが……“バオウ”のせいだろうな。あの術に容易に取り込まれないように鍛える目的もあったはずだ」
「それにしてもやりすぎでしょうに」
「……正直、王の考えは分からん。だが、竜の王族に伝わる魔界の歴史、千年の間に起こる魔界の危機を知れば、最強の王を育て上げることに躍起になるのも仕方ないのかもしれん」
「……そんなにッスか?」
「ああ。オレも知識でしか知らないが、オレ達魔物全員の術が使えなくなる、なんていう最悪の戦いもあったらしい。そんな状況でクリアと相対しろとなったら……どうなると思う?」
頬が引き攣ったリーンが力無く笑う。
「無理とは言いたくないッスけどそりゃ厳しいや」
「だろう? だからこそ、最強の王とならせるようにゼオンを鍛えたのかもしれん。今だから思うが竜族も一緒かもしれん。オレに対しての期待から過度な教育を施してきたのも魔界を背負うという責を思えばあり得る。理解はしたくないが、未来を託す為に幼子にあれほど辛くするほどの狂気は……裏返せば絶望を知っていることの証左に足りうる」
「術が奪われても戦えるように……ですかい。人間界とは違うって分かってても、ダンナやゼオンくんみたいな子供に責任と期待を無理やり背負わせるってのはどうもいけすかねぇなぁ」
一人の大人として、彼は大きなため息と気持ちを零す。
「ま、そういうのも変えたいってのがダンナの夢なんでしょう?」
「ふ……分かってるじゃないか」
「あんたのでっけぇ夢は応援してますから。ゼオンくんもダンナみてぇに心の成長してくれたらいいけど」
「ああ……そうだな」
遠く。
魔力を隠して他の場所へと向かった彼らの進んだ空を見上げ――
「其処は約束した次の戦闘で見極めよう。オレとゼオンの成長を見せつければ、クリアへの行動制限にも繋がるだろうしな。エルザドルとあいつらの事後報告も聞かせて貰えばいい」
「ダンナの親友ってのに会うの楽しみッス。さて、こっちはこっちでやることは変わりませんが……やってやりますか」
自分達に出来ることをと、別の心の面でゼオンの一歩先を行く二人も進みだす。
――大切な絆を繋ぎなおすオレと、迷いの晴れるお前。どちらの想いが強いのか……さっさとクリアを倒して確かめてみたいモノだな。
不安も重圧も軽減された大いなる竜は、翼を広げて空へ舞い上がる。
きっと、昔よりも少し高いところへと。
読んで頂きありがとうございます。
リーンとアシュロンのゼオンくん評価。
お互いの目的の擦り合わせと今後の方針は決定しています。
次からはゼオンくんの話に戻ります。
これからも楽しんで読んで頂けたら幸いです。
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