もしもゼオンが魔界でガッシュと会っていたら 作:ちゃんどらー
今回オリ術出ます。
千年前の魔物達は如何にして現代の魔物達を見つけているのか。
一つはゾフィスの事前調査による魔物達の位置情報の把握。千年前の魔物達のパートナーを集める為に世界中に脚を広げていた為、そのついでとして現代の魔物達の中でも警戒心の弱いモノ達は所在地がばれてしまっているのだ。
そしてもう一つ。これが一番の方法であるが、感知タイプの魔物による魔力探索である。
ゾフィス自身も勘の鋭い魔物であり、研究者の一族であることからそういった魔力の操作には長けている方なことから、千年前の魔物達と情報共有をしつつ連携を取れば鋭敏な感覚を持つ魔物達の力を十全に生かせるというモノだ。
ゾフィスは参加している魔物を把握している為、一族に蓄えられた膨大なデータから魔力のパターンすらある程度情報として持っているのも大きい。
そういったことから、千年前の魔物達は現代の魔物を容易に見つけることが出来て、しかも奇襲や不意打ちも簡単に出来る。
たかだか一体の魔物を追い詰めるにしてもゾフィスの策は幾重にも張り巡らされている為、逃げるという選択肢すら与えられないことがほとんどである。
清麿とガッシュが逃げ出せたのはティオとロップスのペアが居たという不可測の事態から。
そして南極でキャンチョメが救われたのもナゾナゾ博士が間に合ったから。
彼らとは違い、数体の魔物達は多勢の魔物の襲撃によって為す術もなくやられている。
複数の魔物を使って一体の魔物を確実に消しに行く方策は手堅く狡猾にして強い方法だ。
とはいえ……その方法も圧倒的な力を持つ魔物にはまだ通用していない。
例を挙げればブラゴとシェリーのペア。
千年前の魔物達の状態が整って幾分か後に数体が派遣されたのだが……結果は大敗だった。
ゾフィスの見積りであれば手傷くらいはつけられるだろうと思っていたのに、ブラゴとシェリーはその派遣された数体を、たった一組で全て返り討ちにしてしまった。
派遣した千年前の魔物の半数が魔界に返されるという最悪に近しい結果は大敗というべき事態だろう。
当然、ゾフィスは焦りを覚えた。
正直な話、舐めていたのだ。彼は実力者たちの力を舐めていた。
事前評価においての上級魔物の中でそこそこであると評しているブラゴでこれならば、竜族の神童や雷帝を討つなどどれほどの戦力を割かなければならないのか考えられたモノではない。
出来るのなら彼は拠点に残している強力な魔物達は使いたくない。
ビクトリームという魔物の力は強くともクセが強すぎる為に除外するとして……他の四体の魔物に関しては自分達の拠点の防衛に当てておきたいというのが本音である。
千年前の魔物達、そしてそのパートナーの人間達の管理は容易なことではなく、人間達のマインドコントロール装置は軽々しく移動させられるモノではないのが大きい。
ゾフィスも実力者ではある。並みの魔物であればそれこそゾフィス単体で軽々と倒せるほどに彼は強い。
だが、四体の千年前の魔物はゾフィスの実力を越えているのだ。戦いの事前準備を張り巡らせればゾフィスでも勝てるには勝てるが……単純な魔物としてのカタログスペックでは間違いなく劣っていると言わざるを得なかった。
そんな彼ら、そして千年前の魔物達全ての行動を縛れるのはマインドコントロール装置があってこそ。
装置を壊されることなどがもし万が一にでもあってしまえば……そう考えただけでもぞっとする。
デモルトの圧倒的な暴力を、ツァオロンの研ぎ澄まされた武力を、パムーンの周りを引き付ける心力を、ベルギム・E・Oの発展途上な無垢なる力を……自由にすることがどれほど恐ろしいのかゾフィスは理解していた。
最終的には竜族の神童達と戦うことになるだろう。その時は……彼ら四体に頼らざるを得ない。
どのタイミングで彼らを使うようにするのかはゾフィスのさじ加減次第だ。都合のいいことに、ブラゴとシェリーは確実に現在の拠点に攻めてくると確信しているため、拠点の防衛力の確認として迎え撃つことを是とし、強力な四体の力をしっかりと見極めることが出来る。
更には、ガッシュ・ベルとその周りの魔物達も此処までたどり着くだろうと予測できる。通常の魔物の防衛力や戦闘データを取れるのも大きいだろう。
ならば他にはと、彼は考えた。余裕はないが、手は打てるなら多く打っておくべきだと彼は思ったのだ。
そんな折、アメリカ大陸南部にある遺跡の中で彼はつい先日に大きな衝撃を受けた。
距離はかなり離れているはずなのに感じた危機感。感知型の魔物だけでなく……実力の高い四体それぞれが気付くほどの大きな力。
遠くハワイの地にて感じた二体の魔物の戦闘の魔力を、ゾフィス達は感じ取ったのだ。
半日にも及んだその魔力のぶつかり合いは四体の魔物に大きな刺激を与えることとなった。
デモルトが狂喜し、ツァオロンの闘気が溢れかえり、パムーンの魔力が膨れ上がった。ベルギムはびっくりした拍子におやつのケーキを落として泣いていた。
デモルトが言った……『クソだりぃトカゲとクソうぜぇチビが戦ってやがる』と、今にも飛び出して参加しそうなくらいとても嬉しそうに。
ツァオロンが言った……『ベルと竜族は……まだ戦ったことがなかったな』と、いつでも戦う準備は出来ていると言わんばかりに。
そしてパムーンは何も言わなかった。唯々、その魔力を遠くに感じて嬉しそうに笑い、己は此処に居るといわんばかりに魔力を見せつけたのだ。
ある程度の自由を約束しているパムーンの不可解な行動と、自分にコンタクトを取ってきた“リエム”という少女の言って来た言葉。それらがゾフィスに不安の影を落とし込む。
雷帝の魔力はゾフィスにとって遥かに想定外の大きさだった。ゾフィスのしていることを小賢しい策と言ってくるのは当然と受け止めざるを得ない。
よって、今回の魔力を感じたことによって、ゾフィスが余裕を持って対処できる限界を超えた。
そこでゾフィスは一度だけ危険な賭けに出ることにした。
それが……今の状況。
派遣した千年前の魔物は七体。
率いているのはビョンコではなくパティであった。
パティが連れる千年前の魔物の目を通して、ゾフィスは相対している相手を見やる。
動向は追っていたつもりだったが魔力隠蔽が上手でかき消されていた。
雷帝と竜族の神童がぶつかった後にアメリカのとある街で魔力が捕捉出来た為、彼は準備を整えて其処に配下達を派遣したのだ。
満天の夜空の下、見えるのは二体の魔物と二体の人間。
美しい髪を流した魔物は情報として知っている。チェリッシュいう孤児出身の魔物であり、ゾフィスにとっては取るに足らない相手。
問題は……もう一体。
黒髪に翡翠の瞳。小さな体躯は幼子のそれなのに、纏う空気はやはり気品に溢れている。
「なぁに? ロードのやつ、こんな女の子相手にこれだけの魔物を集めて連れていかせたってわけ?」
パティの声は聞こえている。
彼女からはゾフィスのことが臆病者に見えていることだろう。何せパティはその“少女”の内に秘められている魔力の深さを知らず、“彼女”が雷帝の使いだと知らないのだから。
「いいや……あいつの判断は正しい。間違いなく……な」
「な、何よ? いつもは挨拶も返さないのに急に喋って」
「もう一人は分からないが、アレはお前の戦えるレベルじゃないぞ」
言われて不機嫌になるパティは、その魔物の真剣な表情に圧される。
連れられてきた七体の千年前の魔物達の中に、ゾフィスは“彼”を入れていた。
「久しいな……“リエム”」
「ああ、そうだなパムーン」
「えっ、知り合い?」
「お前がロードと手を組む前に一度な。魔界の王からオレたちへ向けて伝言を届けに来ていたんだ」
「へ、へぇ、そうなのね……」
驚いたパティへと説明をしながら彼はランスという彼のパートナーへと指示を一つ。
取り出されたのは一つの“石”。
リエムと言う少女とそのパートナーはその“石”を鋭く見定めた。
魔力の籠ったその“石”は、ジジジという音と共に一つの映像を映し出す。
遠く遺跡の中から、ゾフィスの特殊な技術によって遠隔での通信を可能としていた。
『お久しぶりですね、リエムさん』
「……ロードか」
『おやおや、驚かないのですね?』
「魔力水晶に映像を投影する技術はお前らが創り上げたモノだ。魔界で普及している装置がなかろうと貴様の魔力技術があれば立体を持ち相互の意思疎通を可能にすることなど造作もないだろうに」
『ふふ、よくお分かりでいらっしゃる』
くだらないとばかりに吐息を落とした“彼女”の魔力は、石を経由して計ってみても前の時と変わらない。
疑り深いゾフィスはリエムについて幾つも仮説を立てている。
リエムという魔物の存在をゾフィスは知らない。
気付かれないように拠点に侵入出来るほどの実力者の存在をゾフィスが認識していないわけがない。
――リエムという魔物は、実力者が擬態している姿に他ならない。
強力な魔獣型の魔物は人型に化けることが出来る為、その線で行けば数体にまで絞れる。
“少女”というのが気がかりだが、偽りの性別を申告していたのやもとすら考えていた。
事実。ゾフィスが直接感知したリエムの魔力は魔獣型のモノ。
今も尚変わらぬその魔力は……ゾフィスの認識を変えることがなく、真実を遠ざけていた。
『そうそう、貴女に再び出会えたのならば聞きたかったことがあったのですよ』
「なんだ?」
『……つい先日、雷帝と竜族が私の感知できる範囲で激しく争っていたようですが貴女は何かご存じで?』
話を変えての質問にリエムはじっとゾフィスを見た。
翡翠の奥の怪しい光はぶれることなく。一寸だけ、映像越しであってもゾフィスは冷めた空気を感じた。
向けられるのは、軽蔑と嘲笑。
「クク……貴様の望んでいる結果にはなっていないぞ。漁夫の利を得ようと企むのは結構だが、貴様の自慢の雑兵をいくら集めてもあのレベルの魔物は倒せん」
嘲りの声はゾフィスの心を見抜いて。
どちらかが敗北していればいい、あわよくばどちらもが深手を負ってくれれば、そんな淡い期待は彼女の一言で露と消えた。
「まあ、其処のパムーンを出すのなら少しは変わるだろうが」
楽し気な声に、当然だとばかりにパムーンが微笑む。
「だからこそ此処に連れて来たのだろう? 雷帝の情報を探りつつ、不確定要素であるこちらの実力を図る為に」
すっと目を細めたリエムは、ゾフィスを冷たく見下した。
ゾフィスは何も言わない。敵意と殺気を持った目で彼女を睨むだけ。
嘲られても、バカにされても、ゾフィスは思考を回すことを辞めない。
その姿勢をリエムは評価した上で……ゾフィスの本質を見抜いて嗤った。
「お前、怖いんだろう」
ピクリ、とゾフィスの表情が動く。
「雷帝の……ベルの雷を恐れたな? 直接言葉を交わしに行く度胸もなく、勝負を仕掛けに行く力もなく、だからお前は此処に来た。だからお前はオレの魔力を探し回って来た。だから危険を承知の上でオレを試しに来た」
楽しそうに、嬉しそうにリエムは話す。
その様子に、その笑みに、パティはぞっとしながら一歩も動けなくなった。
自分よりも幼く見えるその魔物が、どれだけ危険なのかを感じ取った。
ただ……パティはその少女から目を離せなくもなった。
少女の顔が誰かに似ていたから、ということにはまだ彼女は気付けなかった。
「だから……お前はオレを使ってパムーンの力の試金石とし、千年前の実力者たちの力が現代の最上位の魔物達に通用するのかを見極めることにした。違うか?」
言い当てられて、ゾフィスはギシリと歯を噛みしめた。
雷帝の魔力を、ゾフィスは間違いなく恐れた。
疑問も持ってしまった。はたして千年前の魔物を従えているだけで本当に勝てるのかと。
アシュロンとゼオンの魔力を感知してしまっては、もう彼がその魔力を忘れることは出来ない。
“とある魔物への恐怖”と同じかそれ以上に、彼は圧倒的な魔力に圧されてしまった。
狡猾である彼の奥底に眠る臆病の本質を言い当てられてしまえば、彼は感情をより深くむき出しにする。
「な、なんなの、パムーン?」
「概ねあいつの言葉の通りだろうな。というかお前は感じなかったのか? あれほどの魔力の戦闘を」
「えっえっ……どういうこと?」
「仮にもお前は魔界貴族だろうに……雷と竜の争いくらい感知できると思ったが……」
「と、当然! 分かっていたわ! あれでしょあれ! おやつのケーキを食べてた時になんか変な感じがした日でしょ! ベルギムが泣いてたあの日!」
「……まあいいか」
後ろで話し合っている二人を置いて、無表情に変わったゾフィスがリエムに痛いほどの殺気を突き刺す。
まだリエムの語りは続く。
「この時期が都合がよかった。いや、この時機でなければならなかった。竜族の神童と雷帝が消耗している今この時に、リエムという雷帝の勢力の魔物一体だけでも消し、千年前の魔物達の実力を図ってより確実で強固な策を。もちろん雷帝に補足されても逃げられる算段を掛けつつ、な……そんなところだろう」
さもつまらないというように肩を落として映像だけのゾフィスへと歩み寄り。
「恐い怖いと震えているのが透けて見えるなぁ? せっかくの頭脳を臆病に振り切るとはな。己を磨くことを選べば少しはマシになるだろうに……
あえて本当の名前を告げ、挑発とばかりに
ギシリ、とゾフィスが歯を噛み鳴らした。
『此処までコケにされたのは初めてですよ……ええ、ええ。たかだか魔獣型の魔物如きが……調子に乗ってんじぇねぇぞ!』
丁寧な言葉遣いをかなぐり捨てて声を荒げた彼が手を上げれば、六体の千年前の魔物達がリエムとデュフォーを取り囲む。
ゆっくりとゾフィスを映している石を拾い上げたパムーンはパティを乱雑に担いで宙へと浮き始めた。
「な、何するのよ!」
「巻き込まれない為だ。きっと怪我どころではすまないことになる」
「あんたがそう言うのなら……わ、分かったわ。でも肩に担ぐのはやめなさい!」
言われて星をくっつけ、別個でパティを浮かせてリエムを見やる。
「オレにも新しい事情が出来たから今回はこいつに手を貸すことになった。こいつらを倒せばオレと戦うことになるが……お前の力を見せてみろ」
「ククク、せめて一対一で、ということか。お前は優しいな」
パムーンの言葉に、どうということはないと楽し気にリエムは笑う。
「……許せ」
「オレの言葉は前にも言った。お前がどんな状況であろうと、何を考えていようとそれは今も……変わりない」
悲哀の混じるパムーンの声にも、リエムはなんら動じることなく彼へと答えを返す。
リエムは胸元で月の光に当てられて輝く首飾りをきゅっと握りしめ……大切そうにそれを首から外し両手に握りなおした。
「チェリッシュ」
「大丈夫、手出しはしないよ。私も自衛くらいはするさ」
そちらを見ずに声を掛けられて、少し離れた所に居たチェリッシュは分かっているとばかりに返事を返した。
しかし、口を引き裂いたリエムはばっさりと彼女の驕りを斬り捨てる。
「バカが。学びの為に瞬きすらするな……と、そう言うつもりだったんだ」
「なにを――」
チェリッシュが何かを言い終わる前にバサリと広げられたマント。
マントのはためきだけで取り囲んでいた六体が警戒して後ずさった。
「やるぞ、デュフォー。お試しにはこいつらは少々力不足だが、パムーンなら手頃な相手だ」
「分かった。こちらもお前が話している間に準備が出来た。いつでもいける、と
「よし。では……見せつけてやろうか。
空に浮かぶゾフィスの映像を見上げて、リエムはにやりと笑い。
デュフォーはぼそりとナニカを呟いてから、こめかみ付近をトントンと叩いてリズムを刻み始めた。
心の力を込めてデュフォーの持つ銀の本が眩く光る。
ちゃらりと片手で垂らした爪の首飾りが淡く光る。
空いた片手を空へ。
苛立ちと殺気を向けている敵へ向けて、指をクイと曲げて煽りを一つ。
かかって来い、と。
『やれぇ!』
ゾフィスの声と同時に、複数の術が放たれる。
ビームと、石弾と、茨の鞭と、鉄塊と、エネルギー弾と、氷塊がそれぞれに。
小さく響くその声を聴いたのは、リエムとデュフォー。そして……遠く離れた地に居る、彼らの友。
人間の叡智により、二つの声が重なった。
『「バドス・ディオル・アボロウク」』
瞬間、空間が悲鳴を上げ。
六つの術の悲鳴と共に、白銀のマントが揺れる。
蒼白く輝く爪の煌めきが、月明りによく映えた。
読んで頂きありがとうございます。
攻めて来た魔物はゾフィスくん達でした。
首飾りは当然ですが“彼の爪”です。
三節の術になります。
原作との乖離が出始めます。
これからも楽しんで読んで頂けたら幸いです。
下記の内で好きな魔物は誰ですか?
-
リーヤ
-
リオウ
-
ザルチム
-
ファンゴ
-
カルディオ
-
チェリッシュ
-
ギャロン
-
ジェデュン
-
ロデュウ
-
ブザライ
-
キース
-
テッド
-
モモン
-
アース