《第一種戦闘配置!》
森林上空 駐屯地より50km地点
河野空士長
三山一等空士
ゴォォォォォォォ…
F-4Ejファントム改が異界の空を駆ける。
《やっぱり空はいいな》
《全くだ》
本当に久しぶりの空だ。
今は今まで燃料問題でまともに空が飛べず、俺ら航空自衛隊員は肩身が狭かった。
空の脅威にも地上から対応する方針でますます立場がなくなった俺らだったが、そこにやっと飛べる機会が、飛ぶ理由ができた。
こんな燃料危篤の状況でも飛ばなければならないような理由が。
《竜はこの方角に飛んでいったんだな》
俺らが目指すのはリオレウスが飛び去った方向。
任務はその飛行ルートの延長線周辺の偵察。
あるはずの人里を探している。
《しかしあんな生物がいるんだ》
《空から見えない隠れ里になっている可能性もあるな》
アイルーたちは空を飛ぶ生物を恐れて生い茂る木々を利用した隠れ里を作って暮らしていたと聞く。
あんな竜を従えられる人間が暮らす里があるならそういった擬装はしていない可能性の方が高いかもしれないが…
今のところ巡航速度で3分ほど、だいたい50km飛んでいるがそれらしいものは見つからない。
《太陽が眩しいな》
《ああ…》
正直、久しぶりに飛べたことが嬉しくて任務のことを忘れてしまいそうだ。
もちろんそんなことはダメだとわかっている。
でもヒコーキ乗りの血が騒ぐ…
《宙返りでもするか?》
《あんまり無茶な軌道はやめてくれよ》
…単独任務なので少しくらいふざけてもバレないだろう。
操縦桿を引き、スロットルを上げる。
機首と出力の上がった機体は空中に巨大な弧を描く。
俺はシートに押し付けられるGと逆さまになった世界を感じた。
《…!レーダーに反応!距離100!》
そのまま悪ノリして曲芸飛行しようとした俺はその言葉で我に返って武装を確認する。
積んだミサイルは
もっとも、使いたい訳じゃない。
そういう事態は避けないと。
《この大きさは…リオレウスだろうか?》
出やがったかあの竜。…まだ目視できる範囲ではないので言い切れたものじゃないんだが。
あの時悠々と空を飛んでいたリオレウスが航空自衛隊員のストレスを刺激したのは確かだ。
俺もその一人。
大きさ的には俺らが乗ってる戦闘機と同じくらいの相手だが、見た感じ表面デコボコで反射面積がクソ多くて簡単に捕捉できそうだった。
とはいえミサイルぶちこむわけにも行かない。
そもそも射程外だし。
《本部、こちらガルーダ1。進路上に飛行生物を捉えた》
『ガルーダ1了解、対象を追跡せよ。だが今回の任務は偵察だ、深追いはするな』
《了解》
逃げられる前に確認するため、アフターバーナーを焚いて加速する。
エンジンが長い炎の尾を引き爆音を響かせ機体を急加速、体に宙返りのときとは比べ物にならないGがかかる。
あと計器の一つの目盛りが減ってゆく。
ああ…燃料…
《あっ待て、反応が消えた》
《着陸したのか?》
この生い茂った森ではルックダウン能力もアテにならない。
まぁ直接見て確かめればわかるはずだ。
《なにか見えてきたぞ》
《あそこだけ森に穴が空いてるな》
前方の森に丸く木が生えていないゾーンがあった。
レーダーから反応が消えた場所は…距離から計算してだいたいこのあたりだ。
俺は何かを感じて速度を落とし低空を飛行、撮影の準備をする。
あと数秒で怪しい場所の上だ。これが徒労なら帰ろう。
3…2…ん?なんか見えるぞ!?
《あれは…!》
《家だ!人がいる!》
微妙に角度がついていて見えたのは数秒だったが、あの森の中には集落があった。
そしてそこで暮らす人間も見えた。
人里を見つけた。
《お前しっかり収めたよな!?》
《当たり前だろ!ッとにかく報告だ!》
俺は操縦桿を倒して機体を旋回させ、駐屯地へと戻るルートに乗せた。
《本部!こちらガルーダ1!人里を見つけた!》
無線に喜々として情報を伝え、エンジンをふかして全速で戻る。
早くこの写真を届けなければ。
「古龍調査隊の飛行船が戻らないだと!?」
「航行ルートの近い飛行船に調査させましょうか?」
「それは危険です、被害が増えるかもしれません」
「これは緊急事態だ。一刻も早くギルドに報告せねば!」
一章終わり…かな?
補足や日常回としてサイドエピソードも書きたい。