「いたいのニャ!」
情報科 オフィス
半田陸士長
「アステニャ!」
「あすてに゛ゃうっ…」
また舌を噛んだ。
他言語を覚えるというのはやはり難しい。
アイルーたちとの接触から2週間ほど。
彼らの全面協力のもと言語解析及び習得が進み、日常会話程度なら問題なくできるようになっていた。
僕もある程度現地語を話せるようになったが、まだまだ発音がおぼつかない。
「ダイジョウブかニャ?」
「ああ、大丈夫だ。今回はこの辺にしとこう」
そして学んでいるのはこちらだけではない。
いつの間にか僕らの『オトモ』となった彼らは僕たちの言語、すなわち日本語を猛勉強して僕たちの現地語習得状況と同じくらいの水準まで来ている。
勤勉な彼らの性格からくるものであるが、僕らも負けていられない。
「オチャを入れてきたのニャ!」
「コピーヨウシのホジュウはやっておいたニャ」
「ほめてほしいニャ!」
…もうすでに負けているかもしれない。
すり寄ってきたアイルーの頭を撫でながら僕はそう思う。
彼らは働き者でもあり、望まずとも見返りを求めずに猫の手を貸し与えてくれた。
身の回りの世話や手伝いをし、時には共に戦う。
『オトモ』とはそういうものらしい。
そのようなことは受けられないと断ったが、一族の救世主に恩を返したいとアイルーたちも譲らず、結局給料の発生する雇用という形で落ち着いた。
と言っても給料はあの大きなどんぐり。
食料や通貨に装飾品と彼らにとって用途は広いようだ。
基地の近くにはそれがたくさん実っている木があり、ほぼタダで雇っているようなものになる。
彼らは幸せそうだが、本当にこれでいいのだろうか…
他の科にも一部所に3人ほど、各科幹部と司令には専属の『オトモ』がそれぞれ1人いる。
彼らのおかげで負担が減り日々の生活が少しラクになったのは確かで、大きな反対意見を出すものはいない。
これも含めた協力関係継続のため彼らの待遇の見直しと個体管理が進んでいる。
「で、これがこの辺の地図か」
僕の手元にはアイルーたちの描いた資源地図があった。
それによれば駐屯地から南に3km行くときれいな川があり、近くに水源もあるという。
給水塔の水が残っているうちにここを確保したほうが良さそうだ。
川沿いに草食動物の群生地、これは食糧問題の解決につながるか。
他にもモンスターの巣の位置、けもの道のルートなど有益なものがたくさん描かれている。
もともとこのあたりで暮らしていた彼らのほうが土地勘はある。
これからの開発や探索には彼らの協力を求めよう。
今のところ僕らとアイルーたちとの間に問題はなく、このまま良好な関係を維持していきたい。
「フーッ!」
「ダイジョウブだニャ、こわくないのニャ」
ただ、駐屯地で飼っていたネコはいつまでたってもアイルーになれてくれなかった。
同じネコっぽいのにいつも警戒して逃げてしまう。
なんでだ?
「シャーッ!」
「いたいニャ!!」
「あーあー…」
そして今日もその爪にかかる犠牲者が出た。
アイルーたちにネコ接近禁止のお振れでも出すかな…
とにもかくにも、このアイルーたちとは長い付き合いになりそうだ。
モチベとお話の間を埋める閑話です
今後増えます